日本共産党 田村智子
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【13.11.26】文教科学委員会 高校無償制廃止法案について

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 この法案は、公立高校の授業料無償化の制度を廃止するというものです。これまで自民党は、マニフェストなどでも、高校無償化に所得制限が必要だという政策を盛り込んでこられたはずです。ならば、公立高校の授業料不徴収を原則として、その適用除外としての所得制限の規定を置くと、こういう法案にもできたはずです。
 なぜ授業料不徴収条項を丸ごと削除するのか、まず大臣にお聞きをいたします。

○国務大臣(下村博文君) 所得制限を設けることにより、一部の方に授業料負担をお願いすることになるにもかかわらず、不徴収制度を維持することは適切でないと考え、この就学支援金制度、これは私学でそういうふうになっているわけですが、一本化をしたわけでございます。あえてこの不徴収制度の下で所得制限を導入しようとすることになると、全ての生徒、全員に対しての所得確認を行うという事務作業が更に増えてしまうということにもなってくるわけでございます。
 また、これまで公立学校の授業料不徴収制度と、それから今申し上げました私立学校等の就学支援金制度、この二つの制度が存在を今までしていたわけでございまして、私立学校から私立学校に転学する場合のみ、この就学支援金の支給期間が三十六か月となる等の不均衡が生じるという、そういう課題もあったということもありまして、今回は制度を一本化にするということをもって課題を解消するものでもあります。

○田村智子君 不徴収条項に所得制限となれば全ての高校生の所得の把握が必要だと。今も就学支援金で恐らく全ての高校生、自ら九百十万円超えているから必要ないですよという方が出さないという例外があるのかもしれないんですけれども、全ての高校生から所得の確認を前提とするように法案を組んでいるわけですから、私はやっぱりこの不徴収条項の削除って大きな問題があると思う。これを具体的に幾つかお聞きをいたします。
 例えば、公立高校について、授業料を発生させて就学支援金を給付する、こういう制度になると、就学支援金を上回る授業料を定める都道府県があった場合は、その差額が授業料として発生することになるのではないか。局長に確認をいたします。

○政府参考人(前川喜平君) 就学支援金の額につきましては、この法案の第五条第三項におきまして、支給限度額は、地方公共団体の設置する高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部の授業料の月額その他の事情を勘案して決めると規定されております。そのことから、現実には全国の標準的な授業料額を設定するということになると考えております。
 したがいまして、地方公共団体が標準的な授業料額に基づいて定める就学支援金の支給限度額を超える額として授業料を設定するということも、これは制度上は確かに可能であるということでございます。

○田村智子君 可能だから授業料が発生するということですよね。差額分は徴収の対象となるということですよね、局長。

○政府参考人(前川喜平君) 授業料が就学支援金の額を仮に上回っているという場合には、就学支援金が学校の設置者に支給されまして授業料に充当されますので、その差額分が生徒から徴収されるということになります。

○田村智子君 東京都は、公立高校の授業料徴収条例を今も廃止していません。その年額は十二万二千四百円で、現行の就学支援金を三千六百円上回っています。法律から授業料不徴収の条項を削除し、就学支援金の支給額が現行のままであれば、東京の公立高校に来年四月に入学する高校生の多くが授業料の一部又は全額を払うということになってしまいますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(下村博文君) 就学支援金については、法案第五条第三項で、支給限度額は地方公共団体の設置する高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部の授業料の月額、その他の事情を勘案して定めると規定されていることから、実際には全国の標準的な授業料額を設定することになると考えております。
 したがって、本法案が地方公共団体の定める授業料額を規定するものではありませんが、公立学校の授業料の規定に当たっては、その設置者である地方公共団体の権限と責任において適切に判断されるものと考えており、今回のことを法律改正しても、東京都は現状、つまり上乗せして授業料を徴収しないということを今もしているわけでございますが、そのようになるのではないかと期待をしております。

○田村智子君 期待なんですよ。今は不徴収条項があるから、標準額を上回るのを条例で書いていても徴収できないんです、東京都は。これ、このままだったら東京都は発生するということですよ。
 これ、東京だけの問題じゃないんです。例えば大阪府は、授業料不徴収の法律ができる前、府立高校の授業料を年額十四万四千円としていたわけです。これは、当時の国の地方財政計画の基準額を二万五千円以上上回るものなんです。今後の条例で公立高校の授業料が各都道府県でどのように設定されるか、これは都道府県の判断に委ねられる。そうすると、公立と私立の公平性を理由にとか土地代が高いとか人件費が高いとか、そういうことを理由に授業料の一部を私立と同様に徴収する可能性が否定できないんじゃないのかと。大臣、これ、徴収は起こらないと、そう確約できるんですか。

