日本共産党 田村智子
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【13.05.28】厚生労働委員会 障害者雇用促進法一部改正法案について

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 この障害者の雇用の促進等に関する法律、そして精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、この二つの法律は内容が大変異なるものです。前者は、障害があっても差別されることなく働ける社会を目指すもので、障害者の権利行使を支援するもの、一方、後者は、精神障害者の方の意に反する入院にかかわることを定めるもので、当事者の権利制限という内容を含んでいるわけです。これらを一緒に審議するというやり方は問題が大きいというふうに私は思っておりまして、それぞれの法案について十分な審議時間が保障されるよう、まず冒頭求めて質問に入りたいと思います。
 まず、障害者雇用促進法の一部改正法案についてお聞きをいたします。
 今回、精神障害者を法定雇用率に含めることを義務化するという、こういう改定が行われますが、これは長年にわたる当事者とその家族の方々からの要望にこたえる改正だと思います。ところが、この施行が五年後の二〇一八年四月一日、さらに、五年間雇用率算定を低く抑えることを可能とする猶予期間が設けられています。知的障害を法定雇用率に含める義務化を行ったときは、法改正の翌年に施行をして義務化をして、猶予期間も一年半というふうにしていました。これと比べても精神障害者の雇用義務化の実施が余りに先送りされていると思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(田村憲久君) 今回の法定雇用率でありますが、五年に一度これ法定雇用率は見直すと、基本的にはそうなっておるわけでありまして、これ、この四月に見直しになったわけであります。そういう意味からいたしますと、次回は平成三十年四月ということになるわけでございまして、五年ごとが原則ということから考えますと、当然五年後になるわけであります。
 もう一つ、今回も実はこの法定雇用率引上げということになりました。一・八%から二%へと見直しになったわけでございまして、これは大変重要なことであるわけでありますが、過去を見ますと、なかなか二回連続引上げというふうなことはなかったわけであります。
 ちなみに、今言われた知的障害者の方々の雇用の義務化でありますけれども、このときの引上げは十年ぶりであったということを考えましても、二回連続引上げというものはなかなか企業側からとってみれば大変だということもあろうということでございまして、激変緩和措置を講ずることも可能であるというような形にさせていただいたわけでございまして、あとは諸般の状況を見ながら判断をさせていただくということになろうと思います。

○田村智子君 精神障害者に対する雇用率制度の適用は既に八年前の改正で行われていて、法定雇用率をクリアしているかどうかと、これ見るときの実数には既に精神障害者の方も含まれているわけです。実際、この改定が行われた翌年、ハローワークにおける就職件数を見ると一千八百九十件、これが二〇一一年度には二万三千八百六十一件と、やはり十二・六倍にまで増加をしています。
 先ほど法定雇用率の見直しは五年ごとという御説明だったんですけれども、これ法律で定めているというわけではないわけですから、ならば、私は義務化はもう来年度施行する、そして激変緩和措置を五年掛けて行っていくというようなこともこれ無理難題ではないんじゃないかというふうに考えていますので、このことは指摘をしておきたいというふうに思います。
 この精神障害者を義務化するということにかかわってもう一点お聞きをしたいんですが、精神障害者の方を雇用率に義務付けると。そうすると、事業主が雇用率を達成するために、例えばうつ病で治療を受けている労働者に対して障害者手帳を取りなさいということを直接的であれ間接的であれ暗に求めて、カウントするためにと、こういうような対応があってはならないと思うんですけれども、確認したいと思います。

○政府参考人(小川誠君) 精神障害者の雇用率算定に当たりまして、手帳の取得が強要されないようにするということは重要であると考えております。
 そのため、厚生労働省では、先ほども委員から御指摘がありましたように、十八年四月から精神障害者が実雇用率の算定に入ったということでございますが、その前に、特に在職している精神障害者の把握、確認の際に障害者本人の意に反した制度の適用が行われないように、プライバシーなどに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインというのを定めまして、事業主の指導に取り組んでいるところでございます。引き続き、制度の適切な運用に努めてまいります。

○田村智子君 これは権利侵害が行われないように、しっかりと実施していただきたいと思います。
 次に、差別の禁止についてお聞きをいたします。
 法案では、雇用にかかわって、障害を理由とした差別的取扱いを禁止するという条項が新たに加えられました。そして、この条文では、募集、採用、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇についての差別的取扱いを禁止というふうにされています。ここで例示をされていない解雇、雇い止めも含まれるのかどうか、これも確認したいと思います。

