日本共産党の田村智子議員は2日の参院内閣委員会で、国家戦略特区で解禁されようとしている公設民営学校が受験競争激化を招きかねないと批判しました。
同特区では、「国際競争力強化」などに「寄与」する人材育成を行う場合に公設民営学校が認められます。関西経済同友会が2008年に「英才教育ができないのであれば、特区にて公立学校の民営化・民間委託を試験的に実施し、その展開をはかるべき」だと提言し、これを受け大阪市が提案したもの。株式会社の受託は認めなかったものの、学校法人による公設民営学校の運営を可能にします。
田村氏は、公立学校や私立学校がやらないような教育を行うと塾が手を挙げたら、それを認めない制度でないと指摘。受験競争の激化・低年齢化を進めると主張しました。石破茂地方創生担当相は、受験競争を助長する教育が目的ではないと述べつつ、「懸念がまったくないとはいわない」と発言しました。
2015年7月18日(土) 赤旗
【 内閣委員会 7月2日 議事録 】
○田村智子君
国家戦略特区において、国際理解教育及び外国語教育を重点的に行うものその他の産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に寄与する人材育成の必要性に対応するための教育を行う場合に公設民営学校を認めると。すごい教育だなというふうに思うんですけれども、これは、二〇〇八年に関西経済同友会が大阪市に教育改革を望むと提言したことを受けて、大阪市が提案したものです。関西経済同友会は、エリート教育、英才教育の必要性を主張し、現状の公教育に限界がありこのような英才教育ができないのであれば、特区にて公立学校の民営化、民間委託を試験的に実施し、その展開を図るべきであるというふうに提言をしました。法案の条文を見てもこの方向に沿っていて、まさに経済界が求める人材のエリート教育を広げようというものだと思います。
まず、確認をいたします。
現在、公立の中高一貫校、これもいろいろエリート教育化しているなどの声もあるわけですけれども、ここでは入学選抜というのは学力検査が禁止をされています。では、新しくつくるという公設民営学校、これ義務教育課程を含んでいる場合にはどうなりますか。
○政府参考人(小松親次郎君) お答え申し上げます。
学校教育法施行規則で、受験競争の低年齢化を招かないようにするという観点から、公立の中等教育学校及び併設型中学校、すなわち今先生御指摘の義務教育段階を含むものにつきましては、入学に当たり学力検査を行わないこととしております。
公設民営学校は地方公共団体が設置する公立学校でございますので、入学定員に対して希望者が多いというようなことで、法なり学校の目的に沿って入学者の決定をしなければいけないという事態はあり得ますけれども、その場合でも公立学校として学力検査は行わないという、同じ扱いになるというふうに考えております。
○田村智子君 九九年に公立中高一貫教育校を導入する際に、やはり受験競争の低年齢化を招くという懸念が広がって、そうならない担保措置として学力検査、いわゆる入試は禁止だと言われたんですね。これ、もし本当にやろうと思ったら、くじ引か何かでやるしかないはずなんですよ、入学者選抜。ところが、実際にはどうかというと、多くの学校で適性検査というものが行われているんです。
名前を変えれば学力検査にはならないという判断のようなんですが、では、どういうものか。資料の二枚目と三枚目が東京都内の中高一貫校の適性検査の問題の抜粋なんです。これ六年生が受けるんですよ。これ二ページにわたるもので、問題数二問ぐらいしかないんですよね。物すごい長文なんです。
これを読解して、そして解くには総合的な学力を必要とすることは明らかで、これ解こうと思っていらっしゃる方いらっしゃるかもしれませんけど、これ客観的には大変高度な学力検査としか言いようがないというふうに思うんですけれども、いかがですか、局長。
○政府参考人(小松親次郎君) まず、この問題について高度かどうかというのは、ちょっと個別に公表することは控えさせていただきますけれども、公立中等教育学校等の入学者選抜ということで学力検査を行うというようなことをしないという、先ほど申し上げましたような仕組みになっております。
現実に見ました場合に、多くの設置者において、筆記の方式によって生徒に求める思考力といった総合的な適性を測るという観点から、適性検査というものを行うということが行われております。この点につきまして、今御指摘のように、これは行わないと言っている学力検査に当たるかどうかというようなことについて問題があるのではないかという御指摘があるということは、これも私ども承知しているつもりでございます。これは、学力観とか、それからテスト観とかそういうことに関わるものでございますけれども、中央教育審議会ではその点の検証等をいたしまして、その内容が妥当なものであるかどうかを各教育委員会において検証していくことが必要だという指摘がなされております。
文部科学省といたしましても、それを都道府県教育委員会に設置することなどによって検証を促しておりますけれども、いずれにいたしましても、その制度の趣旨に反した弊害が生じて受験が低年齢化し過熱化するというようなことのないように、私どもとしては都道府県教育委員会に対して種々の機会を捉えて注意喚起はしっかりしてまいりたいというふうに思っております。
