日本共産党 田村智子
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【14.05.23】東日本大震災復興特別委員会 避難指示解除と賠償打ち切り問題について

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 福島県では避難指示区域の解除に伴い様々な問題が生じていますので、この問題をお聞きします。
 まず、緊急時避難準備区域とされていた地域での帰還状況についてお聞きします。
 二〇一二年三月三十一日に避難指示が解除された広野町、私も厚生労働委員会の視察で昨年三月訪問いたしましたが、住民が戻ってくることには様々な課題があり、町長さん始め町役場の皆さんも本当に苦しい思いをされている、そのことはよく伝わってきました。
 広野町のホームページによれば、住民約五千二百人のうち、町に戻っている、現在住んでいる方、これは約千五百人となっていて、七割の住民が町に戻れていないということになります。
 お聞きしますが、南相馬市、川内村、田村市についてはどうなっているでしょうか。

○国務大臣(根本匠君) 住民の方々の帰還の状況については、各自治体において把握されております。
 例えば、広野町、先生がおっしゃったような状況になっておりますし、田村市は旧緊急時避難準備区域の人口が四千百十七人、そして帰還者数、これは二千七十八人になっております。そして南相馬市、これは四万六千七百三十四人、事前時点の数字でありますが、それが今、三万二千五百三十二人、全体で旧緊急時避難準備区域の人口が約五万八千五百、そして帰還者数は約三万七千五百、約六割の方が帰還しているという状況になっております。

○田村智子君 こういうのなかなか答弁嫌がっていたんですよ。どうして答弁してくれないのかなと、私、質問通告したときに思ったんですけれども。本当に帰れていないという実態だと思うんですが、すっと答弁出てこないというところに、私、やっぱりどれだけの世帯や住民が戻ったのか戻れないのか、これはつかんでいても出したくないのかなと、こう思っちゃうんですよね。そういう復興庁の姿勢については、私は疑問を抱かざるを得ないということを一言言っておきます。
 今年四月に解除された田村市の都路地区東部、報道によれば、避難した世帯の三割弱しか戻っていないと。避難指示を解除すれば、あとは住民の判断ということでは復興支援にならないということを私強く感じるわけです。広野町ですね、避難指示の解除から二年がたっても七割が帰還できていない。
 それでは、数字は今お答えいただいたんですけれども、この実態をどう見るか、根本大臣、見解をお聞かせください。

○国務大臣(根本匠君) 震災から四年目を迎えました。新たな場所での定住を決めた方もおられますが、環境が整えばふるさとに戻りたいと考えている住民も多くおられます。このような住民の皆さんが一日でも早く帰還できるようにすることが必要だと私は考えます。
 帰還を妨げている要因、これは様々なアンケート調査などもありますが、放射線に対する不安、生活関連サービス、インフラの未復旧、まだ復旧が不十分だと、そして雇用機会の不足などが挙げられると思います。この点でいえば、例えばお話しの広野町、この広野町については常磐自動車道及びJR常磐線といった交通インフラが既に復旧、再開しているほか、町の復興に向けて広野駅東側の再開発が進められるなど帰還に向けた前向きな取組が進められているところです。
 復興庁としては、新たに創設した福島再生加速化交付金などを活用して、地元自治体とよく相談して、これらの問題一つ一つに取り組んでいくことが重要だと思っております。

○田村智子君 今大臣が答弁された放射線の問題、これは、避難指示の解除については、確かに三つの要件、年間積算線量が二十ミリシーベルト以下になること、二つ目がインフラや医療、介護等の生活サービスが復旧すること、三つ目が県、市町村、地域住民との十分な協議を行うことと。
 この放射線二十ミリシーベルト以下という基準が、やっぱり安全なんだろうかと。広野町でも、これでは若い方や子供さんは戻ってこれないよという声を私もお聞きをいたしました。
 実効線量が三か月当たり一・三ミリシーベルトを超えるおそれがある区域というのは、法律上、放射線管理区域とされています。原発作業員やレントゲン技師など放射線作業を行う労働者は、年間積算線量の上限が五十ミリシーベルト、女性の場合は二十ミリシーベルトを超えてはならないということが電離則で定められています。これは放射線業務であって、その場合でもできるだけ被曝を避けることは大前提というのが、これも日本の中の法律なんですね。電離則の一番の原則なんです。子供は当然、放射線業務に当たるということは、これは前提にされていません。
 労働安全衛生上の基準から考えても、二十ミリシーベルト以下という基準に不安があって、帰還したくてもできないという方が大勢おられる、これは事実だと思うんですけれども、そのことについてはどう考えられますか。

