日本共産党の田村智子議員は16日の参院文教科学委員会で「小中一貫校」設置が学校の大規模化をもたらしていることにふれ、施設基準についてただしました。
文科省の小松親次郎初等中等教育局長は、「(小中一貫校は)原則は小学校、中学校それぞれの学習指導要領を準用した教育を行う。そのため前期課程は小学校、後期課程は中学校の設置基準を準用することになる」と答えました。下村博文文科相は「運動場の面積は、小学校、中学校の設置基準の面積を合計したものと当然想定している。施行通知や各種会議でていねいに周知する」と答弁しました。
田村氏は、文科省の検討会が「低学年児童が安心して運動や遊びができるように、低学年専用の運動場や広場を計画することが重要」と述べていることを指摘。下村氏は「安全性を備えた施設環境の確保に努める」と答弁しました。
田村氏は、2012年に東京都品川区で大規模化した一貫校において、いじめが原因と考えられた自殺事件が相次いだこと、教員が情報や問題意識を共有する日常的な会議も行われていなかったことが調査報告書で指摘されていたことを示し、大規模化が児童に与えた弊害を直視すべきだとただしました。
下村氏は、「過大規模校では生徒の個性や行動を把握しづらく、問題行動が発生しやすくなることが考えられる」と述べました。
2015年6月18日(木) 赤旗
【2015年6月16日 参院文教科学委員会 議事録 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
九日の委員会で、都内の小中一貫校の問題として、運動場が非常に狭く、行事や安全確保に悪影響があるということを指摘をして、義務教育学校の施設基準はどうなるのかという質問をいたしました。義務教育学校は小学校及び中学校の学習指導要領を準用して教育活動を行う学校であり、設置基準はこれらが実施できるように設定されているという答弁でしたが、簡単に言うと、設置基準も小学校、中学校それぞれの基準を準用するという意味だと思います。
これ、確認したいんです。例えば、運動場は小学校の設置面積基準、中学校の設置面積基準をそれぞれ足し上げるということなのかどうか、端的に、局長、お願いします。
○政府参考人(小松親次郎君) ただいまの御指摘にもありましたが、義務教育学校は、小学校、中学校と同様の法的目的を実現するためにそれぞれの学習指導要領を準用して教育活動を行う学校であるということから出発いたしまして、義務教育学校自体についての固有の設置基準を制定することは考えておりませんけれども、学校教育法施行規則において、この法案が通りました場合には、前期課程は小学校設置基準、後期課程は中学校設置基準を準用する旨を規定することになると想定しております。
したがって、義務教育学校の運動場の基準面積としては、原則は前期課程部分は小学校の基準面積、後期課程部分は中学校の基準面積が適用され、今現在の設置基準にも、地域の実態その他により特別の事情があり、かつ、教育上支障がない場合はこの限りではないという規定はございますけれども、原則としてはその基準面積を合計したものとなるというふうに想定されるところでございます。
○田村智子君 そうすると、今のそれぞれを足し上げたものだという基準の考え方は、これは明確に自治体に示すべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(下村博文君) 今、答弁をいたしましたが、義務教育学校は前期課程においては小学校設置基準、後期課程においては中学校設置基準を準用する旨省令において規定することを想定しております。その場合、義務教育学校の運動場の基準面積は、今御指摘のとおり、小学校、中学校、それぞれ前期課程、それから後期課程分合計として小学校、中学校設置基準の定める基準面積を合算したものというふうに当然想定しているわけであります。
法案成立後に義務教育学校の設置の基準について定める際には、その趣旨や内容について施行通知や各種会議等の場を通じて丁寧に周知してまいります。
○田村智子君 先ほど局長の答弁にあったとおり、確かにその基準そのものにただし書で、特別の事情がある場合には基準を満たさなくてもよいんだというのがあって、このただし書も義務教育学校は準用することになるというわけですけれども、しかし、小中一貫校はやはり小学校の低学年と中学生が共に学ぶ学校であるということで、この特殊性への配慮が必要だというふうに思います。
