日本共産党 田村智子
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【13.06.04】厚生労働委員会  戦没者等の妻、父母への特別給付金法案について

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 戦没者等の妻、父母への特別給付金の法案審議では、これまで何度も申請の時効を理由に少なくない未受給者が生じていることが問題になってきました。やむにやまれぬ思いで国家賠償訴訟を起こした皆さんは、未払となった方がどれくらいいるかということを試算しておられます。過去五回で受給見込み数の三・五%から六・五%、大きい方の数字を見ますと、延べ九万七千人、総額九百六十二億円に上るだろうという試算です。これは御本人の申請忘れで終わらせることのできない規模で、過去五回でこうした少なくない未受給者が生じたのはなぜかと、当事者の方もこのことをきちんと説明してほしいと求めておられます。いかがでしょうか。

○政府参考人(泉真君) これまでの特別給付金の給付によって時効に掛かってしまって請求できなかったという方がおられるのは事実でございますけど、その理由は何かという御質問でございました。
 なかなか明確にこの理由だと決めてお話しできる部分は難しいと思いますけれども、考えられるものとしましては、制度の広報が十分行き渡らなかったために請求できなかったというような場合、あるいは、広報は行き渡っていても、対象者の高齢化ということから、申請に行こうと思っても健康状態その他いろいろな理由で申請できなかった、あるいは、中には申請する前に御本人お亡くなりになってしまった、いろんなケースがあろうかと思います。
 ただ、これはそういった細かいところまで私ども分析できているわけではございませんので、どういう理由が考えられるかといいますと、いろんなそういったケースがあろうかと思います。

○田村智子君 今日の質疑でも指摘されましたけれども、申請主義だと。対象者に対して過去五回は通知されるとか請求書類が送付されるということもなく、対象となる方は都道府県の広報などを見て自覚的に市町村に請求をして、それで初めて特別給付金支給の手続が取られるという、こういうシステムだったと。しかも、この請求、十年ごとですから、言わば請求漏れが起こるのは当然というやり方だったと思うんです。
 お聞きしたいのは、なぜこれまで政府の責任で対象となる方に通知するというやり方を取ってこなかったのか、その点はいかがでしょうか。

○政府参考人(泉真君) 受給資格があると思われる方には直接個別案内というのは、平成二十年の戦没者の父母等特別給付金、このときから行っております。そうすると、それより前、なぜやらなかったのかと、こういうお尋ねでございます。
 裁定あるいは周知をする、さっきも申し上げましたように、手続的には都道府県にお願いしておりますし、また市町村にもお願いしております。そういったところの広報というものを頼りにしていたわけでございますけれども、いろいろと国会でもいろいろな御指摘などもございました。平成二十年の戦没者の父母等特別給付金からは、もう国から直接御案内をしようと、国としてできることはこれまでやっていなかったこともいろいろ取り組んでいこうと、こういうことでそういうふうに取り組んできておることでございまして、今回の特別給付金についても、先ほど来申し上げておりますように、個別案内、それから、できる部分は事前に印字していくということをしっかりやっていきたいと思っております。

○田村智子君 これはやれることをやってこなかったと思うんですね。特別給付金の対象者というのは、軍人の遺族の方への恩給、軍属の遺族の方への遺族年金、このどちらかの受給資格を有する者とされています。恩給も遺族年金も二か月ごとの支給で、氏名や住所というのは当然記録がされています。
 これらの名簿を使って通知を個別に送付することは過去においても可能であったと。こうした名簿を都道府県に送付するということはこれまで行ってこなかったんでしょうか。

○政府参考人(泉真君) 先ほど平成二十年については国から直接案内を送ったと言いましたが、その前、平成十五年の戦没者の妻特別給付金、これなどについては、今おっしゃいましたように、都道府県にリストをお送りするということをいたしました。このときには、各県から総務省の方にもいろいろと問合せがあったりいたしましたことから、厚生労働省として、総務省とも相談いたしまして、総務省の恩給受給者リストをいただいて都道府県にお送りするという対応を平成十五年にはいたしております。
 もっと早くできなかったのかという御指摘はあろうかと思いますが、十年前にもそういった対応はしてきたということはございます。

○田村智子君 これ、本来は政府として支給を行うという制度ですから、やはり一人の漏れなく特別給付金届けようという姿勢に欠けていたというふうに言わざるを得ないと思うんです。
 これまでこの法案審議されるたびに請求権を喪失した方の問題というのは指摘をされていました。十年前にリストを送ったと、都道府県にということだったんですけれども、じゃ、それで個別にちゃんと通知が行ったのかというところまでは政府としてちゃんとつかんでいなかったということになるんでしょうか。
 二〇〇五年度からはコンピューター化と、恩給の方の名簿をコンピューター化するということですから、前回のときので考えると、時効は二〇〇六年なんですよね。その間になぜコンピューター化の作業と併せて前回からはちゃんともう個別通知ということをやってこなかったのか、この点はいかがでしょうか。