○田村智子君 今、調査が必要だというふうに言われましたが、確かに前川前初等中等教育局長も二〇一一年の五月三十日に、適性検査の問題を見ると、非常によい学力検査の問題があります、まさにPISA型の学力を見るという、本来望ましい学力を見るような学力検査ではないかというふうに私には見えるわけですと、事実上の学力検査だというように認めるような発言をされているわけです。
今日、政務官にも来ていただきましたので、やっぱり受験競争の低年齢化をさせないという担保措置、結局機能していないんじゃないかというように思うんですが、済みません、端的にお願いいたします。ごめんなさい。
○大臣政務官(赤池誠章君) 御質問でございます中高一貫教育の制度に関しては、文部科学省といたしましては、地域の特性とか体験活動とか意欲的な活動が行われていることで評価をしているところであります。その中で、入学者定員が実際大きく上回っていると。当然、定員どおりどうやって入れるかということの中で、面接、作文、小学校からの推薦など多様な方法で適切に組み合わせる、教育への適性を測るということも併せて重要であるというふうに考えている次第でございます。
御指摘の適性検査が高度化された禁止されている学力検査かどうかということなんですけれども、これはきちっと各教育委員会において、単に受験技術を磨くようなことだけを助長するということは決してあってはならないということで、適切な入学選抜を行っていただくようきっちりと働きかけてまいりたいと考えている次第です。
○田村智子君 結局、中高一貫校がばあっと広がったことで小学生の受験が広がってしまったと。そして、小学生の通塾率というのも、文科省の調査見ても、九五年から二〇〇七年、ちょっと古い調査ではありますが、一六・五%から二五・九%と、もう四人に一人以上が通塾しているという事態にまでなっているわけです。そうすると、今回の法律で更にエリート校をつくるんだという関西の経済同友会の皆さんの要望に応えてこういう公設民営学校をつくられたら、一層拍車が掛かるんじゃないだろうかということを危惧するわけです。
今回、法律で中学校や高校を開設できない、専修学校のみ開設できる準学校法人も公設民営学校を受託できることになると思うのですが、それでは、例えば三大予備校、代々木ゼミナール、これ準学校法人です、あるいは駿台予備校、河合塾、これは学校法人です、こういうところも公設民営学校の運営を受託できるということなんでしょうか。
○政府参考人(小松親次郎君) 公設民営学校の制度ですけれども、国家戦略特別区域において、法令に定められている仕組みに沿って条例で基準等を、必要な事項を定めまして、これに沿っている者は開設する資格がございます。その中身は、営利的なものではなくて非営利のものということになっております。こうした様々なチェックをきちっとクリアして法令を遵守している者については開設する資格があるという仕組みでございます。
○田村智子君 これは準学校法人もできるということでいいわけですよね。
○政府参考人(小松親次郎君) そのとおりでございます。
○田村智子君 これ、私立学校をつくるよりもずっと財政負担少なくなると思うんですよね。義務教育国庫負担のお金も受けられる、施設についても自治体からの補助が入るということになると。
そうすると、塾産業や受験産業などが、その産業そのものではないけれども、これは利益を求めるものではないよといって参入してくる、こういう可能性あるわけですよ。そうすると、これまで公立学校や私立学校が行ったことのないような教育を行うといって塾産業が入ってきたらどうなっていくのか。これ、塾産業を認めないというような制度になり得るとはとても思えないんです。
政務官、ごめんなさいね、一問しか聞かなくて申し訳ない。
ちょっと時間がないので、最後、石破大臣にお聞きしたいんですが、そうなると、私は、受験競争の低年齢化や更なる深刻化、これ広がる、そういうことの懸念が拭えないと思うんですが、大臣の見解をお聞かせください。
○国務大臣(石破茂君) これは、法律の運用に当たりまして、認定の際には、私も構成員でありますが、区域会議をつくると。認定後も、区域会議においてその効果について定期的に評価を行うということであります。ですから、委員のような御懸念が全くないとは私は申しません。そういうことがないようにどうするか。
これは確かにビジネスモデルからいえば、委員が御指摘のような、そういうことを企図した方にしてみれば魅力的に映るかもしれません。ただ、大事なのは子供たちにどういう教育を行うかということなのであって、子供たちの受験戦争を助長するような、そういう教育をやることを目的としてこのような制度を動かしているわけではございません。
このような区域会議のつくられました意味というものをよく認識をしながら、そういう効果についてもよく検証することが必要であり、このようなビジネスモデルに便乗したような、そういうような商売というものを認めるつもりは私どもはございません。
○田村智子君 終わります。