文部科学省の学校施設部会は、今年二月に、小中一貫教育に適した学校施設の在り方についての報告書案というのを示していますが、その中でも次のように書かれています。九年間の部活動、学校行事を含めた教育活動、学校開放での諸活動を具体的に想定し、校舎敷地、運動場や屋外教育環境施設等の用地について必要な面積を確保することが重要。放課後などに低学年児童が安心して運動や遊びができるように、部活動が行われる運動場とは別に低学年専用の運動場や広場等を計画することが重要と。
こういう内容を私はしっかりと自治体に対して徹底することが必要だと思いますが、いかがかということと、あわせて、現在既にできちゃっていて運動場が非常に狭く、安全性にも問題がある、こういう学校については何らかの対応が必要だと思いますが、その点も併せてお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(下村博文君) 文科省では、現在、学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議におきまして、課題の一つとして、小中一貫教育に適した学校施設の在り方についても検討しているところであります。
この検討におきまして、小中一貫教育を効果的に実施するため、地域の実情や学校施設の実態等を踏まえ、一つは、九年間を見通した教育活動ができるよう、例えば部活動、学校行事を含めた教育活動、学校開放での諸活動を具体的に想定し、校舎敷地、運動場等の用地について必要な面積を確保することや、児童生徒の発達段階に応じ、安全性を備えた施設環境を確保するため、御指摘がありましたが、例えば低学年児童が安心して運動等ができるよう低学年専用の運動場や広場等を計画することなど、学校施設の計画、設計上の留意事項を整理しているところであります。
協力者会議では七月下旬をめどに報告を取りまとめる予定であり、文科省としては、今後、法案が成立すれば、その検討結果も踏まえ、留意事項を速やかに関係者に周知し、義務教育学校において児童生徒の発達段階に応じ安全性を備えた施設環境が確保されるよう努めてまいりたいと思います。
○田村智子君 あわせて、今既にできているところで問題があったら何らかの対応が必要だと思いますが、その点についてはいかがですか。
○政府参考人(小松親次郎君) 問題ということにもよろうかと思いますけれども、ただいま申し上げたような考え方は、最初に私御説明いたしましたように、小学校、中学校の学校教育法に定める法的目的を実現するために学習指導要領等を準用して行うことになりますので、その基本的な考え方に沿って、必要な面積を確保していただくように状況に応じて働きかけていくということになると思います。
○田村智子君 次に、学校そのものの規模についてお聞きしたいんです。
足立区では、新田中学校というところの敷地に新田小学校を統合して、小中一貫校が六年前に設置をされました。当時から周辺は大規模マンションの開発が進んでいて、地域の住民からは、小学校は廃校しないで人口増に合わせた新設をやればいいじゃないかと、こういう意見が出されていたわけです。しかし、区教委は計画を見直さず、その結果、児童生徒は年々増えて、現在、小学校で三十六学級、中学校九学級、児童生徒数約一千五百人ものマンモス校になってしまいました。
校舎に入り切らない一年から四学年は信号を渡った場所に造られた第二校舎で学んでいますが、ここには校庭はありません。廊下でぶつかるなどのトラブルは日常茶飯事で、先生方はPHSを日常持ち歩いて連絡を取り合わなければならないという状態で、来年度以降も児童数の増が見込まれている上、更なる大規模マンションの計画もあり、保護者からは一体どうなるのかという不安の声が上がっています。
義務教育学校の標準的な学級数、これはどうするのか、お答えください。
○副大臣(丹羽秀樹君) お答えさせていただきます。
義務教育学校の標準規模につきましては、基本的に一年次の入学者が九年次までそのまま進級することが想定されております。こうしたことを踏まえまして設定する必要があるというふうに考えております。例えば、具体的には、この法案が成立した後に政省令を整備する中でしっかりと検討していきたいというふうに思っております。
仮に、現行の小学校の標準を踏まえて、各学年二から三学級を前提として九学年分を乗じた場合、標準規模は十八から二十七というふうになっておりますので、こういったことも踏まえて、今後どのような標準が適正か、具体的な検討も勘考していきたいというふうに思っております。