○政府参考人(泉真君) 恩給は総務省で管理されておりますし、私どもは援護年金を管理しているということで、それぞれ協力しながらやらなきゃいけない部分はあろうかと思いますし、それから、データをシステム化するというのもこれも漸次進んできておりますので、今ですとそのデータを活用するということがかなり迅速にできるわけですが、確かに歴史を振り返ってみると、昔はなかなかそれも相当な手間が掛かってしまうという部分はあったかと思います。
 ただ、いずれにしても、もう過去の対応というのは今の目で振り返るともう少し何かできたことはあったんではないかというと、そういう御指摘受けてしまう部分もあったかもしれませんけれども、とにかく、今、当事者は相当御高齢化してきておりますので、先ほど来申し上げておりますけれども、とにかくできるだけ丁寧に、また迅速に進めるようにというふうに取り組んでまいりたいと思います。

○田村智子君 ここで大臣にお聞きをしたいんですけれども、これまでやっぱり国会で何度も指摘されてきたんだけれども、やはり請求権を喪失させないという努力が足りなかったというのは、これは明確だと思うんですよ。厚労省の言わば不作為によって請求漏れが生じてきたというふうにも言えると思いますので、この反省に立って、今回はきめ細やかな通知と請求の案内もされるということだと思います。
 そうすると、これまでの特別給付金の請求権を喪失した遺族の方々に、私はまずこれは取るべき手だてが十分に取られていなかったということでおわびをちゃんとお伝えすることが必要じゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(田村憲久君) これに関しましては、今までも裁判というような形になりまして、大変そういう形になっていったということは私は残念な話であったなというふうに思います。やはり、どうしても請求をされない方々がおられるということで、そういうような我々も今までの反省に立って、今回、制度というものをもう少ししっかりと周知徹底できるように個別に案内を送らさせていただく。一方で、高齢化という中において、やはりそもそも今まで以上に申請をする機会というか、そういうものが少なくなってきている現状もあるわけでございまして、そういうことも勘案しながらきめ細かい対応を準備、用意をさせてきていただいておるわけであります。
 これは、先ほど来お話がございましたとおり、縦割り行政という意味合いで、もちろんデータというものが非常にいろんな技術の発展とともに扱いやすくなってきた部分もありますが、そういうようなできるところでの努力というものはしっかりさせていただこうということで進めさせてきていただいておるわけでございまして、今までいろんな形で、もっと請求者の方々が多く請求をしていただいて、請求されない方々が少しでも少なくなっていくというような、そういうような方向性に向かって我々も踏み出しておるということは御理解をいただきながら、今般いろんな手当てをさせていただいておるということで御理解をいただければ有り難いというふうに思います。

○田村智子君 これはやっぱり政府の責任において通知するということはできたはずだということは指摘せざるを得ないんですね。その反省の上に立つからこそ、今も各議員の方からもありましたけれども、やはり請求権を喪失した方について何らかの手だてというのを是非検討していただきたいと、これは要求をしておきたいと思います。
 残る時間で、戦争の歴史をどう次世代に継承するかということについてお聞きをしたいと思います。
 私、この法案の審議に先立ちまして、千代田区九段南にありますしょうけい館を訪ねました。戦傷病兵士の記録、また、戦後元兵士を支えた御家族の様子など、当事者の方々から所持品を提供いただいて、また証言を、今も記録繰り返しているんですけれども、こういう記録をやって次世代に伝えていこうという、こういう努力をされていることがよく伝わる展示でした。
 このしょうけい館、運営は厚労省から日本傷痍軍人会が委託をされているとお聞きをしていますが、この傷痍軍人会は今年十一月で解散になるとお聞きをいたしました。その後の資料の所有や今後の運営はどうなるんでしょうか。

○政府参考人(泉真君) しょうけい館についてでございますが、戦傷病者、それからその妻などの方々が体験された戦中、戦後の労苦に係る資料の情報収集をいたしまして、またそれを保存、展示することによってその労苦を伝えていこうということで、平成十八年に開設された国の施設でございます。
 現在、その運営を日本傷痍軍人会に委託して行っておりますが、傷痍軍人会は本年十一月末に解散をされるということを伺っております。国としましては、その後もしょうけい館を将来にわたってきちんと継続して運営していくことが重要と考えております。このため、十二月以降の事業実施主体をどうするかということで、これはもう既に公募の手続というのを今進めております。厚生労働省のホームページにもそれは今載せておって、ちょうど今公募の受付をしている最中でございます。
 そしてまた、展示資料など、現在は傷痍軍人会の所有物もございますけれども、これらは引き続き展示あるいは保存が必要でございますので、国の方へ傷痍軍人会から御寄附をいただいて、今申し上げました公募の結果、運営主体が決まれば、そちらの方へ国から無償貸付けをして、適切に管理、保存、展示していただくと、こういうような段取りを考えております。