○大臣政務官(磯崎仁彦君) お答えをさせていただきたいと思います。
 住民の皆様方にとっては、やはり放射線が健康にどのような影響を与えるのかというのは非常に不安なんだろうというふうに思っております。そういった意味では、国際的、科学的な知見というのがまず前提になるのではないかなというふうに思っておりまして、それによりますと、百ミリシーベルト以下の低線量被曝におきましては、放射線による発がん性の増加というものにつきましては、喫煙など他の要因による発がん性の影響によって隠れてしまうほど小さいということで、発がんリスクの明らかな増加を証明することができないというのが知見ということでございます。
 これを踏まえて、先ほど委員から御指摘ありましたように、避難指示解除の際の線量の要件につきましては三つの要件、その中の一つとして年間二十ミリシーベルトというものが定められているわけでございますが、これにつきましては、他の発がんの要因につきましてもリスクは十分低い水準であるということがございますし、また、放射線をどう防御していくのかという観点からしましても、例えば生活圏を中心とします除染、あるいは食品の安全管理、こういったような放射線の防御措置を通じて十分リスクを回避できる水準ということで、今後一層、低線量の減量を目指していくという中では、この基準というものは適切であるというふうに考えております。
 ただ、他方で、昨年の十一月に原子力規制委員会の方で、この二十ミリシーベルトの基準を必須の条件としつつ、一つ目としましては、長期的な目標としまして、帰還後に個人が受ける追加被曝線量が年間一ミリシーベルト以下になるように目指すということが言われておりますし、もう一つ、避難指示の解除後、住民の被曝線量を低減し、住民の健康を確保し、放射線に対する不安に対して可能な限り応える対策をきめ細かく示すべきだという提案がなされておりますので、政府としましても、この原子力規制委員会の提言に基づきまして、昨年十二月、原子力災害対策本部決定におきまして、個人の線量を把握し管理をしていくこと、そして二点目は、被曝の低減対策をきちんと実施をしていくこと、そして三点目、健康不安対策の推進等を柱とする対策、防御措置を講じることとしましたので、これからもこういった管理をきちんと進めてまいりたいというふうに思っております。

○田村智子君 経産省が引き取って答弁してくれたんだなと。昨日、これ質問通告したら答弁のたらい回しに遭いまして、もう私の事務所に、うちのところじゃないと、ここに聞いてくれ、ここに聞いてくれと、三時間たっても答弁者が決まらないという事態だったんですよ。
 私は、二十ミリシーベルトが安全かどうかということを議論しようと思っているんじゃないんです。それが不安で帰れないというのは、これは当たり前の考え方なんじゃないのかと。戻れる方もいらっしゃるでしょう。でも、戻れない人は、そういう戻れないという不安も、それは相当、やっぱり政府としては受け止めるべき、そういう不安に沿った支援を行うべきだということで、帰還についてお聞きをしているわけです。
 で、広野町では、避難指示が解除されたことによって、これは二〇一二年八月までで東電からの慰謝料を打ち切られたんです、戻れていない方も。給与の減額分を補填する就労不能賠償も同じ年の十二月に終了をしているんですね。七割の方がいろんな不安があって町に戻っていない。町に戻った方も、お店が十分にない、かかりつけだったお医者さんも戻ってきていないと。住民が戻っていないために、お店を開くにしても営業が非常に困難だと、こういう状態にある。それでも打ち切られたんですよ。打ち切られたということを私は問題にしたいんです。
 先日出された中間指針第四次追補の中では、例えば就労不能補填については、これは一律に切るべきものではないと書いているんですね、この中でさえ。営業損害及び就労不能損害の終期は、これ、第二次追補で示したとおり、何というんですか、一時的にやるものじゃないと。やっぱり、従来と同等の営業活動を営むことが可能となった日を終期とすることが合理的であると書かれているのに、広野町、切っちゃったんですよ、広野町。これは、私、おかしいと思うんです。
 一度切ったことが、これは本当に妥当なのか。このことを、私、再考が求められると思いますが、いかがですか。