○国務大臣(下村博文君) 元々、平成二十二年から民主党政権のときに、高校授業料、実際には公立高校授業料無償化でありますが、これは全国平均の十一万八千八百円に沿って相当額を無償化したということですから、現行法でも地方自治体の判断というのはそれは尊重されるべきものであるわけでありますが、にもかかわらず、東京都においてもあるいは大阪府においても相当額で無償化ということで対応したということでございますから、それは都道府県で独自に考えられることであるというふうに思いますが、できるだけ負担が増えないような対応についてはそれぞれの都道府県で努力をしていただきたいと思います。

○田村智子君 繰り返し言うように、それは、不徴収条項が法律で定められているから各都道府県は徴収ができないというふうになったわけですよ。それを削除するからこういう問題が起きると言っているんです。この授業料不徴収条項の削除は、就学支援金の支給額にも影響を与えかねないと私は思います。
 現行法は、第三条二項で、公立高校無償化のための国の交付金は公立高等学校基礎授業料月額を基礎に算定すると、こう定めた上で、就学支援金の支給限度額をこの公立高等学校基礎授業料月額その他の事情を勘案して定めると、こうしています。
 ところが、法案でこの三条二項も含めて削除をいたしますので、公立高等学校基礎授業料月額という規定そのものがなくなります。就学支援金の支給限度額は、先ほどから答弁あるとおり、公立高等学校などの授業料の月額その他の事情を勘案して定めると、これだけになるんですね。では、都道府県によって公立高校の授業料にこれまでも現にばらつきがありました。こういうばらつきがある場合、一体、公立高校の授業料を勘案する、これどういうふうになるんですか。お答えください。

○政府参考人(前川喜平君) 公立高校の授業料の設定につきましては、その設置者である地方公共団体の権限であるということは確かでございます。そのため、各地方公共団体によって授業料額が異なることは確かにあり得るということでございますが、実際には全国の標準的な授業料額を就学支援金の支給限度額として設定することになります。その全国の標準的な授業料額につきましては、例えば地方交付税の算定基礎となる地方財政計画における授業料単価がその一つの指針になると考えられます。このような形で、現実の授業料と地方交付税上の授業料単価とこの就学支援金の支給限度額が調和的に設定されていくことになるだろうと考えております。

○田村智子君 現行法は、公立学校の基礎授業料月額というラインがはっきりした上でその他事情を勘案とあって、公立と私立の公平性から就学支援金がこの基礎授業料月額というのを下回ることはまずあり得ないんですよ。そのラインをなくしてその他事情を勘案ということになれば、就学支援金の額は毎年予算折衝で決まることになります、時々の政府の判断になってしまう。
 国の財政事情などを理由に現行の支給額よりも後退するということがあり得ないという保証がこの法案の中にあるんでしょうか、大臣。

○国務大臣(下村博文君) それは基本的にあり得ないことだと思います。この就学支援金については、法案第五条第三項で、「支給限度額は、地方公共団体の設置する高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部の授業料の月額その他の事情を勘案して定める」というふうに規定されていることでございまして、将来的にも国が全国の標準的な授業料、下回る額を設定するということは考えておりません。

