国会会議録

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新国立の計画変更を 参院文教科学委で田村議員

日本共産党の田村智子議員は2日、参院文教科学委員会で2020年東京五輪パラリンピックの主会場となる新国立競技場について質問しました。

 田村氏は、新国立の建設費用が膨れ上がった理由は、東京タワー5本分もの鉄骨を使う、複雑な構造の屋根に問題があると指摘。5月29日に槇文彦氏らの建築家グループが観客席のみを覆うシンプルな屋根をつける対案を発表したことにも触れ、計画の変更を求めました。

 下村博文文科相は「これまでの経緯の中で進められてきた。工期を守り、コストが大幅なアップにならないようやっていく」と答弁。田村氏は「削減できるコストは限界がある」と計画そのものの見直しを迫りました。

 開閉式屋根はメンテナンス経費も膨らみます。田村氏は、「イベントの数を増やせば増収が見込める」という国の説明に対して、年間125日だったスポーツ利用の実績が、新国立では97日まで減ると試算していることを示し、「イベントを増やすには、さらにスポーツ利用を減らすしかない。それで『競技場』といえるのか」と批判しました。

 下村文科相は2013年12月24日に、新国立の建設費等のうち500億円を東京都が負担すると「内々で了解を得ている」と発言しています。この発言を田村氏に問われた文科相は、自民党都議と協議した結果であり、猪瀬前知事から内諾は得られていないと答えました。当該都議が誰かは明らかにしませんでした。

                        ( 2015年06月03日  赤旗)

【 2015年6月2日 参院文教科学委員会 議事録 】

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 新国立競技場の問題で、先ほどの蓮舫議員への答弁で、大変重大な答弁、東京都の負担についてありましたので、まず確認をしたいと思います。

 一昨年十二月二十四日、確かに大臣は、東京都の負担について、都議会と私の方で直接話しまして、一応五百億円は東京都の方でも出すということで、内々には了解をもらって準備を進めておりますと、こう話をされているんです。しかし、先ほどの答弁で、話をした相手は自民党都議だということでした。

 それでは、確認します。ということは、当時の猪瀬知事、あるいは当時の知事の部局に対して五百億円の費用要請をしたことはないということですか。

○国務大臣(下村博文君) まず、新国立競技場の整備についてでありますが、平成二十五年一月に東京都がIOCに提出した大会招致立候補ファイルでオリンピックスタジアムとして位置付けられているということ、それから、同年九月に開催都市が決定したことを受け、十一月に費用負担について私から当時の猪瀬都知事に対し直接要請し、その後、文部科学省と東京都の間で事務レベルで意見交換を行ってきたという経緯がございます。

 舛添東京都知事就任後、東京都が整備する施設の見直しを行ってこられたことから、政府としてこの動きを控えてきたところでありますが、東京都の方の関係する競技施設の見通しも付いたということもありましたので、これまで、東京都知事、猪瀬知事の後の舛添知事に対して直接私から要請してこなかったということがありまして、先月十八日に直接要請をいたしました。

 金額については、舛添知事の方が今までの経緯の中で五百億という発言をされておられましたが、五百億ありきということではなくて、今後、これまでの事務レベルの話合いにおいても、文部科学省は、新国立競技場については二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会のメーンスタジアムとして利用すること、また、新競技場の整備に伴い東京都の地域活性化等の経済効果が期待できる等の様々な便益があることから、費用の一部負担を要請をしているところでありまして、今後、東京都の方からは、従来から費用負担についての負担額の根拠、それから東京都が受ける便益についての説明が必要であるということで、今年に入ってから現行の法制度上の課題があるということを主張されていると承知をしております。

 先ほどの話のように、都議会の自民党の議員とそのようなことを話したということは事実であります。

○田村智子君 聞いていることだけ、確認ですから、答えてください。

 猪瀬知事に五百億円という額を提示したのかどうか。

○国務大臣(下村博文君) 猪瀬知事にはお話をしました。その後、事務的にそれぞれ協議を、意見交換をしているということがその後続いて、東京都と文部科学省の中でですね、続いているということであります。

○田村智子君 そうすると、さっきの答弁とちょっと食い違うんですけれども、そうすると、前の猪瀬知事は五百億円の費用負担ということを内諾していたということで記者会見でこう述べられたということなんですか。

○国務大臣(下村博文君) いや、猪瀬都知事は別に内諾したということではありません。

○田村智子君 そうすると、その内諾、大臣が言われた五百億円は東京都の方でも出すということで、内々には了解してもらって準備進めていると、これはどこから出てくることなんですか。