○大臣政務官(磯崎仁彦君) お答えを申し上げたいと思います。
 まず、賠償には恐らく大きく分けて物損があると思いますし、休業損害、それから精神的損害に対する賠償というものに大きく分けられるのではないかなというふうに思っております。
 今委員の方から打切りというお話ございましたけれども、精神的損害ということにつきましては、これは基本的には、避難を余儀なくされた期間、これが賠償の対象になるというのが基本的な考え方でございます。
 大震災が発生をしましたのが平成二十三年の三月の十一日でございまして、この旧緊急時避難準備区域、これが解除をされましたのが、同年、平成二十三年の九月でございますので、基本的にはその余儀なくされたという期間としましては、この三月から九月までの七か月間になるということでございます。
 ただ、委員御指摘ございましたように、原子力損害賠償紛争審査会、これが定める指針におきましても、この精神的損害が継続する相当期間としまして、この七か月に限らずその後約一か月間、具体的には平成二十四年の八月末までの十一か月間でございますけれども、この期間を相当期間ということで、精神的損害の賠償期間ということで定めております。
 更に言えば、この審査会の指針の中でも、その上で、その相当期間を経過した後におきましても、個別具体的な事情に応じて柔軟に判断をするということが言われておりまして、特に、やはり高校生以下の年少者の方におきましては非常に思春期で多感な年代層でもあるということで、この七か月と十一か月の十八か月を経過した後におきましても、五か月間、やはり賠償の対象にするということにさせていただいております。
 更に言えば、その後の期間につきましても、先ほどの指針に応じまして、やはり特段の事情等があれば賠償が発生している場合には損害賠償の対象になるというのが基本的な考え方でございますので、一律に賠償の対象とするというものと、その後の個別具体的なものを判断をして賠償するということにつきましては、指針としてもございますので、それに基づいて東京電力も賠償をしていくということで御理解を賜りたいというふうに思っております。

○田村智子君 これは、もうだから、避難指示解除を切ったらもう戻るのが当然で、そこから先はどんどん生活再建できるよという大前提の下で作っているとしか、あるいは賠償の打切り、慰謝料の打切りというのが行われたとしか思えないんですが、それは実態から見て余りにも懸け離れているのが現に避難指示解除が解かれたその地区を見れば明らかじゃないかという問題提起をしているわけですよね。
 政府は、中間指針第四次追補で、新たな故郷喪失分として一人七百万円の精神的損害賠償の追加賠償を行うとしました。これも批判高いですね。二〇一七年六月以降の分を一括して支払う。これで賠償を打ち切るという方針。この対象は、帰還困難区域を始め長期にわたって帰還不能とされる区域。避難指示解除準備区域、居住制限区域に関しては、一人につき十万円の精神的賠償は広野町などでは七か月だったけれども一年にしましょうと、一年で、基本的には、それをめどとして打ち切ると、こういう方向だと。
 だけど、これまでの避難解除の実態を踏まえて考えてみれば、これは広野町や川内村で起きているような事態を一層広げることになる、矛盾を広げることになると思います。現に、広野町や川内村では、町長さんや村長さんが政府に対して、私たち何で打ち切られちゃったのか、こういう話をしているはずなんですね。
 こういう中間指針の第四次追補というのは、余りにこれまでの実態を踏まえていないんじゃないか。見直すことが必要だと思いますが、いかがですか。

○副大臣(櫻田義孝君) お答えさせていただきます。
 原子力損害賠償紛争審査会が昨年十二月に策定いたしました中間指針第四次追補におきましては、その時点で避難指示解除及び帰還の見通しすら立たない状況にある帰還困難区域の住民の方々につきましては、早期に生活再建を図るためにも、避難指示解除の時期に依存しない賠償が必要と考えられ、精神的損害も一括して賠償することといたしました。
 他の避難指示区域につきましては、インフラや生活関連サービスが復旧した段階において解除されることが前提と考えておりますが、これらの地域の住民の方々については、帰還するにはある程度の準備期間が必要であること、帰還に向けた節目となる時期は個々の避難者によって様々であること等を考慮して、避難指示が解除された後に精神的損害等の賠償が継続される期間を、当面の目安として一年間といたしました。
 文部科学省といたしましては、避難指示区域の状況を踏まえ、中間指針第四次追補は被災者の救済に資するものと考えており、指針の考え方に基づき、原子力損害賠償紛争解決センターも活用をいただきながら、被災者の方々に寄り添った賠償が進められることが重要と認識しているところでございます。