○田村智子君 それは大臣が個人的に考えていなくても、法律というのは一度できたら独り歩きしていくわけですよ。独り歩きしていくんですよ、その他事情を勘案という言葉も入れて。しかも、公立高等学校の授業料というのはこれまでだって幅ありましたよ。授業料不徴収になる直前でいっても、一番安いところは鳥取県で十一万一千六百円、一番高いところは大阪府で十四万四千円ですよ。その標準額がどうなるのか、そしてその他事情が勘案されたときどうなるのか、これ分からなくなっちゃうんですよ、将来的に。
 大体、来年度の予算編成に向けても、公立高校の授業料無償化廃止で就学支援金に所得制限も設けて、これ三百億円ひねり出すと、こういう提案していたって、財務省はそれを就学支援金の加算に使うことをまだ未定だと言い張っているじゃありませんか。まさに政権の判断、財務省の判断、こういうことになっていっちゃう。私、だからこそ、改めて公立高校の授業料不徴収条項、この削除は撤回しなくちゃ駄目だということを強く申し上げたいと思います。
 時間がないので、次に行きます。
 所得制限の問題です。現行の制度では、学校設置者を通じて高校生が申請を行うことで就学支援金は支給をされます。この申請書の様式も極めて簡単です。生徒本人の氏名、生年月日、住所を記入するだけでいいと、あとは学校側が記入するんです。
 法案の第十七条、これに加えて、受給権者は、「保護者等の収入の状況に関する事項として文部科学省令で定める事項を届け出なければならない。」として、この届出がない場合は就学支援金の支給を差し止めることができるとしています。
 局長にまず確認をします。この保護者等の収入の状況の届出、この届出が義務付けられている受給権者とは高校生のことですか、それとも保護者のことですか。

○政府参考人(前川喜平君) ここでいいます受給権者でございますが、これは現行制度でも同じでございますけれども、高等学校等に在籍する生徒又は学生を指すわけでございます。したがって、その生徒等が本人の名義で受給資格の認定の申請等を行うということになりますが、その際に、今回新たな制度で提出することとなる文書につきましては、これは保護者でなければ入手できないものであるというふうに考えております。

○田村智子君 今までの受給権者って、本当に申請出すだけで受給権者になれるんですよ。その申請出すこと、別に高校生に大変な負担でも何でもないんです。
 もう一点局長にお聞きしたいんですけれども、全ての高校生にこういう就学支援金の支給が必要であるということを証明しろと義務付けたということなんです、法律で。このように全ての高校生に法に基づく行為を義務付ける、こういう法律はほかにありますか。

○政府参考人(前川喜平君) 高校生が権利義務の主体となっている制度というのは、現在、都道府県が行っております高校生の奨学金事業がそれに当たると考えます。
 また、現行制度におきましても、申請その他就学支援金に関する事務の手続の主体は生徒とされておりまして、低所得者加算を受ける場合に所得証明書などを提出するわけでございますけれども、これも現行でも生徒の名前でやっておるということでございます。

○田村智子君 だけれども、奨学金の返還というのは高校を卒業してからの返還ですよね。全ての高校生に就学支援金受けるため法律によって何かの届出義務付ける、法によって何かの行為を義務付ける、こんな法律、ほかにないわけですよ。
 私、法案を条文に沿って調べるほどに悲しくなってきました。高校生に申し訳ない気持ちになってきました。無償としていたはずの公立高校の授業料、たった三年で元に戻して、就学支援金を受けたければ保護者の収入を届け出て経済的な負担軽減が必要であるということを証明しなさいと、これ全ての高校生に義務付ける、これがこの法案の姿なんですよ。
 こんな法制度をつくることが、大臣にお聞きします、国際人権規約、社会権規約の第十三条、中等高等教育授業料無償化の漸進的な実現、これを進めることになるなんてどうして言えるのか、御答弁ください。

○国務大臣(下村博文君) まず、先ほど、この法律改正をすることによって授業料を下回るような設定をすることがあり得るのではないかということは、これはあり得ないというふうに思います。それは、私が大臣である間だけじゃなくて自民党政権でもあり得ませんし、また、ここにおられるほかの党も含めて、これは民主党政権に、あるいはほかの政権にもしなった、将来政権交代があったとしても今までの議論からしてあり得ないのではないかということを申し上げたいと思いますし、そういう法律案ではないということを申し上げたいと思います。
 それから、今回の制度改正は、現行の高校授業料無償化をより効果的に実施する観点から、現行予算を活用し、低所得者世帯への支援を重点的に行う等の改善を通じて実質的な教育機会の均等を図るものであり、全ての者に対して教育の機会が与えられることを目的とする人権規約の趣旨を更に前進するものと考えております。
 なお、公立学校で就学支援金と授業料の差額が生じる可能性があることについては、これは国として全国の標準的な授業料額を就学支援金の額として設定すること、また、受給する生徒全員に対する必要書類の提出を義務付けることは、これは個人給付の制度で一般的であるということから、特段の問題であるとは考えておりません。