○国務大臣(下村博文君) それは先ほどから申し上げていますように、都議会の自民党の議員との話合いの中での話であります。

○田村智子君 そうすると、その都議が内々に東京都と話をして、その様子を大臣にお伝えをしたと。で、大丈夫だよ、東京都もそう言っているよと、こういうメッセンジャーの役割を自民党の都議が果たしたということになるんですか。

○国務大臣(下村博文君) 都議会の方々がどういう経緯でということは承知しておりませんが、そういう話合いをしたと、私自身がしたということであります。

○田村智子君 これ、私は重大だと思うんです。自民党の都議のどういう立場の方に大臣はお話をして、内々に五百億大丈夫だよというお話をお聞きになったのか。どういう立場の方なんですか、自民党の。

○国務大臣(下村博文君) それについては、現段階については詳細は申し上げることはできません。

○田村智子君 この五百億円というのが言わばもう既成事実になって、建築費の三分の一ぐらいは東京都出してくれるよと。そして、あのずさんなデザインのまま私は今日に至って、今日の混乱になっていると思うんですよ。

 そうすると、自民党の都議の誰とお話をして、その都議が東京都の人とどういう話をして、大臣にどういう情報を伝えたのか、このことはしっかりと委員会に報告を求めたいと思います。委員長、お願いします。

○委員長(水落敏栄君) 後刻理事会で協議します。

○田村智子君 質問を続けます。

 費用が非常に膨れ上がっていて、今や五百億どころか五百八十億にも東京都に要請しなければいけないんじゃないかと、こういう事実も出てきたので、やはりこの費用が膨れ上がった原因ということをきちんと説明をすべきだというふうに思っています。やっぱりこれは私は、槇文彦さんたち建築家の皆さんが提案をされたとおり、確かに巨大なアーチ型の屋根に本当に問題があるというふうに思っています。

 二十六日の質問の中で、基本設計時の試算で屋根全体に使う鉄骨は一万八千トンだというふうにJSCから答弁がありました。大きな二本のアーチからスタジアムを覆うように鉄骨が使われる、こういうデザインです。この一万八千トンの鉄骨、一体どれぐらいのものなのか。大阪市に建設されたあべのハルカス、地上三百メートルの巨大タワー、この柱材が一万八千トンの鉄骨を使っています。ちなみに、この建設費は約七百六十億円です。国立競技場はこの巨大タワー建設の三倍以上の費用が掛かるということです。そのほか比較してみても、エッフェル塔二本分、東京タワー五本分、これが一万八千トンの鉄骨なんですよ。これだけのものをあのデザインを維持するために屋根だけに使う、それが適切な判断なのか。やはり思い切ったデザインの見直しが必要だと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(下村博文君) これは今までの経緯の中で進められてきているものであります。まず、工期をきちっと守る、つまり二〇一九年の春には竣工すると。それから、できるだけコストについては、設計者との今話合いをしている最中でありますが、大幅な見積りアップにならないような形で是非やっていただきたいと思いますし、その中で直せる部分については直しながら、国民の皆さんの理解が得られるような、そういう努力をしてまいりたいと思います。

○田村智子君 これ、大臣、二十六日のときにも、費用圧縮するためにはコスト削減で今協議中だと、だから総工費も示せないとおっしゃいましたけれども、コスト削減というのは、資材調達で価格を抑える、あるいは人件費を抑える、こんなの限界があるんですよ。もう一千億ぐらい膨れ上がっていると言われているときに、じゃ、コストダウンで一千億円もカットができるのかと。そういうお考えなんですか。

○国務大臣(下村博文君) コスト削減はもう最大限努力をすることは必要だと思います。それから、今までのザハ・ハディド氏のこのデザインをそのままということにしたら当初の予算では三千億ぐらい掛かるということの中で、これを規模を縮小しながら、しかし、できるだけそのデザインを生かしながら新国立競技場の今建て替えに向けて進めているところでありまして、そういう予算と、それから今までの整合性の中で、見直せる部分はきちっと見直す必要があると思います。

○田村智子君 これは、私はデザインの見直し以外にもう道ないと思うんですね。

 私、前回の質疑の中では、この複雑な構造の屋根や遮音膜はメンテナンスにも非常に費用が掛かる、これでは収支黒字も見込めなくなるという問題を指摘しました。そうしたら、大臣は、現在の収支見込みで十二日間としているコンサートなどを増やせば増収が見込めるというふうに答弁をされました。