○田村智子君 もう帰還が大前提で、一年あれば元の生活に戻れるでしょうという、絵に描いた餅なんですよ、それは。広野町とか川内村を見れば、どれだけ皆さんが苦しんでいるか、戻りたくても戻れないという状態にあるか。私、戻った方々だって、これ本当に打ち切っちゃっていいのかと思うんですよ。
 例えば川内村の方、村にいたときは、豊かではないけれど、米と野菜を作り、水もあった、山では山菜もキノコも取れた。しかし、今は何でも買わなくてはならない。賠償が打ち切られ、年金だけでは足りない分は貯金を取り崩しているんだと。元の生活に戻れていないんですよ。自給自足のようにして生活をしていたから、その分の生活費必要なかった。だけど、今それができなくなっている。それでもどんどん打ち切っていく。まして、戻るに戻れない、不安を一杯抱えている方々、戻らないあなたの責任でしょうと言わんばかりに打ち切っていく。私、これは本当に問題だと思うんです。このままでは復興支援どころか、その復興したいという思いを踏み付けにするような事態が進むと思うんです。
 これ、根本大臣にお聞きしたいんです。やっぱり帰還という問題は復興庁はもっと責任持ってほしいんですね。縦割りでやっていると、二十ミリシーベルトがどうだとかこの指標がどうだとかという話になっちゃって、もっと本当に、被災された方、避難している方のその実情に立った支援策を、復興庁は私たちが進めるんだという勢いでやってほしいわけですよ。いろんな省庁に答弁投げないで、やってほしいんです。
 根本大臣は、今年二月、衆議院の予算委員会で、我が党高橋千鶴子議員の質問に対して、一年間という期間は、避難指示解除が検討されている区域の現状を踏まえて、当面の目安として示すものであり、実際の状況を勘案して柔軟に判断するのが適当だというふうにお答えになりました。
 これ、指針のところを見ても、一年でなかなかインフラ整備ができない場合にはもうちょっと延ばしましょうとか、そんなようなことが書かれているんですが、そういうことじゃなくて、避難されている方のやっぱり生活が本当に復興できるんだというめどが立つ、せめてそこまで打ち切るべきじゃないというふうに思いますが、そういう検討を復興庁からやっぱり呼びかけてほしいと思います。大臣、いかがですか。

○国務大臣(根本匠君) 私は先ほども、帰還を妨げている要因、三つ挙げました。放射線に対する不安、生活関連サービス、インフラの未普及、雇用機会の確保、やはりこの三つの大きな要因を克服しなければいけないと私は思いますよ。
 そして、川内村だって、今、村長を先頭に、いかにして魅力ある地域をつくるか、懸命に頑張っておられる。例えば商業施設も、共同の公設民営の商業施設を造って、生活のできるような環境整備、本当に身を粉にして働いて頑張っていますよ。
 そして、先生のおっしゃるのは、一つは住民の放射線への不安の解消、これは課題ですよ。ですから、大事なのは、個々人の懸念、不安にきめ細かく対応したリスクコミュニケーションの実施、一人一人に寄り添って対話をしながら、今、川内村だって、例えば保健師さんが長崎大学の大学院の方も来られた、もうその保健師さんは一人で千人の住民との対話をやって、丁寧にこの住民の健康不安の対応をしていますよ。やっぱりそういうことを我々は一緒にやっていかないと、先生のおっしゃることで本当に私はどうかなと思いますよ。
 やっぱり、不安の解消をするためのリスクコミュニケーション、そして生活関連サービス、インフラ、魅力ある地域づくりをしっかりやる、雇用の場も確保する。川内村だって、村長さんの努力で新規立地企業を誘致していますよ。そして、工業団地の整備だって……

○委員長(蓮舫君) 大臣、時間が来ておりますのでおまとめください。

○国務大臣(根本匠君) 工業団地の整備もしっかりやれるように、我々、再生加速化交付金でやれるようにした。やっぱり私は、被災者の立場に立つということは、そういうもろもろの要因を考えてしっかり我々が復興に取り組むこと、関係省庁挙げて取り組んでいくことだと私は思います。

○田村智子君 その川内村の村長さんが、この賠償の打切りの問題について意見を上げているんです。私はそのことにも取り組んでくれと言っているんです。その努力を否定するものでは決してありません。
 一言申し上げて、質問を終わります。