○田村智子君 今まではそんな届出がなくても就学支援金を受け取れていたわけですよ。現行の法制度も就学支援金の加算の規定というのはあるんです。現行法を変える必要ないんですよ、充実させるために。全然これ、国際人権規約の前進だなんて言える保証はこの法案の中に何もないです。そのことを強く指摘します。
 もうちょっと具体にお聞きします。
 高校生に保護者の収入を届け出るように義務付ける。これは、保護者が安定した働き方で、例えば年末調整のための書類を毎年会社に提出していると、こういうような働き方をしていれば、確かに課税証明を取る手間というのはありますけれども、それほど問題にならないと私も思います。しかし、貯金もないような貧困世帯、還付金なんか受けたことないというような世帯、複雑な問題を抱えるような家庭、社会から孤立したような家庭、こういう家庭ほどそのハードルが高くなってしまう。幾つかのケースを私、取り上げたいと思います。
 例えば、短期の仕事でどうにか生活を維持しているという場合があります。自分で確定申告しなければ課税証明取ることできません、年末調整ありませんから。経済的に苦しい方ほど時間的にも追われて複雑な税金の手続が大きな負担になるということは、ちょっと考えれば分かることです。中には、源泉徴収が手元にないという場合も残念ながらあるわけです。今、モラルを欠いた事業所が現に存在していまして、源泉徴収を労働者に出していないというケースが現実にあるわけです。この場合はどうやって課税証明を取ればよいのか、局長、お答えください。

○政府参考人(前川喜平君) ただいまのお尋ねは、事業所が源泉徴収票を出してくれないというようなケースということだと承知しておりますけれども、源泉徴収をする事業所といいますのは給与等の支払を受ける者に対しまして源泉徴収票を交付しなければならないと、これは所得税法で定められているところでございます。
 源泉徴収された者が仮に勤め先から源泉徴収票が発行されないということで適正な納税額を申告できないというようなケースがあった場合には、まずは税務署等で相談して、まず源泉徴収票は税務署にも出すことになっておりますので、税務署を通じてこの会社に対して源泉徴収票の交付を求めるということができると考えます。
 そういうことを通じまして源泉徴収票につきましては入手することが可能になるだろうと考えておりますけれども、このような生徒あるいは保護者の責めに帰すべきではないような理由によりまして、仮に期限までに課税証明書を取得し提出するということがかなわなかった場合につきましては、その旨を事前に申し出ることによりまして、本来支給が開始されるべき時点、すなわちその事前の申出を行った時点に遡及して就学支援金の支給を受けるということも制度上はできると考えております。

○田村智子君 労働問題として解決しなきゃいけない問題なんですけどね。税務署に届け出て相談して出してもらうようにしてと、こういう手間を、もちろん解決しなきゃいけない問題ですが、就学支援金を受け取るためにも必要になってしまうということです。
 例えば、次です。DV、事実上の離婚状態、親のどちらかが家を出てしまい行方不明、こういう場合は保護者一人の収入を届け出ることになります。そうした事情を自治体などに確認をさせることも必要だということが衆議院の委員会の中で答弁がされています。
 これ、多感な年齢の高校生にこういう複雑な家庭状況を報告させること自体、私は余りにも残酷なことだと思います。また、確認ができない期間は就学支援金の支給は差し止められて、授業料満額の請求書が本人の元に届くことになってしまうと、これも指摘しなければなりません。
 お聞きをしたいのは、更に複雑な場合、ネグレクトなど親からの虐待がある場合です。この場合、高校生本人の収入で判断するといいますけれども、これまたその届出が必要で、ネグレクトしていますなんて保護者が事情を届け出ることはまずあり得ないですよ。そうすると、高校生が、自分は虐待を受けていますと、親がネグレクト状態ですと、こういう届出をしなければならないということでしょうか、局長。

○政府参考人(前川喜平君) 保護者であります両親に共に所得がある場合につきましては両親の市町村民税の所得割額を合算して判断するというのが原則でございますが、ネグレクトを含む児童虐待の場合など、やむを得ない理由によりまして保護者のうち一方又は双方の証明書類が提出できないというような場合につきましては、当該事情を明らかにした上でもう一方の保護者又は本人の所得のみにより判断することができると考えております。こういった取扱いは現行制度でも可能でございますけれども、新制度でも継続してまいりたいと考えております。
 その際の確認方法につきましては、本制度の受給権者があくまでも生徒本人であるということから、例えば生徒本人に申出書の提出を求めるなど、やむを得ない理由の判断主体である都道府県におきまして柔軟に運用することが可能であるということで、高校生は未成年ではありますけれども、こういった申出書を作成する能力はあるというふうに考えております。
 ただし、ネグレクトあるいは児童虐待ということが深刻な事態であるのであれば、これは学校あるいはスクールソーシャルワーカーの対応の域を超えているというケースにつきましては、やはり児童相談所に学校として連絡をするということが必要になってくるだろうと思います。

