日本共産党 田村智子
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【13.11.05】文教科学委員会 特別支援学校の大規模化・過密化問題について

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 特別支援学校について質問をいたします。
 まず、昨年、厚生労働委員会で質問をいたしまして、政府の宿題になっている特別支援学校の医療的ケアについてお聞きをいたします。
 昨年四月、改定された社会福祉士・介護福祉士法が施行をされ、特別支援学校も登録喀たん吸引事業者として登録することで、医師の指示の下で教員などが喀たん吸引等の医療的ケアを法律に基づいて行うことが可能となりました。ところが、この医師の指示は、介護施設に対するものは診療報酬上の手当てがされましたが、学校は診療報酬の算定の対象外とされました。
 この問題を取り上げた私の質問に厚生労働副大臣は、今後の動向を見てまいりたいというふうに答弁をされていました。では、どんな動向があったのか。文部科学省は、この指示料の対象から学校が外されたという問題で学校現場からの意見を把握しているでしょうか。

○政府参考人(前川喜平君) 学校における医療的ケアの指示料につきまして、これを診療報酬の対象としてほしいという一部自治体から要望があることは承知しております。

○田村智子君 厚生労働省、今お聞きになったように、現場から要望の声が既に上がっています。私のところにも、教育の場で医療的ケアを担ってきた皆さんから、学校における医療的ケア実施の指示をするのが誰なのかということがこのままでは不明確だという声が届いています。これは、法整備をする前にも医政局長通知で学校での医療的ケア、これ行っていました。このときと実態が何も変わっていない。何のための法整備だったのかということなんです。
 一歩踏み込んで、学校に対する医師の指示も診療報酬の対象とすべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(神田裕二君) お尋ねの平成二十四年の診療報酬改定につきまして、介護職員等の喀たん吸引等の指示料というものができております。これにつきましては、介護職員等への医師の指示料について、基本的に訪問介護事業所など医師の配置のない事業所に対する医師の指示について診療報酬上の評価を行うということにされております。
 したがいまして、現在の現状としましては、医師が配置されております特別養護老人ホームですとか学校医が配置されていることになっております特別支援学校は現在対象となっておりませんけれども、これにつきましては、二十四年度に創設された診療報酬ということでございますので、現在のこの制度の活用状況など動向を見極めた上で検討してまいりたいというふうに考えております。

○田村智子君 学校医というのは主治医じゃないわけですよね。指示書書くような立場にないわけです。在宅の施設、在宅で利用されている施設を見ると、学校以外は喀たん吸引等の指示は診療報酬の対象にすべからくなっているんです。学校だけが相変わらず公的な枠組みの外に置かれていて、主治医が指示書を書いても保険外診療、家族は保険外の扱いで文書費を負担しなければならない、言わば医師と家族だけの私的な関係で喀たん吸引など医療的ケアを実施するという、こういう体制になっているんです。
 下村大臣、是非、厚労省、厚生労働大臣にも働きかけて、これ、理のある対応が特別支援学校でも行われるようにということで要望していただきたいと思います。是非一言。

○国務大臣(下村博文君) 田村厚労大臣と相談したいと思います。

○田村智子君 厚労省への質問は以上ですので、委員長のお許しがあれば、審議官、退席をいただいて構いません。

○委員長(丸山和也君) 審議官、ということですから、結構です。

○田村智子君 続いて、特別支援学校の教育環境についてお聞きをいたします。
 これまで国会では、特別支援学校の教室不足の問題が繰り返し取り上げられてきましたが、現状は遅々として解決をしていません。文部科学省のまとめによれば、二〇一二年五月一日現在、全国で四千六百三十三教室が不足という結果です。この調査では、教室不足に学校がどう対応しているかということも聞き取っています。特別教室を転用した数、教室を間仕切りして対応している数、それぞれお答えください。