○田村智子君 この点で指摘しておきたいのは、これは足し上げたら駄目だということなんですね。文科省が示している標準規模は小学校で十二学級、中学校で十二学級ですけど、足し上げちゃうと二十四学級で、これ最大九百五十人規模。また、小学校十八学級、中学校十八学級とすれば、足し上げたら三十六学級で最大一千四百人規模ですからね。こういうのは適正規模なんて絶対言えないわけです。
私、今回、文科省が学校の適正規模の手引というのも示しましたけれども、そこでは、小学校六学級あるいは中学校三学級以下は統廃合の検討をと促しているんですが、じゃ、大規模校に関してはということでは何にも制限を示していないわけです。今回の小中一貫校の場合は、やっぱり大規模化というのが既に問題になっているわけで、しっかりと国の考えを示していただきたいということは重ねて要望しておきたいと思います。
それで、なぜこの大規模化にこだわるかといいますと、やはり大規模化によって児童生徒への対応や教職員の連携という点での問題が生じていると、この点を指摘しなければならないんです。
品川区の小中一貫校で、二〇一二年二月、小六の女の子が、同年九月、中一の男子が相次いで自殺をしています。区内の別の一貫校でも、同年の七月、中一の男子が自殺をしています。いずれもいじめが原因の可能性が高いとされていますが、調査の報告書を読むと、大規模化に起因した問題があったのではないかと考えざるを得ないんです。
例えば、報告書の中には、毎朝の幹部会で必要最小限の情報は管理職から伝えられているが、共通理解を図るための時間や場が設定されていない、教員は情報がないことも不安に思ったりしていると、こんな指摘があるわけです。教員数が余りに多くて、職員会議はもちろん、情報や問題意識の共有ができていない状態だったということがうかがわれます。
また、品川区は大津のあの事件を受けて、いじめ実態把握緊急アンケートというのを行ったんですが、三人の副校長は一人として記入されたアンケートの原本を見ないまま集計した数字だけを区教委に報告をしています。自殺をした少年はこのアンケートに、二度ほど物を壊されている、今は収まったが、次にまた起こらないとも限らないというふうに記述をしていたわけです。だけど、担任の先生も大丈夫と声を掛けたけれども、面談はしていない。その後取り組まれたアンケートで、彼は解決できるというところに丸を付けているんですけれども、これによって担任の先生も学校もいじめの認知件数からも外しているんですが、彼はその解決できるの丸印の後にクエスチョンマークを手書きで記述をしているわけです。これ、教員がアンケートの記述について話し合うとか、いじめについていろんな話合いの場を持つとか、学校全体でそういう話合いの場があれば防げた自殺だったという可能性が大いにあったわけですね。
こういう統廃合と一体の一貫校の設置で大規模化が進んだ、そのことが児童生徒への対応に重大な問題や弊害をもたらしてしまった、このことはしっかりと直視すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(下村博文君) 御指摘のように、義務教育学校に限らず、一般的に過大規模校において、教職員集団として児童生徒一人一人の個性や行動を把握し、きめ細やかな指導を行いにくくなる可能性があるということから、問題行動が発生しやすくなる場合もあると考えられます。
文科省としては、義務教育学校の導入に当たり、児童生徒の教育に支障が生じないよう、様々な機会を捉えて丁寧に指導してまいりたいと思います。
○田村智子君 やっぱり一学年から九学年という、本当に大規模化が、危険性があるわけですよ。是非、児童生徒に一人一人きめ細やかな対応ができるように本当に進めていただきたいというふうに思います。
〔委員長退席、理事石井浩郎君着席〕
併せて指摘したいのは、品川区は特例もあって、学校教育課程の、その中で道徳教育も重視しているんだということで、独自に市民科という科目もつくって、区教委が教材も作って、その使用を全ての学校に義務付けているんです。ところが、この授業時間を確保するために、実はホームルームの時間をなくしてしまった。いじめを含む子供たちが直面するような問題を、あるいは学級の自主的な活動を話し合う場がないということなんです。実際、自殺事件のあった学校では、その事件の後でさえもホームルームの時間は持たれていないんです。