○田村智子君 今、虐待ということを本人自身も認めたくなくて、子供の場合ですよ、それを認めちゃったらもう自分自身が傷ついちゃうから認めたくない、こうやって虐待が見えなくされている、ネグレクトが見えなくされている、そういう状態だと思うんですね。それを高校生が届け出ることは可能だと。これは私は余りにも机上の論理といいましょうか、機械的な理論といいましょうか、余りに冷たい法案だなということもまた改めて感じたところです。
   〔委員長退席、理事石井浩郎君着席〕
 もう一つの事例でお聞きいたします。
 例えば、定時制高校などでは、通学のための費用などを自分で払っていると、こういう高校生がいます。家族関係が複雑であったり、あるいは、これもネグレクトなど絡んでくるかもしれませんが、保護者から自分自身を守るためとか、あるいはもう自分で自活したいんだという信念持っている場合とか、様々な事情で親元離れて暮らしたり、自分で自分のことを賄おうって頑張って働きながら高校に通っている方っています。
 この場合は本人の収入で見るのでしょうか、保護者の収入で見るのでしょうか。

○政府参考人(前川喜平君) 本法案におきましては、この判断すべき収入といいますのは保護者について見るわけでございますので、本案において保護者というのは学校教育法上の保護者でございまして、これは原則親権を行う者、親権を行う者がないときは未成年後見人ということとされております。
 親と離れてアルバイト等により得た自らの収入で学費を払っているというような場合につきましても、成人である生徒である場合を除きましては基本的に保護者の所得で判断するということになるわけでございますが、先生の御指摘の中にございましたようなドメスティック・バイオレンスでありますとか児童虐待というようなケースにつきましては、これは親の収入を確認することができないという状態であるということで、本人の所得のみによって判断するということも可能であるというふうに考えております。

○田村智子君 これ、だから本人の所得で見る場合の状態というのが一体誰が判断することになるのか。これ局長、もう一度、今のドメスティック・バイオレンスとか親からの虐待の場合の本人の収入で見るという場合、一体誰が判断をすることになるんですか。

○政府参考人(前川喜平君) これは、現在もこの就学支援金の加算につきまして同様の状況が起こり得るわけでございますけれども、現在の就学支援金の事務処理要領の中で、「ドメスティックバイオレンスや児童虐待など、やむを得ない理由により保護者のうち一方又は双方の証明書類が提出できない場合には、当該事情を明らかにした上で、もう一方の保護者又は本人の所得のみにより判断することができる。」としておるわけでございますが、この判断をする主体は都道府県でございます。

○田村智子君 これ大変なことですね、そういうことを義務付けて、高校生に届出義務付けて都道府県に判断してもらうと、こういうことを高校生がやっていかなくちゃいけないという法案になっているんですね。
 私、これまでいろんな聞き取りやってきた中では、例えば、両親は高校に行かなくてもいいんだと言って授業料を払ってくれない、不徴収の前の話です。それで、やむなく祖父母が見るに見かねてその授業料の負担をしてくれて、そして高校に通うことができたという高校生が現にいるんだということを教職員組合からも聞いてきました。授業料が不徴収になったから、こういう心配、親とのあつれきなどなく、ただ自分の権利として高校に通うことができるという道がやっと開けた、それがまた様々な届出を必要とすると。親とあつれきがある高校生に、お父さん所得証明が必要なんだと、課税証明書取ってきてくれと、そんな手間掛かるぐらいだったらおまえ高校なんか行かなくてもいいよと、こういう事態が一件も生じないなんてこと、私は考えられないと思うんですよ。
 今まで私が挙げてきた例というのは、子供の貧困の深刻化の中で現実に起きていることです。空想ではありません。このような事例で収入証明ができないために、就学支援金のこの受給ができないとか、差し止められるので、支給が遅れて授業料が一旦発生するとか、こういうことは私は一件もあってはならないと思います。社会的に孤立した家庭の高校生や家族関係に困難を抱える高校生が制度の谷間に陥る危険性、これを防ぐために、大臣、具体的にはどんな施策を検討されておられるんですか。