○政府参考人(関靖直君) 文部科学省が各都道府県教育委員会を通じて行いました公立特別支援学校の教室不足の調査によりますと、平成二十四年五月一日時点におきまして、児童生徒等の増加に伴う対応として、特別教室を転用している教室数は一千七百八十八、一時的に間仕切ることにより設けられました教室数は一千二百八十五となっております。

○田村智子君 こうした実態の数字が示されるのは実は初めてのことなんです。
 我が党の宮本衆議院議員が三年前の国会質問で教室間仕切りなどの実態を調べるべきだと、こう求めたこともありまして、全国的な数字が分かるようになったものです。私も実は資料一でお配りをいたしました。見ていただきたいんです。教室間仕切り、今言ったように全国で一千二百八十五、東京と神奈川では実に二百を超えています。特別教室の転用も東京で百九十四、千葉百五十、神奈川百三十四、大阪で百二と。
 大臣、この現状をどう認識されるか、お答えください。

○国務大臣(下村博文君) 特別支援学校の教育環境の整備については、従来から各設置者において取組が進められているところでありますが、近年の児童生徒数の大幅な増加により施設整備が追い付いていない状況があるわけであります。障害のある児童生徒に対する支援の充実を図ることは極めて重要であり、教室不足の解消に向けて積極的に取り組む必要があると認識しております。
 このため、文科省では、各設置者において増加傾向にある児童生徒数を的確に把握し、解消計画を順次策定、更新するとともに、新設校の設置や校舎の増築、分校、分教室による対応など、教育上支障のないよう適切な対応を求めているところであります。
 また、こうした教室不足を解消するための校舎等の新築、増築等に対して国庫補助を行っており、今後とも地方公共団体において計画的な整備が行われるよう、引き続き予算の確保に努め、教室不足の解消を図ってまいりたいと思います。

○田村智子君 これは来年度の概算では新たな施設助成の制度というのを盛り込んでいるとも聞いています、廃校の利用などですね。しかし、やっぱりこれが本当に進んでいくように、もう少し実態を見ていきたいんです。
 例えば間仕切り教室なんですが、私も埼玉県の特別支援学校を視察した際に、パーテーションで区切った教室で肢体不自由の中学生が授業を受けていました。前からは数学の先生の声、後ろからは別の授業の声がはっきりと聞こえるという状態で、本当に驚いたんです。
 学校環境衛生基準では、教室の等価騒音レベルは、窓を閉じているときは五十デシベル以下、窓を開けているときは五十五デシベル以下というふうに設定をされています。これ、騒音レベルの目安というのを見ますと、五十デシベルというのは静かな事務所、六十デシベルでも静かな乗用車とあるわけですね。
 これ確認しますけれども、この学校環境衛生基準は特別支援学校は対象外とするものなのでしょうか。

○政府参考人(久保公人君) 文部科学省におきまして、児童生徒等の健康を保持する上で維持されることが望ましい基準といたしまして、学校保健安全法において学校環境衛生基準を定めておりまして、その中で騒音についての基準値も定めております。学校保健安全法におきます学校とは学校教育法第一条に規定する学校をいうこととされておりますので、特別支援学校も対象となります。

○田村智子君 特別支援学校も対象なんです。
 愛知県のある学校では、音楽の授業も間仕切り教室で行うしかなくて、隣の教室に聞こえちゃうから大きな音を出さないようにと教員が指示せざるを得ないという実態があるとお聞きをしています。
 初等中等局長にもお聞きをしたいんです。今、学校環境衛生基準は特別支援学校も対象だと。では、こうした間仕切り教室はこの基準が守られているというふうに認識されますか。局長、お願いします。