○政府参考人(小川誠君) 解雇、雇い止めも含めまして、雇用に係る全ての事項が不当な差別取扱いの禁止の対象でございます。

○田村智子君 大切な御答弁だったと思います。
 法案では、この差別的取扱いの禁止を実効あるものとするために、事業主に対して障害の特性に配慮した合理的な措置を講じなければならないと定めていますが、同時に、この合理的な措置については、事業主に過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りではないという例外規定を置いています。
 午前中の質疑でもありましたけれども、この過重な負担がどのような場合が考えられて、大臣が定める合理的な配慮についての指針の中でこれちゃんと示されるのかどうか、もう一度確認をしておきたいと思います。

○政府参考人(小川誠君) 過重な負担につきましては、企業規模、また企業の置かれている財政状況等が考慮要素になると考えておりますけれども、この考え方につきましては、公労使、障害者団体の四者構成であります労政審の場で議論した上で策定する合理的配慮の指針においてお示しをしたいと考えております。

○田村智子君 これは経営状況を全く無視しろとは言わないんですけれども、障害者の差別禁止というのは、本来経済状況に左右されることなく保障されていかなければならない基本的な権利ということになっていくと思うんです。
 そうなると、すぐに障害者の方が求めるような対応、一〇〇%はできないと、だけれども、使用者の方と障害者が話し合って何らかの形で前に進んでいくような方向が必要だと思うんです。例えば、うつ病を発症された方が是非短時間勤務にしてほしいんだというふうに申し出ても、うちにはそういう余裕はないと、話合いも行われず、経営上の過重な負担を理由にゼロ回答と、こういうことのないように、やはり事業主への周知や努力を促すということは非常に大切になってくると思いますが、いかがでしょうか。

○副大臣(桝屋敬悟君) 今話が出ております合理的配慮、個々の障害者の障害の状況や職場の状況等に応じて適切な措置を講じるべきものであるため、当事者間で、今委員がおっしゃったように、相談しながら決めることが極めて重要だと思っております。事業主が合理的配慮の内容を一方的に決めるのではなくて、障害者の意向を十分に尊重しなければならない旨を規定しておりまして、障害者と事業主の話合いにより、過重な負担とならない範囲で合理的配慮が適用されることになるものと考えております。
 なお、合理的配慮の内容につきましては、公労使障の四者構成である労働政策審議会において議論をした上で、その具体例等を示した指針を作成してまいりたいと思っております。

○田村智子君 この使用者が行うべき措置についてもう一点お聞きをしたいんですけど、これ、事業主が直接障害者に対して何かということだけでなく、職場の同僚や上司などによる差別的な言動が行われないようにと、こういうことも事業主が講ずべき措置として重要な内容だと思いますけれども、これも、どうぞ。

○副大臣(桝屋敬悟君) 全く委員の御指摘のとおりでありまして、障害者の雇用の促進に当たっては、事業主や職場で働く上司や、今同僚とおっしゃいましたけれども、そうした方々の障害に対する理解を深めることが必要だと考えております。
 このために、事業主等を対象に障害者の職場実習の受入れを促すことで事業主と他の従業員が実際に障害者とともに働くことについての理解を促すということのほか、ハローワークで事業主指導等を行う際に障害者雇用の先進企業の事例等を同時に提供することで、障害者が有効に働くことができるよう促す等の取組を行っているところであります。
 引き続き、こうした取組を続けることによりまして、障害者が働くことについて事業主や職場の理解を深めてまいりたいと考えております。

○田村智子君 次に、この法律による障害の範囲のことについてお聞きをしたいと思います。
 難病、慢性疾患の患者の皆さんは、障害者基本法によって障害者の範囲に含まれることになりました。今回の法案では、障害者雇用促進法が施策の対象とする第二条一項に定義する障害者に「その他の心身の機能の障害」という文言を加えています。これは、障害者基本法の定義に合わせたものだというふうに理解をしております。この障害者と定める範囲は、差別の禁止等を定めた第二章の二の対象を限定する重要な規定となるので、これはちょっと正確に確認をしたいと思います。
 障害者基本法の質疑では、障害者の範囲に難病など幅広い障害が含まれること、その際、継続的、固定的な障害だけでなく、断続的、周期的に状態が変化して日常生活、社会生活に制限を受ける場合も対象であるというふうに明確に答弁をいただいています。
 今回の障害者雇用促進法における障害者の範囲も同じ理解でいいかどうか、お答えください。

○政府参考人(小川誠君) 難病患者の方につきましても、障害者手帳を所持しているかどうかにかかわらず、難病に起因する障害によって職業生活上相当の制限を受けている場合には差別禁止等の規定の対象になります。

○田村智子君 ここ、済みません、断続的、周期的ということが入ってくるかどうかというのは難病患者の皆さんにとって大変重要なところなので、そこについても御答弁ください。