○国務大臣(下村博文君) そもそも、大局観になって考えていただきたいと思うんですね。つまり、今回の法律改正案は、低所得者層に対する更に厚い手当てをするための財源を所得制限によって確保して、更に手厚くしていこうというのがこの趣旨の目的でありますから、今委員が御指摘されたようなことは手続上のいろんなことはあるかもしれませんが、より手厚くしていこうというのが基本的な考え方の根本にあるということをまず認識していただきたいと思います。
 そして、今のような事例があることについては、十二分に都道府県や、あるいは民生委員、児童委員等々、地方自治体も含めて配慮していただきたいというふう思いますが、基本的には、第一義的には親の責任ですから、子の教育については。ですから、子供が成人する前については親がしっかりとした第一義的に教育に対して責任を持つということをもっと当事者の親は理解をし、そしてそういう視点で子供を育てていくということをより思っていただきたいというふうに思います。
 御指摘のネグレクトを含む児童虐待の場合など、そういうやむを得ない理由により保護者のうち一方又は双方の証明書類が提出できないと、こういう場合は、現行制度でも、当該事情を明らかにした上でもう一方の保護者又は本人の所得のみにより判断することができるようになっていると。このような取扱いは新制度でも別に変わるわけではないわけです。都道府県に対しても改めてこれは周知をしていきたいというふうに考えております。

○田村智子君 親の責任って、子どもの貧困対策法というのは、どういう家庭の状況、どういう親の下にあっても子供たちの貧困の問題の解決は国にあるんだ、自治体にあるんだという法律を大臣も一緒になって作ったわけじゃないですか。それを後退させるように、まず第一義的に親の責任なんだなんてこの法案の審議で言ってもらったら私困るというふうに思うんですよね。一般論では分かりますよ、一般論でも。でも、私が具体的に挙げたのは、そういう様々な複雑な家庭状況にある子供たちへの責任はやっぱり国が最低限のものを果たすべきじゃないかという立場で質問しているわけですから。
 私、低所得でそこの世帯への加算が必要だということで、所得についての状況とか家の状況を説明する、それについて学校が丁寧に相談に乗る、これ必要だと思います。今回、それ、全ての高校生の所得の状況をつかむということで、かえって手薄になる危険性あるわけですよ。出してくれないところにはまず出してくれってせっつく必要があるんです。出してくれない人がいっぱいいたら、個々の事情に目をやっている時間がなくなっちゃうんですよ。そういうやり方を持ち込んでいるんだということを私やっぱり強く指摘をしなければならないというふうに思うんです。
 私が一番聞きたかった一件も、本来支援が必要なのにその支援の制度の谷間に落ちてしまうという人を出さないためにどうするかという具体的なお答え、何もないわけですよね。それでもう来年度から親の収入の届出を義務付けるわけですよ。こんなやり方は私はやるべきじゃないというふうに思います。
 今、何度も何度も就学支援金の加算、これ必要だということを言ってきました。私たちもそれを認めます。先ほども言いましたけれども、それは別に法律を変えなくとも既に現行の法律で制度化をしているわけです、加算という問題は。何をすればいいか。私は概算要求で堂々と要求すべきだったと思いますよ。
 大体、文部科学省は、概算要求総額で一〇・二%の増額要求をしているわけです。その中身を見てみても、スーパーグローバル大学事業、これ新規事業で百五十六億円。小中高校のグローバル人材育成、つまりエリート教育、これには五十四億円増の五十六億円。戦略的イノベーション創造プログラムの創設として総合科学技術会議の司令塔機能強化、これも新規事業で三百五十億円、つまり三百五十億円増ということです。国際核熱融合実験炉の計画には百三十六億円増額の三百五億円。「もんじゅ」も、存続を前提に二十一億円増額の百九十五億円と。これ、一つ一つの施策がいいか悪いかというのはここで論じません。
 しかし、就学支援金の加算、これに使うお金は二百五十億円から二百六十億円だってさっきから御答弁ありますね。所得制限によって生み出すのは三百億円だけど、うち四十億から五十億は所得把握のための事業費だというわけですから、加算に純粋に使えるのは二百五十から二百六十億円ですよ。これ、何でこれの増額要求ができないのか。ほかの施策と同じように増額要求すればよかったんじゃないですか、大臣。