○政府参考人(前川喜平君) 私、ちょっとその実態の数字を把握しておりませんので、私の方からちょっとお答えすることは難しいと思います。

○田村智子君 間仕切りなんですよ、パーテーションで、私が言ったみたいに後ろからも音が聞こえると。文部科学省、調査しているんですから、初等中等局の担当と言えないんでしょうか。
 じゃ、ちょっと大臣にお聞きしたいんですけれども、もう明らかに後ろから聞こえるんです。明らかに五十デシベルを超えているわけですよ。これは今ある基準が特別支援学校で守られていないという実態で、早急に対策が求められると思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) まず、間仕切り教室ということだけで直ちに学校環境衛生基準に適合していないとは言えないと思いますが、ただ、今の御指摘のような状況であれば、これは学校環境衛生基準に適合していない状況であろうというふうに推測をいたします。
 その場合は、これは学校設置者、地方自治体において適切に対応すべきものであるというふうに思いますが、これは国の方でもできるだけそういう環境整備のための予算等、サポートしてまいりたいと思います。

○田村智子君 これ、今ある基準に照らしておかしな実態があるわけですから、これ、初中局長も、実態が分からないというんだったら、これ数で取るだけじゃなくて、そういうところの教室が一体どうなっているのか、果たして今ある基準が満たされているのかということはこれしっかり調べるべきだということも、私、求めておきたいというふうに思います。
 もう一点、現行の標準、これ基準じゃありません、標準です、これを物差しにして現状を考えてみたいんです。
 公立学校施設費国庫負担金等に関する関係法令等の運用細目、こういうのがあります。ここでは特別支援学校について、障害種別とか学級数の別で校舎、屋内運動場などの面積の標準を示しています。これは、学校を新たに造るときとか災害復旧をする場合に、ここまでの面積の基準とか標準は必ず国庫負担で見ますよと、それを上回るような面積で造る場合は自治体独自になるけれども、ここまでは国が言わば保障しますよという標準なんです。国庫負担の上限という言い方をしますけれども、ここまでは負担をすると。
 資料二を見ていただきたいんです。この標準に照らして、それでは、これ埼玉県内の特別支援学校ですけれども、現状がどうかというものを全日本教職員組合の皆さんが試算をしてくれました。これは、学校を建設したときは、それ以降、児童生徒数がどんどん増えていって創立時の二倍になっちゃっているような学校というのがたくさんあるわけです。そうすると、国庫負担の標準、学校についてここまでは国はちゃんと保障しますよという、この標準面積の四〇%台にまでなっている学校もあるわけです。
 大臣、ちょっと今見た資料で感想って難しいかもしれないんですけど、これ、いかが思われますか。

○国務大臣(下村博文君) この埼玉県の事例もそうですが、特別支援学校については、近年の児童生徒数の大幅な増加によって施設整備が追い付いていない状況が全国的にもあるのではないかと思います。教育の円滑な実施を図る観点から、教室不足の解消に向けて積極的に取り組む必要があると認識しております。
 文科省においては、特別支援学校の児童生徒数の増加に対する教室不足解消のための施設整備については、地方公共団体からの要望に対して適切に対応しているところでありますが、今後とも地方公共団体において計画的な整備が行われるよう、引き続き予算の確保に努め、教室不足の解消を図ってまいりたいと思います。

○田村智子君 これ、地方公共団体がなかなか取り組んでいないという実態がある下で、要望にこたえるというだけではとても足りないんですね。今、元々造ったときの言わば標準の四〇%になっちゃったような学校、一体どうなっているのか。子供たちはもう詰め込みなんです。
 千葉県の知的障害の特別支援学校、私、視察をいたしました。元々校庭が、元々保育園の園庭ほどの広さなんですよ。そういう人数で始めたんだと思います。だけど、知的障害の子供たち、体を動かすのが本当に好きで、休み時間も一生懸命校舎の周り含めて走っているわけなんです。そこにどんどんどんどん子供たちが増えまして、運動会のときはもう保護者の立つスペースさえもなくて、この運動場から高台になった通路のところで木立の陰から運動会を保護者の皆さんは見ざるを得ないというふうな状況がある。
 あるいは体育館、先ほど紹介した愛知県ですけれども、雨の日は体育の授業で運動場が使えなくなってしまう。それで、体育館にそれじゃってことで入れるとどうなるか。もう児童生徒が並ぶだけでいっぱいになってしまって、教員からは余り動かないようにと、これが体育の授業になってしまうっていうんですね。明らかに既に教育上支障を来しているという事態だと思うんです。先ほどの音楽の授業もそうですけれども。
 このときに、もう学校の努力は限界です。先生方も物すごい努力をされていると思いますが、これ限界なんです。文科省が、いろんなメニュー作りましたから、教室不足のためにって一生懸命地方公共団体に物を言っている。だけど、それだけではもう足りないと思うんですよ。やはり保育園の待機児童なんかは、国が五十万人待機児童解消といって目標を出して、何か年計画ってやっていますよね。特別支援学校も、例えば何か年計画というような目標を持って地方公共団体に働きかけるということが必要だと思うんですけど、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 改めて実態をよく調査をして、検討したいと思います。

