2020年東京五輪の主会場に予定されている新国立競技場の問題について、14日に開かれた参院内閣・文教科学委員会の連合審査会では、2520億円を超える規模に膨れ上がった建設費や、その公表が遅れたことなどに、批判が集中しました。
日本共産党の田村智子議員は、昨年5月の基本設計で1625億円と発表された時点で多くの建築家が「それでは収まらない」と警鐘乱打していることや、下村博文文部科学相自身が同7月に「市場価格の影響で増える可能性がある」と答えていたことを指摘。田村議員も昨年12月に質問主意書で取り上げていることを挙げ、「下村大臣が予想以上にコストがかかることを知ったのが4月以降というのは、とても容認できない」と追及しました。
下村文科相が「ずるずるというのではなく、適切に対応した」と答弁したのにたいし、田村氏は「1年余りの間、まともな意見に耳を傾けてこなかった。それが事態を悪化させた。変更は可能だった」と批判しました。
現行案では2019年ラグビーワールドカップ(W杯)も五輪も間に合わない恐れがあると強調した田村氏は、W杯の主会場を新国立から変更するよう提案しました。「会場設置者が困難と申し出れば変更は可能だ。検討すべきだ」と田村氏が迫ると、文科相は「指摘は受けていたが…」と検討さえしていないことを明かしました。
田村氏は「シンプルで実績のある設計にすれば五輪には十分間に合う」と、強く見直しを求めました。
2015年7月15日(水) 赤旗
【 内閣委員会、文教科学委員会連合審査会 7月14日 議事録 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
新国立競技場は、一部資材調達などで事業者との契約が行われたと報道されましたが、やるべきは一刻も早い現行計画の見直しです。
私は、この間、文教科学委員会でこの問題を集中的に取り上げてきましたが、昨年十二月にも質問主意書を提出をいたしまして、計画の見直しを求めてきました。この質問主意書では、実際の建設費は少なくとも二千百億円を超えると槇文彦氏らが指摘をされていること、下村大臣自身が二〇一四年七月の記者会見である程度予算よりもオーバーするということはあり得ると述べたことを示して、基本設計一千六百二十五億円を大きく上回るのではないかとただしました。現状は、指摘したとおり、それ以上の事態になっています。
こんなことは昨年から分かっていたことではなかったのか、なぜ何らの対応もしてこなかったのか、下村大臣、お答えください。
○国務大臣(下村博文君) 基本設計段階、これは平成二十六年五月でありますが、工事費の試算額一千六百二十五億円は平成二十五年七月時点での単価を用い、消費税は五%で試算したものであります。
平成二十六年七月の記者会見での私の発言についての御指摘でありますが、新国立競技場の建設工事費について、平成二十五年七月以降の市場価格の変動等の影響を受けることが考えられることから、工事費の変動の可能性があることについて言及したものでございます。
なお、JSCから私に、基本設計どおりの整備内容では二〇一九年ラグビーワールドカップに間に合わないこと、及び消費税引上げや一般的な建設物価の上昇を超えて工事費が大幅にアップする可能性があることについての報告があったのは本年四月であります。
○田村智子君 本年四月でなきゃ分からなかったなんというのは、いかに無能かということを示しているのと一緒ですよ。だって、質問主意書というのは、答弁書は閣議決定されて出されるものですよね。私は、この質問主意書というのは、建築家の皆さんから直接お話をお聞きして、これは大変なことになると、昨年、私でも分かったわけですよ。昨年一年間、建築家の皆さんは、一千六百二十五億円からかなり膨れ上がると何度も警鐘を乱打されてきたわけですよ。
ところが、確かに答弁書は、市場価格の変動があるんだ、だから建設工事費の変動の可能性があるんだと、こんな寝ぼけた答弁書で事態をここまで深刻にしたんですよ。たった一年間で、基本設計から一・七倍以上にも総工費は膨れ上がったんですよ。答弁書は閣議決定ですから、安倍内閣、下村大臣の責任、どう自覚されているんですか。
○国務大臣(下村博文君) 国立競技場の建設計画については、平成二十五年の設計前の段階において、建設規模を縮小、二十九万平米を二十二万平米にするということとともに、コスト削減を行い、総工費試算額を一千六百二十五億円として設計を開始いたしました。
その後の実施設計段階におきましても、政府調達のルールにのっとり、施工予定者を選定した後、JSC、設計者及び施工予定者の工法等に係る協議において工期、コストの積算に関する考え方のすり合わせを行い、その状況は随時文部科学省に報告されていたことから、文部科学省が問題を放置してきたという事実ではなく、適宜適切に対応したものであります。