 しかし、天然芝の競技場でコンサートイベントを開くということは、芝への悪影響から限定的であるのが常識です。味の素スタジアム、二〇一三年は一回、昨年は四回。日産スタジアム、二〇一三年、五回、昨年は一回。比較的開催数の多い札幌ドームでも年十回の公演が限界なんです。巨大な屋根を付けること自体、太陽光、自然の風、夜露の妨げになる。加えて、屋根全体を閉じる期間が延びれば延びるほど、芝の上にパネルを敷き詰めるコンサートをやればやるほど、これは芝を直接傷めてしまう。パネルはダメージ減らすもの開発されていますけれども、一回の公演が終わると、グラウンドキーパーは手作業で傷んだ部分の芝を全部取り除いて取り替えというのをやっているんですよ。

 そもそも、八万人規模を造るんだと。これ、こだわったのは、サッカーワールドカップを招致するためだという説明を受けてきました。このサッカーの競技場というのは、芝は命です。にもかかわらず、イベント会場としての収入を増やすために芝に大きなストレスを与える、競技場としての質を落とすことになる、それでも構わないということですか。

○国務大臣(下村博文君) 新国立競技場につきましては、オリンピック・パラリンピック閉幕後におきましても、スポーツ活動のほか文化活動等、新しい国立競技場がこれまで以上に多目的に活用され、多くの国民に親しまれる施設としてあり続けること、これが重要だと考えております。

 JSCが昨年八月に試算した事業計画におきまして、芝生の養生に必要な日数を確保した上で、これまでの開催実績、利用団体の意向等を踏まえ、コンサート等のイベントの実施日数は年間十二日間と設定しており、一定程度イベント実施日数を増やすことは可能であると考えております。

 芝生の養生につきましては、JSCにおきまして、年間を通じて選手が最高のパフォーマンスを発揮できるよう良好な状態を維持するため、年二回の定期張り替えや、イベント時におきましては養生マットを芝生上に敷設するなどの取組を行うこととしておりまして、これらによりまして芝生の維持を図り、競技場としての質を確保することが可能だというふうに考えております。

○田村智子君 資料をお配りしたので見てください。これが年間のスケジュールの予想なんですね。公演一回行うのに、準備、撤収作業を含め五日間の日程が必要だというのがJSCの説明なんです。十二日間の公演を行いますと六十日間、一年間のうち二か月がコンサート使用になります。

 これまでの国立競技場の使用実績見ると、二〇一一年度、これコンサート九日を含むイベントで二十二日、スポーツは百二十一日。二〇一二年度はイベントで五十三日、うちコンサートは十六日です、スポーツは百三十二日。二〇一三年度、イベント七十四日、うちコンサート三十二、これは競技場解体前のさよならコンサートがやられたので多いんです、それでもスポーツ利用は百二十五日あったんです。

 新国立競技場、どうかと。これ、コンサート、その他のイベント、設置や撤収含めると七十五日なんですよ。スポーツは九十七と、百日を切っているんです、今でも。しかも、これ見て分かるとおり、コンサートで押さえると一週間から十日連続して押さえなくちゃいけないんです。このスケジュール表を見たときに、一体どこにこれ以上コンサートを入れるゆとりがあるのかと。もっと入れようと思えば、スポーツ利用を減らす以外に道なくなりますよ。

 これで競技場と呼べるのか、イベント会場じゃないのかと言わざるを得ないんですが、これでももっとコンサートを行って収支を増やすと。そういう道をたどるんですか、大臣。

○国務大臣(下村博文君) これまでの開催実績とか、それから利用団体の意向等を踏まえ、年間でスポーツ活動を九十七日間、それからコンサート等のイベントを十二日間というふうに設定しております。

 JSCの事業計画におきまして、年間の稼働日数を三百十三日というふうにしているところから、スポーツ活動の利用に影響を与えずイベント実施日数を増やすことは可能であると考えております。

○田村智子君 これは見て分かるんですよ。白いところを見て、一週間から十日空いているところなんてほとんどないですよ、資料を御覧になって分かるとおり。これは、スポーツ利用を減らさない限り、私はできないというふうに思いますよ。

 しかも、私お聞きをしたいんですけれども、これで芝への影響もスポーツ利用も脇に置いて、コンサートなどのイベントを増やして増収に励んでいくと、それでも財政的な問題というのは解決しないはずなんです。