○国務大臣(下村博文君) 個々に言われれば個々に反論したいことはたくさんありますが、まあ言葉じりをお互いに取るような議論をしてもしようがないと思いますが、私が申し上げる、まずは、第一義的には親の責任だと。で、今回の法律改正によって、今の田村委員の言葉を借りれば、その枠の中で落ちこぼれてしまうような、あるいはその制度の中に乗れないような、そういう子供をどうするかということについては、これは都道府県等十分に対応するように周知徹底をしていくことによって、そういうことがないような、これは本来、先ほどから申し上げていますように、低所得者層に対する更に厚いこれは手当てですから、厚い手当て支給がそういう一人一人の全ての子供たちに対象になるように、しっかりとした、これは法律を作れば解決する話では御指摘のように全てがないわけですから、いろんな細かい対応については十二分に文部科学省が先頭に立って都道府県に対して配慮をしていきたいと思います。
 それから、来年度の一〇%の概算要求をしているのにもかかわらず高校についてはそんなにしていないのではないかという、まあ一言で言えばそういう御指摘だというふうに思いますが、我々は、あるいは田村委員も考えは同じではないかと思いますが、やっぱり教育というのは未来に対する先行投資だと思うんですね。一人一人の可能性をどう教育によって引き伸ばすことができるかというそのチャンス、可能性を教育は提供できる場であるというふうに思います。そして、一人一人の付加価値を提供、教育によってすることによって、これからグローバル社会の中で伍していくいくような人材育成を考えるということをすれば、これは幼児教育から含めて、大学や大学院、あるいは今の御指摘のような留学に関係する、あるいは科学技術についてもそうです、それを支えるためのやっぱり高度な人材、教育によって養成することが可能でありまして、それをトータル的に考えた中での政策として、今回、高校においては、これは更なる低所得者対策や公私間格差を是正するということについては、この財源については、これは所得制限を上位二二%の方々からいただくことによって賄うということを政策的に判断したわけでございます。

○田村智子君 これは納得のいかないお答えなんですね。就学支援金の加算が必要だという立場に立てば、これは増額要求できないはずがないというふうに私は思うんですよ。これは、高校無償化の廃止、まあおっしゃったとおり所得制限の導入先にありき、だからこういう法案が出てきたとしか言いようがないわけです。
 私、子供の貧困対策、全ての子供に教育を受ける権利を保障すると、これは最優先課題だと思います。本気で予算の増額を進めなければなりませんので、この点についても質問をいたします。
 これまでの委員会の審議では、給付制奨学金の必要性、これ、今回、所得制限を課したその予算の中に入ってないんですね。新たに予算取りに行かなきゃいけないんですけれども、この給付制奨学金の必要性ということも繰り返し指摘をされてきました。
 衆議院の委員会質疑を見ていますと、これ質問されると、文部科学省は答弁で給付制奨学金という言葉を絶対使いません。奨学のための奨励金と言い換えています。これなぜですか。

○政府参考人(前川喜平君) 新しい給付の制度でございますので、どういうような呼び方をするかということは制度をつくるときに考えればいいことなんでございますけれども、従来、給付型奨学金あるいは給付制奨学金という言葉で呼ばれてきておりました。
 ただ、奨学金という言葉はこれは既に定着している言葉で、我が国におきましては原則が貸与制であると。都道府県が行っております高校生に対する奨学金事業は貸与制で、所得要件と併せまして成績要件が課されていると、こういうものを我が国では奨学金と概念しているということでございます。都道府県におきましては、奨学金条例等に基づきましてこの奨学金事業を行っているということですので、奨学金という言葉を使いますとその一種であるという形にとらえられかねないと。
 むしろ、現在、奨学のための給付金と呼んでおります仕組みは、教育費負担の軽減として行われております義務教育段階における就学援助の制度を参考といたしまして、経済的な観点から低所得世帯への支援として創設するということを考えているものでございます。
   〔理事石井浩郎君退席、委員長着席〕
 したがいまして、この成績要件等が定められている貸与型の奨学金とは性格の全く異なるものであるということですので、その点を明確にするためにあえて給付型奨学金という言葉はやめまして、奨学のための給付金という名称を用いることとしたところでございます。