ただ、先ほどのように、実際にJSC、それから設計者及び施工予定者の工法に係る協議で具体的にスタートしたのは昨年の十二月からでございまして、その積算根拠に合わせてこれは公表すべきものでありますから、ずるずるということではなくて、そういう手続を踏んだ中で今日にあるわけであります。
しかし、この間、文科省からも建設に関する専門的な知識を有する職員、それから国土交通省から難易度の高い案件に係る調整や折衝等の業務についての知見がある職員、それぞれJSCに出向させるなど、支援にも努めてきたところであります。
○田村智子君 もう基本設計から一・七倍なんというのは計画の破綻ですよ。破綻した計画をそのままずるずるやってきて、今もってその姿勢だというのは本当に重大だというふうに思います。
この発表された建設費の二千五百二十億円、これは可動席も含まれていない。開閉式遮音膜も芝育成装置も壁の一部も歩道のデッキも含まれなくてもこれだけ巨額なんです。
何でこれだけ巨額なのかと。示された資料では、基本設計時点の一千六百二十五億円との差異として、消費税増税分四十億円、資材や労務費の高騰が三百五十億円、そして新国立競技場の特殊性で七百六十五億円というふうになっています。だから、デザインがもう非常に問題だということは明らかなんですね。この特殊性の項目として挙げられているのは屋根の鉄骨、スタンド鉄骨、内外装、大量の建設残土、この四点です。
まず、屋根についてお聞きします。キールアーチ、アーチ型の鉄骨を支えるために建物の下は鉄筋コンクリートの橋を二本通すことになります。巨大な橋、あるいは弓を地下に埋めるような、そういう構造です。これ、技術的にも相当に困難で資材も大量になるんですね。
まず、確認しますが、キールに必要な鉄骨、それ以外の屋根に必要な鉄骨、地下に通す鉄筋コンクリート、それぞれの量を示してください。
○政府参考人(久保公人君) JSCから聞きましたところ、国立競技場の整備につきまして、キールアーチ構造に必要な鉄骨量は約九千三百トン、その他、屋根、鉄骨量につきましては約一万一千トンであると聞いております。
地下に通す鉄骨については、今のところ資料がございませんので、今の二つでございます。(発言する者あり)それについては、御質問承っておりませんでしたので、今手元に資料はございません。
○田村智子君 昨日質問通告しました。地下の構造も示してくださいということを求めていますので、これ是非、委員長、資料の提出を求めたいと思います。
○委員長(大島九州男君) 後刻理事会で協議させていただきます。
○田村智子君 今御答弁のあった屋根だけで二万トンを超えると。東京タワー五本分以上になるわけですよ、屋根だけでね。しかも、このアーチというのは、技術的に対応できる企業は限定されている上に、現時点で工事に参加できるのは四社しかないと。この四社の工場で加工したものを競技場に運び、さらに敷地内に造る臨時の溶接工場でつなぎ、これをクレーンでつり上げてさらに溶接をすると。文科省の説明では、工事量が極めて多く、無理をして進めることになり、その分経費も掛かるんだとお聞きをしています。
二点目、残土についてお聞きします。発生量の見込み、その受入先や仮置場、これどうするのか。輸送に必要なダンプカーの延べ台数、それぞれ示してください。
○政府参考人(久保公人君) 済みません。まず最初、先ほど、地下の鉄骨部分につきましては資料が別途ございまして、地下の鉄筋は二千三百トンでございました。
今の御質問についてでございますけれども、建設発生土の量につきましては約七十八万立米を予想しているとのことでございまして、ダンプカー、十から十一トンダンプカーに換算いたしますと、延べ十二・八万から十四・二万台、一日当たりの延べ台数ですと六百から九百台と想定しているということでございます。
それから、建設発生土の受入先の枠につきましては複数箇所で確保しているとのことでございまして、今後、搬出時期ごとの搬出量を勘案いたしまして、契約までに確定する予定であると伺っております。
なお、仮置場についてはJSCでは考えていないということでございます。
○田村智子君 これ、残土の受入先もまだ全てが決まったわけではないというふうにもお聞きをしています。
三点目、内外装の特殊性。これは三次元だらけの曲面ということなんですよ。
客席を覆う屋根というのは、大規模な膜の構造です。鉄骨の骨組みを造って、そこに膜を張り付けることになるんですね。これ、東京ドームなんかも一緒です。膜だけじゃ安定しないので、こう骨組みを造って、そこに膜を張り付けるという構造なんですね。