○田村智子君 今回、国の管理にする、所有にするというので、非常に大切なことだと思うんです。やはり、戦争の事実を伝える貴重な資料を国が管理をして次世代に伝えていくと。
 その点で大変立ち遅れているのが国内の民間人の戦争被害と。これは総務省の担当ということで今日来ていただきましたけれども、国内の一般戦没者についての資料の収集についてはどのようになっているのか、簡潔にお答えください。

○政府参考人(田家修君) お答え申し上げます。
 一般戦災に関する総務省の取組でございますが、私ども総務省では、一般戦災死没者に対し追悼の意を表すという事務を所掌しておりまして、全国戦没者追悼式への一般戦災死没者の遺族の方々への参列旅費の支給等を行っているところでございます。これに関連する事務といたしまして、一般戦災死没者の御遺族の方々の御要望を踏まえ、追悼に関する情報の収集、整理として、平成二十二年度より、全国の戦災の追悼施設、追悼式に関する調査を民間委託により行っているところでございます。

○田村智子君 これ、総務省の方にお聞きしましたら、国内でいろんな資料収集やっていらっしゃるんですよ。全国の慰霊碑とかもずっと全部記録にしていこうというふうにやっていらっしゃるんですけれども、担当者はお一人なんですよ。
 市町村合併によって戦争被害についての記録を担当していた部署がなくなってしまって、戦災の何人亡くなられたとか、こういうのが消失しているような地域も出てきていると。また、そういう慰霊碑には人数書かれていたり、どういう被害があったのかと書かれていることがあるんですけれども、風雨にさらされていますから、もう碑文が読めなくなりかけているところも少なくないというふうにお聞きをいたしました。
 また、これは、お話あったとおり、追悼事業の一事務という扱いで、予算も十分にあるわけではなくて、例えば国立国会図書館には戦後直後の日本政府の資料として、どれぐらいの地域が焼けたのかと、何人の方が亡くなられたのかと、結構調査の資料があるそうなんです。例えば、第一復員省の資料、経済安定本部の資料。でも、これは見ることはできても資料収集する予算がないわけですよ。
 また、総務省は、その予算で戦災資料の展示会というのを全国各地で行っているそうなんですけれども、結構地元の新聞社が貴重な資料を持っていることが多いんだけれども、これを借り受けるにはお金が掛かるので借り受けることもできないと。
 私、この状態では国内の戦争被害についてのきちんとした資料収集ができないままその資料が散逸していく、消失していく、そういう危険性もあるんじゃないかと思っています。
 これ、大臣に内閣のお一人としての見解をお伺いしたいんです、総務省だということになってしまうのでね。傷痍軍人の皆さんの資料は国が管理するんですよ。だけれども、一般戦没者の資料は国が収集もできていない状態なんですよ。これでいいのかというふうに思うんですね。是非、一般戦没者の記録も国として収集する、保存する、何らかの形で公開する、そういう建物も将来造っていくようなことを内閣として是非検討していただきたいと思うんですが、感想を含めての見解でいいですので、お聞かせください。

○国務大臣(田村憲久君) 例えば昭和館というものを厚生労働省は所管をしておるわけでありますけれども、これは国民の当時の生活というもの、こういうものの資料を掲示しながらその当時の御労苦というものを後世に伝えようということをやっておるわけでありますし、一方で、今言われたしょうけい館に関しては、戦傷病者若しくはその妻の方々に関する体験、御労苦というものを次の世代に継承していこうと、そういうような事業であるわけでありますが、今言われた一般の空襲等々による一般言うなれば戦災者といいますか、そういう方々の資料というものは、ちょっと厚生労働省の所管ではないということは御理解をいただいているんだというふうに思います。
 ただ、その上で戦争というもの、戦禍というもの、この悲惨さというものを我々は後世にしっかりと伝えていかなければなりませんし、二度とこのようなことを起こしてはいけないというふうに我々はやはりしっかりと胸に持っていかなきゃいけないわけでありまして、そういう意味で、そのようなことを後世に伝えていくというようなことは大変重要であろうというふうに思っておりますということで御理解をいただければ有り難いと思います。

○田村智子君 終わります。