 前回の審議で、大規模改修費用六百五十六億円、これも実際には大きな開きがある額になるのは間違いがないんですけれども、この大規模改修費用の六百五十六億円のうち約四百五十億円は、三十年後の二か年に集中的な設備更新を行うための費用として見込まれている、こういう資料もいただきました。

 それでは、単年度で三百億とか百五十億とか使うんですね。この大規模改修に向けた積立て、これは毎年のその収支の中に積立金として計上しているんですか。JSC、お答えください。

○参考人(河野一郎君) 独立行政法人が所有する施設の大規模改修に必要な予算については、国が措置をしていただくというふうに承知をしております。具体的に必要が生じた段階で予算要求をさせていただくということで理解をしております。

○田村智子君 ということは、大規模改修費用というのはその収支見込みの中にはなくて、別で財政措置を図らなければならないということになっていくわけですね。

 今の収支見込みの点では、私、もう一つ危惧しているのは、経年の収支も赤字が見込まれちゃったら、これ利用料の値上げということにもつながっていきかねない。そうすると、アマチュアスポーツの皆さんがますます使えないような競技場というのが造られていくことにもなりかねないということも危惧するんですが、より危惧しているのは、複雑な構造のものを造り、大規模改修費用もより巨額なものになっていけばいくほど、財政措置は今後も、十年後、二十年後、三十年後と非常に苦しい状態に陥っていくことになる。既に建築費も今までの見込みよりははるかに超えている。そして、三十年後には巨額の大規模改修費がのしかかってくる。これ、大規模改修だけであべのハルカスの建築費にも匹敵すると思うんですよ。(発言する者あり)そう、三十年ごとにあべのハルカス建てていくようなことになるんですよ。

 こういう巨額の財政負担を大臣は今後どういうふうに手当てしていく、そういう見込みがあってこのデザインで推し進めようとされているのか、お答えいただきたいと思います。

○国務大臣(下村博文君) 今回の国立新競技場につきましては、先ほどから申し上げていますが、東京都にも一部の負担を是非お願いをしたいと思っておりますが、財務省、国の国費ですね、それ以外ではスポーツ振興くじ等から予算については是非計上させていただきたいと思っています。

○田村智子君 これ、スポーツ振興くじというのは国立競技場のためにあるんじゃないんですよ。それは、スポーツ団体への助成金であるとか、スポーツ基本法を作ったわけで、各地のスポーツ施設が全然足りていないということは大臣もお認めになっている。そういうところの建築費、改修費にもこのサッカーくじの費用というのは使っていくんだよと、こうやってサッカーくじを国民の皆さんに納得させてきたんじゃないんですか。新国立競技場に巨額の予算を取っていくことになれば、それは、スポーツ団体への助成金が減ってしまう、各地のスポーツ施設に対する助成金も減ってしまう、こういうことになりかねない。

 じゃ、そうしないために、今、議員連盟の中では、何ですか、プロ野球にまでサッカーくじを広げるんだなんということが議論されていますけれども、まさか大臣も、もう仕方がないと、プロ野球にまでサッカーくじ広げて、そうしてまででも財政確保を図るんだと、そんなことをお考えになっているんですか。この点も確認したいと思います。

○国務大臣(下村博文君) これは、議員立法によるスポーツ振興くじの一部改正、平成二十五年に行われて、スポーツ振興くじの売上げの一部を国立競技場の改築事業に充てることができるということになり、平成二十五年度の売上げからその五%を改築事業費に充てているという実績があります。それ以外にこれからどう拡大するかどうかを、これはもう議連の方で判断されることだと思いますので、私の方から是非こうすべきだとかすべきでないということを発言する立場ではないと思います。

○田村智子君 しかし、今大臣は、スポーツくじからのその収益で国立競技場の費用にも充てていくんだと言われた。今のスポーツくじの規模では無理ですよ。こんな巨額の予算使って建築をする、大規模改修を行う、そしたら、更にサッカーくじ広げるためにどうしようかと、国民の中に言わば賭博を広げるためにどうしようかという議論に文科省も巻き込まれていくことになってしまう。私は、そこまでやってこのデザインに固執するんだろうかと。

 先ほどもお話あったとおり、著名な建築家なんですよ、槇文彦先生は。もう世界で認められる日本の建築家の第一人者なんですよ。そういう方々が実に建設的に、こうすれば費用も抑えられてより良い競技場になるでしょうという提案も行った。これは真摯に受け止めて、やっぱり工期の問題、予算の問題からも真摯に受け止めて、国立競技場の在り方、再検討を強く求めて質問を終わります。


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