ところが、ザハ氏のデザインは、東京ドームのように単純な外側を膨らむというふうになっていないんですよ。内側をへこませるような湾曲、これがたくさんあるんです。それだけ骨組みも細かく必要になって、だから鉄骨量が膨大に必要になってしまうと。しかも、この骨組みは一本一本全部アルミで覆わなければならないそうなんですよ。物すごい仕事量になっちゃうんです。説明を聞けば聞くほど、何でこんなデザインで造らなきゃいけないのか。
この湾曲って屋根だけじゃないんです。壁面もそうなんですよ。だから、壁面も鉄骨量は三万トン必要になるというんですよ。物すごいことなんですね。
私は、下村大臣、国民の批判について、血税が掛かることへの心配だと、だから財源を別に求めればいいんだと、こういう答弁されている。もちろん税金投入になる可能性大ですから重大なんですけど、より根本的にはこんな建築物をなぜ造らなければならないのかという批判なんですよ。キールアーチやこういう湾曲の屋根やら壁やら複雑なデザインが競技に何の関係があるのか、オリンピックと何の関係があるのか。どうですか、下村大臣。
○国務大臣(下村博文君) そもそもこれは、JSCのこれは審議会の中でデザインコンクールとして選ばれたものでありまして、二十一世紀の新たな躍動をイメージし、そしてスポーツの殿堂にするというのにふさわしいということでザハ・ハディド氏の案が選ばれたというふうに聞いております。
その中で今御指摘のようなことがあるということについては承知をしておりますが、それについては、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック、そしてその前の年の二〇一九年のラグビーワールドカップに間に合わせる形で、できるだけコストが掛からないような更に創意工夫をしながら、そして、増えた部分についてはそのまま国民の税金を投入するということでなく、この国立競技場についてはいろんな財源確保についてすべきであるということが閣議決定されておりますので、いろんな創意工夫をしながら国民の皆さんに理解を得るような、そういうことについてこれからも努力をしながら、またそのような組立てをつくってまいりたいと思います。
○田村智子君 これ、工事始まっちゃえば理解どころじゃないと思いますよ。資材も人材も工事車両もどんどん新国立競技場に吸い上げられていく、今私が質問したのをお答え聞いていてそう思いませんか。
被災地復興ということも、皆さん、オリンピック招致の重要な柱として掲げたじゃないですか。物理的にとてもじゃないけどこれ両立しないと思いますが、大臣、もう一度お願いします。
○国務大臣(下村博文君) いや、そもそも絶対量としての鉄がどれぐらいあるかということについて私が今把握しているわけではありませんが、それは当然、政府として被災地の復旧復興を一日も早くしていかなければなりませんし、それから、二〇二〇年に向けたオリンピック・パラリンピックの成功に向けて、国立競技場だけではありません、東京都や組織委員会が新たに造る建物等もあります、それらが整合性を持っていずれも実現していくような、そういうことについてしっかり対応してまいりたいと思います。
○田村智子君 もう既に整合性崩れているんですよ。
九日の文科委員会では、もう見直し必要だという立場で、これオリンピックとの、立候補ファイルとの関係での御答弁が続いていますので、IOCのジョン・コーツ副会長が、競技場の見直しは政府が決めることだ、変更したいと思えばすればいいと発言している、また総工費が増大して負担となることは心配しているとも発言していると、こういうことを紹介しました。こうやって紹介しても、大臣はIOCとの信頼関係を失墜しかねないから現行案の見直しできないというふうに答弁される。
何を根拠にIOCとの信頼関係失墜するとおっしゃるんですか。
○国務大臣(下村博文君) これは、今まで再三答弁していますが、オリンピック・パラリンピック二〇二〇だけではないわけです。その前の年のラグビーワールドカップ……(発言する者あり)いや、ラグビーワールドカップもあるわけです。
○田村智子君 それは後ろで聞きます。
○国務大臣(下村博文君) これについて一応まず答えさせてください。
これについて、国としては両方間に合わせるように責任を持っていくということが必要であるというふうに思います。
そして、この国立競技場の今のザハ・ハディド氏のデザインでありますが、これはオリンピック・パラリンピック招致活動において、平成二十五年七月、IOCテクニカルブリーフィングで麻生副総理から、それから九月のIOC総会で安倍総理から、それぞれザハ・ハディド氏のアーチ構造のデザインを示してプレゼンテーションを行い、東京招致を勝ち取った経緯があります。
これはIOCとの信頼関係だけでなく、我が国がそのような形でオリンピック・パラリンピックを招致したという意味での国際的な信用にも関わることであるというふうに考えます。