○田村智子君 お願いしたいと思います。
 それで、こうした実態はなぜ起こるのかと。小中学校や高等学校には法令で一人当たりの面積など守るべき学校の施設の最低基準、設置基準が定められている。ところが、学校教育法施行規則で特別支援学校の設置基準は別に定めるとしながら、その基準自体がない。これもこの数年来、何度も国会質疑で指摘されてきた問題です。障害の種別や一人一人の状態によって対応が異なるから一律の基準を作るのは難しいという答弁を文科省繰り返してこられたんですけれども、しかし実態は、基準を作ると一人一人の状態を踏まえた対応ができないどころか、最低基準さえ定めなかったために学校環境衛生基準さえ守れない、教育に支障を来す事態、これが起きているんだと、これもう認めるべきだと思います。特別支援学校だけ施設の最低基準を定めない、これは障害のある子供たちへの差別的取扱いそのものだと言わざるを得ません。
 障害者差別解消法、これ制定されました。国は、これは合理的配慮が足りない、障害者に対する差別的取扱いがあるという訴えがあったら、例えば教育分野であれば、文部科学大臣が責任を持ってその解決をしなければならないように法令で定められたわけです。であるにもかかわらず、特別支援学校にいまだに基準を作ろうとしない。私は差別的取扱いだと思うんですよ。是非これ、障害者権利条約の批准というのも控えているわけですから、特別支援学校の施設の最低基準を定める、この立場で検討を開始していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 田村委員御指摘のように、特別支援学校は対象とする障害種に応じた多様な施設整備が必要とされることなどから、各学校の状況に応じて柔軟な対応が可能となるよう、設置に当たっての基準は設けられていないということでありまして、文科省としては、決して差別的な視点ではなく、このようなそういう視点から、特別支援学校の設置については設置者の責任において障害のある児童生徒の状況や地域の実情等を考慮した上で適切に判断すべきものと考えてはおります。
 しかし、その上で、特別支援学校の教室不足については、文部科学省において毎年度調査を実施し、各自治体における教室不足の解消のための計画的な取組を促す通知を発出しているわけであります。また、平成二十六年度、来年度の概算要求においても地方公共団体の事業計画を踏まえた予算を要求するとともに、新たに、余裕教室や廃校施設等を活用した特別支援学校の新設、分校、分教室の整備に係る補助制度の創設も要求をしております。これらの取組を進めてきたところでありますが、それでも教室不足が解消されない現状を踏まえ、今後とも関係者等の御意見を聞きながら、更なる検討についてこれを対応してまいりたいと思います。

○田村智子君 最後に一言。
 先ほど、間仕切り教室などの実態も見たいということですから、今ある基準が本当に守られているのかどうか。それが守られていないとしたら、根本的問題は何なのかということは、是非実態踏まえて検討していただきたい。私は、最低基準は、これは最低のものを作った上で配慮して広くすることはできるわけですから、是非最低基準を設定することも検討していただきたいということを強く要望して、質問を終わります。
 ありがとうございました。