○田村智子君 これは就学援助の高校生版なんだというような説明を私も受けました。それは必要なことだと思います。生活保護の制度には、生業扶助の中に高等学校等就学費というのが二〇〇五年度から計上されているわけです。これ、学資保険のあの裁判などを受けて、高校進学まで保護世帯の子供たちも保障すべきだというこの運動を反映してのものなんです。
 だったら、私、大臣にちょっと二点要望したいんですけれども、やはりこれ制度として、就学援助の制度を高校生にも広げるという制度として確立をすべきではないか。それともう一点……

○委員長(丸山和也君) 田村君、時間が来ておりますので、おまとめください。

○田村智子君 はい。
 それを超えて高校生の生活支援も含めた給付制奨学金の制度というのが必要ではないか、このことを求めたいと思います。

○国務大臣(下村博文君) 私も必要だというふうに思います。
 今、全体的に見ていただきたいと思うんですが、一種、奨学金というよりは今はもう学生ローンのような形になっているわけですね。つまり、貸与制、それから有利子貸与制、これを有利子をできるだけ無利子にすると、無利子にして、それからさらに給付型をつくるという意味で、やっぱり物事には順番があるのではないかと思います。
 これは民主党のおかげでありますけれども、高校については無償化の制度を導入したその枠の中で、給付型奨学金をつくるということについては、これは新たな財源がなくても所得制限を設けることによってできるということで、私は財務省に今主張しているところでございまして、これが別の財源だったら今の財政状況で絶対認めないというところが今の財務省の立場でありますから、まずはこの制度の中で高校における給付型奨学金をスタートをしたいということであります。

○田村智子君 時間がないので終わります。

【反対討論】

 日本共産党を代表して、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部改正法案に反対の討論を行います。
 理由の第一は、公立高校の授業料不徴収条項を削除することです。
 文科省は授業料相当額を就学支援金で支給するとしていますが、公立高校の授業料は都道府県ごとに決定されます。就学支援金の支給額を上回る授業料を決めた場合、その差額が授業料として徴収される可能性があります。現に、東京都は公立高校の授業料年額十二万二千四百円の徴収条例を廃止していないため、このままでは就学支援金との差額が授業料として多くの高校生に発生してしまいます。
 また、国の責任で公立高校の授業料を無償とすることが現行の就学支援金支給額の根拠ともなっています。不徴収条項の削除によって今後の支給額は時々の政府の判断となり、国の財政危機などを理由とした支給額の縮小も危惧されます。公立、私立共の高校授業料の無償化が求められている下で、このように公立高校の授業料不徴収を僅か三年で廃止することは断じて容認できません。
 理由の第二は、就学支援金の支給に所得制限を行うことです。
 文科省の試算で、二割を超える高校生が支給対象外となることは重大です。所得制限を実施するには、全ての高校生について保護者等の所得の把握が必要です。そのため、法案では、高校生に保護者等の収入を届け出ることを義務付け、届出がなければ就学支援金の支給を差し止めるとしています。このように、現役の高校生全てに何らかの行為を義務付ける法律はほかにはありません。就学支援金を受けたければ、その必要性を証明せよと高校生に義務付ける、これは全ての高校生の教育権を保障するための法制度を著しくゆがめるものです。
 保護者等の収入は課税証明書によって確認することになりますが、これは、社会的に孤立した家庭、複雑な事情や困難を抱える家庭ほどハードルが高くなることは明らかです。雇主が源泉徴収を出さない場合、ネグレクトなどがある場合、家庭の不和から親を頼らないことを選択した高校生など、経済的支援が切実に求められている高校生が課税証明書の提出ができないために就学支援金を受けられないという事態も危惧されます。
 こうした点から、本法案が、日本政府が留保撤回した国際人権規約、社会権規約の中等高等教育無償化の漸進的実現に逆行することは明らかです。
 文科省は、所得制限によってつくり出す予算を就学支援金の加算に充てると説明していますが、本来、概算要求で増額要求すべきです。そうしなければ、OECD諸国の中で最低ランクの我が国の教育予算割合を増やすことなどできるはずがありません。
 最後に、本日の質疑では質問し切れない問題を残しました。衆議院では参考人質疑を含めて三日間の委員会質疑が行われたにもかかわらず、参議院では僅か四時間の委員会審議で採決を強行することに強く抗議し、反対討論を終わります。