○田村智子君 副総理と総理のメンツという以外ないじゃないですか。IOCは、この間一貫して求めているのはコスト削減なんですよ、先ほど来あるとおり。競技場の見直しは開催国の責任なんですよ。IOCは反対していないんですよ。このことを認めるべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(下村博文君) この間の日本に来られた方々からもそういう意見があったというのは聞いていますが、一方で、IOCとしては、最初に日本の方で招致の中でデザインを示した、それについてはできるだけ忠実に対応してほしいという話も聞いているところであります。
○田村智子君 副会長は、デザインの見直しはその政府の責任だと言っているんですから、そんなこともう言うべきじゃないですよ。理由にしないでほしい。これ、新国立競技場の問題は、そんなこと言っていると、アスリートの皆さんへの重荷にどんどんなっていくんですよ。
六日の日、都内で新国立競技場問題を考えるシンポジウムが開催されて、その様子が報道されました。一参加者としてマラソンの金メダリストである有森裕子さんの姿があり、司会者に請われてマイクを握ったと。選手は現場を触発するようなことはできない、その気持ちは酌んでほしいとした上で、心から願うのはと言葉をつなごうとして絶句して、涙を流しながら、オリンピックが皆さんの負の要素のきっかけに思われるようなことは本望ではないと、こう語ったことが報道されているわけです。
選手は国民の応援を受けてこそその力を発揮できる。選手を戸惑わせ、傷つけ、後世にわたってオリンピックにマイナスのイメージを与えているのが現行の計画なんです。アスリートファーストだからこそ、オリンピックの成功を願うからこそ、現行計画の見直しが必要だと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(下村博文君) まずは、新国立競技場の整備については、特に建設費用が当初の予定を大幅に上回る見込みとなったことについて、国民の皆さんからも懸念や批判の声があり、アスリートを始めとするスポーツ関係者にも心配をお掛けしていることについては心を痛めております。
ただ、申し上げておりますが、これは、二〇一九年のラグビーワールドカップ、それから二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック大会に間に合わせるということは、これはもう大前提であるというふうに思います。その中における創意工夫については、これはできるだけやっていきたいというふうに思いますし、また、国民負担が増えないような多様な財源確保については今後とも最大限努力をしていきたいと思います。そして、大会閉会後におけるレガシーとしての、スポーツ活動や文化活動が幅広く開催され、スポーツ関係者や多くの国民に親しまれる、そういうレガシーとしての施設となるようにしっかりと対応していきたいと思います。
○田村智子君 では、今繰り返されているラグビーワールドカップに間に合わないということなんですけれども、これも大前提を見直そうじゃないかと問題提起がされているわけですよ。
九日の文科委員会で次世代の党の松沢議員が大変重要な指摘をされて、私もとても勉強になりました。ラグビーワールドカップの日本開催決定の際、日本側が示した案には旧国立競技場を含む十会場が併記をされていただけだと。特出しなんかしていないんですよ、新国立競技場はデザインさえもないんですけれどもね。私も、会場変更は問題なくできるという松沢議員の指摘を受けて、当時の報道、ラグビーの専門誌も含めて目を通しました。招致活動はもちろん、開催決定後も新国立競技場のデザイン図すら出てきませんよ、言葉も出てきませんよ。これは見直しできるはずですよ。
今年三月、ラグビーワールドカップリミテッドの理事会で開催都市十二会場を決定、国立競技場での決勝戦及び開幕式の開催も決定されたと。でも、会場設置者が使用は困難だと変更を申し出れば当然協議の対象になるし、変更は可能なはずです。松沢議員からの提案を受けて、文科大臣、何か検討されましたか。
○国務大臣(下村博文君) 国立競技場につきましては、平成二十三年二月にラグビーワールドカップ二〇一九日本大会成功議員連盟におきまして八万人規模のナショナルスタジアムへの再整備について決議がなされ、その後、同年七月に東京都が二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催都市に立候補したという経緯から、両大会の主会場とすることを念頭に改築計画が進められてきたところであります。