義務教育学校の設置は、一学年から九学年の教育課程を各教育委員会が自主的に作成するということもメリットとされています。しかし、参考人質疑でも指摘をされましたが、品川区ではどのような検討によって区独自の教育課程がつくられたのか区民には分からない。その見直しを求める仕組みもない。区教委の判断でホームルームの時間をなくしてしまうようなこと、いじめや不登校の問題が起きたときに子供たちが教材や教科書を離れて自主的に話し合う、教員の、何というか、判断で話し合う、そういう時間さえもなくしてしまうと。こういうことについて大臣はどのように思われるか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(下村博文君) 品川区では、教育課程特例校制度を活用し、特別活動の時間や総合的な学習の時間等を組み替えて、教養豊かで品格のある人間形成を狙いとした独自教材である市民科を設け、小学校一年生から中学校三年生までの九年間を通じて指導しているものというふうに承知しております。
このように特別課程特例校制度を活用して既存の教科等を再編する場合であっても、学習指導要領上全ての子供に指導することとなっている内容は遺漏なく指導することが求められます。このため、品川区において、市民科の中では、田村委員の御指摘と違って、実際は特別活動において実施が求められている学級活動も行われていると。
また、具体的には、市民科という教科の趣旨に基づいて、児童生徒同士の議論などを通じて学級の抱える様々な課題について考えるような活動も行われているということを文科省からも、品川には校長として出向していた経験のある当人からも聞きましたが、品川区からもそのように報告を受けているところであります。
○田村智子君 現場の先生からお聞きすると、それは、市民科の教科書の中の教材の中のこのページのこの項目はいじめの問題を話し合うのに使えるかもしれないといって、その教材の時間、このページを勉強したということで読み替えて、ホームルームの時間にしているんですよ。全くその教材から離れて学級で起きた問題を話し合うという時間になっていないんですよ。これが実態なんです。
ここも水掛け論みたいになっちゃうのでこの指摘にとどめますけれども、こういう柔軟な教育課程の編成というのはこの市民科だけではとどまらず、様々な弊害というのを私は起こしてきているんじゃないのかというふうに考えざるを得ないんです。
資料でお配りしたのは参考人質疑でも配られた品川の教育課程の資料なんですけれども、例えば品川区の教育課程は、五年生までに六年間掛けて学ぶ漢字数は全て修了します。算数も、学習指導要領では中学で学ぶとされる正の数と負の数、角柱、円柱、錐体、線対称、点対称、図形の合同、比例、反比例、場合の数を全て六年生で修了とあるわけです。
これ、これまでの答弁の中では、じゃ、転入したときにどうするんだと言ったら、補習で補うという答弁なんですよね。だけれども、これ授業時間も見てほしいんですけれども、六年生で総授業時間数、年間一千九十六時間、学習指導要領で定める九百四十五時間を百時間以上上回っているわけです。これだけの授業を受ける上に、補習で全く受けてこなかった部分を、前倒しでもうやっちゃった部分を教えるなんということは、これは子供にとって大変な負担になると思いますが、大臣、いかがですか。
〔理事石井浩郎君退席、委員長着席〕
○国務大臣(下村博文君) 私は実際この日野学園の土曜授業を視察に行きまして、土曜授業でしたから通常授業の現場を見たわけではありませんが、子供たちは非常に生き生きと活動しておりまして、校長先生以下教職員も、本当に一生懸命やっているなという感じを持ちました。ここは、地元の品川区長等、教育委員会は当然ですけれども、同席をされておられましたが、かなり学校教育については、この日野学園において、自分たちの考えているものが子供たちにきちっと伝わって子供たちも意欲的に取り組んでいる、そういう非常に成功しているという印象を持ちました。
ですから、いろんな指導要領以外の大幅な授業時間も組んでいる中で、転校した子供は大変じゃないかという話、御指摘がありましたが、そういうことも配慮しながら創意工夫をされているのではないかというふうに思います。
○田村智子君 これはもう配慮というのを超えたほどの詰め込み教育になってしまうんじゃないかというふうに私は危惧するわけですよ。
私も行きましたけれども、確かに子供たち頑張って生き生き楽しそうに学校の中にいますけれども、それは一日や短時間見ただけでは分からないような問題というのをしっかりと私は検証すべきではないかというふうに思います。そうした検証もなく、法制化によって義務教育学校というのをつくること、これは全く拙速であるということを指摘をいたしまして、質問を終わります。