平成二十六年十月には、東京都が国立競技場を試合会場とする計画で、二〇一九年ラグビーワールドカップ、国内での開催都市に立候補し、今年三月、ラグビーワールドカップリミテッド、これはラグビーワールドカップを管理運営委託されている組織であり、大会の最高の意思決定機関でありますが、ここの理事会において、開催都市が決定された際、国立競技場での決勝戦及び開幕戦の開催も決定されたところであります。その後、ラグビーの大会組織委員会と東京都は国立競技場を試合会場とすることを前提に開催のための契約を締結しており、政府としても、ラグビーワールドカップ二〇一九に間に合うよう新国立競技場を完成させる必要があると考えているところであります。
○田村智子君 答えていないですよ。検討したのかどうか聞いているんですよ。答えていないですよ、今。委員長、答えさせてください。質問したことに答えてください。
○国務大臣(下村博文君) 今のようなスタンスですので、そのように進めたいと思っています。
○田村智子君 結局何の検討もしていないんですよ。皆さんは一年半にわたってまともな意見に耳を傾けてこなかった。それがここまで事態を深刻にしているんですよ。今もって道理ある意見に対して耳を傾けようともしない。検討もしない。
この会場は、国立競技場の使用は文科省に権限があるんだから、変更の申請は文科大臣が行えばいいというそれだけの話ですよ。ラグビー協会に理解を得るよう説明をすると、このことが求められているはずなんですね。
大体、私、報道を見て、ラグビーワールドカップの招致のキーワードはアジアなんですよ。新国立競技場じゃないんです、アジアなんですよ。香港やシンガポールでも予選を行うんだと、日本にももっとラグビーを普及するんだというのが招致のキーワードなんです。ところが、この国立競技場、このまま突き進むと。ラグビーワールドカップを理由になんてしてしまったら、国民のラグビーに対する感情にマイナスのイメージを与えますよ、招致の目的に逆行することになりますよ。
ラグビーワールドカップの成功のためにも、他会場への変更を決断するときだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(下村博文君) これは、先ほども申し上げているように、国立競技場の会場で是非やろうということを決めたのは大会組織委員会、それから東京都であります。ですから、第一義的には関係機関がどう考えるかということであるわけであります。
国会質問ある前から、当然これは、槇さんグループ、あるいはいろんなところで見直しが可能であればよりコスト削減をする中ですべきだという質問は今までも受けておりましたし、またいろんなところでも指摘をされておりました。その中のシミュレーションとして、ラグビーワールドカップは新国立競技場で開催しないでやった場合のことについても関係の方々といろんな話合いをいたしました。しかし、結論的には、新国立競技場で二〇一九年のラグビーワールドカップ開催を是非してほしいというのが関係者の方々の声でもあるということで現在に至っているわけであります。
○田村智子君 その関係者って誰ですか。
○国務大臣(下村博文君) 我が国にラグビーワールドカップ開催をしている方々であります。
○田村智子君 具体的にはどういうところですか。誰ですか。
○国務大臣(下村博文君) 一人二人ということではないので、名前を申し上げるわけにはいきません。
○田村智子君 これ、ザハ案というのはラグビーワールドカップに間に合わない危険性あるんですよ。最大の問題は、こういうデザインでの建築実績が全くないということなんです。実際に工程がどれだけ必要か、やってみないと分からない。しかも、計画段階から工程に相当な無理があるということは既に言われているんです。何か一つでもトラブルが発生すれば、ラグビーどころかオリンピックにも間に合わない。それほど危険な橋を皆さん渡ろうとしているんですよ。こういう警鐘乱打も建築家の皆さんからやられている。逆に、シンプルなデザインは、建築実績はいっぱいあるんです。まずラグビーの開催場所を変えて、そして建築に今すぐ取りかかっていけば、これオリンピックには間に合うんですよ。そういう決断をすべきだということを改めて強く申し上げておきます。
遠藤大臣に財源についてお聞きします。
措置されたと言われている合計六百二十六億円、国費で三百九十二、基金の取崩し百二十五、totoの収益からの百九億、これ合計六百二十六億円になるんですけれども、このうち既に九十八億円は支出済みです、デザイン監修費十三億とか設計費用十七億とか。国立競技場の解体費用や日本青年館、JSCの移転費用はまだ一部しか支出されていないので、残る五百二十八億円も全額が建設費に充てられるわけではありません。ということは、幾ら確保されているかは全く不明ということです。
これまでの答弁で、見込みと言えそうなのは今後のスポーツ振興くじの売上げと。遠藤大臣は七月四日、テレビの番組で、スポーツ振興くじをサッカーだけでなくプロ野球に広げるために野球界に既に働きかけているということを言われたんですね。野球くじを財源にするつもりなんですか。
○国務大臣(遠藤利明君) お答えいたします。
平成二十五年、これはまだ私、大臣になる前に、超党派のスポーツ議員連盟の中のtotoの拡大についてのPTをつくりました。そこで議論しましたときに、新国立競技場について負担をするということはもちろんですが、同時に、例えばパラリンピックの皆さんへのトレーニングセンター、あるいは地方のスポーツ施設等への負担、そしていろんな強化策、こうしたものを含めてこれからますます予算が必要であるので、その中で、これからスポーツくじで拡大して、そしてその売上げを増加できる方法はないかと議論をしてきました。
そこで、そのときには取りあえず海外のサッカーくじだけを導入したわけでありますが、その検討の中で、国内のプロスポーツで対応できるものはないかと議論をいたしました。そして、そのときは取りあえず保留にして、これから検討課題にしていきましょうということで、団体スポーツあるいはプロスポーツ、安定的に運営できるもの等々を議論し、そして検討した結果、改めて今回そのPTをスタートし、議論を始めたところであります。その中に野球くじもできるかどうかということを議論いたしました。
ただ、どちらにしても、こうした種目拡大については対象競技種目の関係者の同意が大前提でありますから、丁寧な議論を進めていく必要があると認識をしております。
○田村智子君 私もスポーツ議員連盟の一人ですけれども、こんなことに議連を利用するのやめてほしいですよ。認められないですよ。
野球というのは、ピッチャーの失投、守備のエラー、これで試合が決まるということはあるんですよ。意図的なプレーはサッカーよりも起こしやすい。選手がくじの絡みで試合内容に疑いを持たれるような危険性、これ余りに高いと。国民的な合意もないですよ。
これ、野球くじに財源を求めるなんてことを大臣として発言する、極めて重大ですよ。そんなこと許せない。どうぞ。
○国務大臣(遠藤利明君) 委員も御承知のことと思いますが、このスポーツくじ、今サッカーくじ、サッカーでやりますからサッカーくじで申し上げますが、二つの種類があります。一つはBIG方式と言いますが、非予想方式です。もう一つはtoto方式と言われますが、予想系のやり方です。これ、予想系は勝ち負けあるいはゴール等を一つ一つ予想しますから、もしかすると委員御懸念の部分がないとは言えないかもしれません。もちろん、これまで一切ありません。一切ありません。ただし、BIG方式については、これはランダムで数字が出てきますから、普通の宝くじと同じであって、全くそういう懸念はないものと思っております。
○田村智子君 これ、だって試合始まる前に買っちゃうわけでしょう。試合、九回あるでしょう。その時間のうちに何が起きるかなんて分からないんですよ。これまで厳しく野球くじ、賭博というのは禁止をされてきた、それにはそれだけの理由がありますよ。大体、大臣として余りに発言軽過ぎますよね。もういいです。
このスポーツ振興くじの売上げのうち、JSCの取り分を五%から一〇%に引き上げて競技場の建設に充てるんだと、これもプロジェクトチームで検討してきたと報道されています。
でも、これ、サッカーくじの仕組みというのは、まずその売上げから当選払戻金五〇%、それからJSCの取り分がある、そして経費を取る、残る収益の三分の二がスポーツ振興助成金になるんだと。ということは、JSC取り分増やせばスポーツの振興に充てる分が減らされていく、割を食う。これがどうしてスポーツ振興になるのか、これがどうしてオリンピックの成功につながるのか、遠藤大臣。
○国務大臣(遠藤利明君) 先ほど申し上げましたように、国立競技場の建設費を負担しようと、ゼロから五にしました。そのときに、しかしこれでは強化資金あるいは地方への例えば芝生等への支援だとか選手強化の予算が減る。やっぱり世界各国の例を見ましても、いろんな多様な形でくじの導入をしておりますし、新たな形でこの増収策ができればなお一層スポーツ振興の資金が確保できる、そういう観点から二十五年に導入をいたしました。
そして今回、そのときの議論を踏まえて、今委員おっしゃるように、五から一〇になれば当然その分は少々少なくなります。しかし、新たな財源を新たな仕組みの中で確保できれば、十分それにとって対応できると確信をしております。
○田村智子君 もうこれはラグビーワールドカップにもオリンピックの成功にもスポーツ振興にも逆行するのが今の新国立競技場です。見直し求めて、質問を終わります。