○政府参考人(小川誠君) ですから、そういった断続的な、周期的な障害によりまして職業生活上相当な制限を受ける場合には対象となります。

○田村智子君 対象になるということで確認ができました。
 実雇用率の算定には現在も雇用義務がない身体障害者を加えて算定していますけれども、精神障害の方加えていますけれども、身体障害者に難病を加えたと。そうすると、この難病、慢性疾患の方々も雇用率算定に加えていくということが必要だと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

○政府参考人(小川誠君) 雇用の義務制度につきましては、雇用の場を確保することが困難な方に対して、社会連帯の理念の下で企業に対して雇用義務を課すというものでございます。したがって、企業側が社会的責任を果たすための前提として、企業がその対象者を雇用できる一定の環境が整っているということと、対象が明確であって公正、一律性が担保されているということが重要だと考えております。
 難病をお持ちの方であっても、例えば障害者手帳をお持ちの方につきましては既に雇用義務の対象となっているということでございますけれども、障害者手帳をお持ちでない難病患者の方について雇用義務の対象とするかにつきましては、先ほども申し上げました雇用義務制度の趣旨、目的を踏まえると、現時点では困難であると考えております。

○田村智子君 難病や慢性疾患の患者さんは、一部、内部障害者として障害者の手帳をお持ちの方もいらっしゃるんですけれども、これなかなか対象にならないという方がいらっしゃるんですよ、本当に重症化しないと。例えば、肝炎の患者さんは、事実上もう肝臓が機能しないという程度にならないと手帳の交付が受けられないわけです。これはもう支援も受けられないような状態ですよね。
 同時に、今、難病対策委員会では新たな難病制度について提言をまとめていこうということで、難病医療登録者証とかあるいは難病手帳というようなことも検討されていると聞いています。ただ、雇用の義務の対象とすることは消極的だというような議論もあるとも聞いているんですけれども、是非、やっぱり障害の定義の中に難病、慢性疾患の方入れたと、差別も禁止したと、働く権利を保障するということを考えると、障害者手帳ということだけでなく、やはり難病手帳なども含めていくということも今後是非検討いただきたいということは要望しておきたいと思います。
 法案に戻ります。
 法案では、障害の特性に配慮をした必要な措置を行われないとき、事業主が行わない場合ですね、厚生労働大臣は事業主に助言、指導又は勧告することができるとしています。しかし、こうした指導や勧告に従わなかった場合の企業名の公表という措置は今回の法案の中には盛り込まれていません。
 例えば、男女雇用機会均等法では、男性である、あるいは女性である、女性の方が多いのか、そういうことを理由にした差別的な取扱い、これがなかなか正されないというような場合には企業名の公表もできるというふうになっています。今回の法案ではそれが盛り込まれなかったのはなぜでしょうか。

○副大臣(桝屋敬悟君) 委員今お尋ねの公表制度につきましては、それが対象者にとってはまさに制裁的な意味を持つわけでございます。今般規定する不当な差別的取扱いあるいは合理的配慮が新たな概念でありまして、その具体的内容が指針等において具体化されていくことを踏まえますと、まずは厚生労働大臣による助言、指導、勧告によりその実効性を確保すべきというふうに考えている次第でございまして、委員からお話がございました均等法のときも二段階でやらせていただいたということでございまして、御理解いただきたいと思います。

○田村智子君 先ほど指摘をした、例えばうつ病を発症した労働者が短時間労働を申し出ても認められない、これ現実にある問題ですし、ハローワークで障害者に対する求人情報と実際の労働条件が異なっている、これ指導されても正されないというようなケースというのも私たちも聞き及んでいるわけです。ですから、今後、やはり悪質だというような事例は未然に防ぐためにも厳しい措置を是非検討していただきたいというふうに思います。
 次に、具体にこの障害者の皆さんを支援する体制についてお聞きいたします。
 障害を理由とした差別的取扱いの禁止、また精神障害者を雇用率に算定するための取組、これ進めていくためにも、今後、事業主、障害当事者、どちらに対しても本当にきめ細やかな支援策というのが求められていくことになると思います。その最前線に位置するのが、まずはハローワークだと。その質、量共の充実というのは急務だと思うんですが、今年度予算ではハローワークの常勤職員は二百四十一人減、非常勤の相談員も二千二百三十五人減と。厚労省の説明では、非常勤職員のうち障害者への支援を行う人員は減らしていないと、若干微増のところもあるという説明も受けているんですが、法改正に伴って業務は当然拡大をするわけです。
 大臣、ここはもう大臣にお答えいただきたい、私もう何度もこの定員削減の問題はいろんな場面で取り上げています。やはり求められる役割、それから実態、これを見たときに、今の定員削減の方針というのはもうそぐわない、矛盾を激しく来していると。定員削減の方をもう見直すときに来ていると思うんですけど、いかがでしょうか。

○国務大臣(田村憲久君) 定員削減の件は全体内閣の中で議論をさせていただきながらどうするかということを決めていかなきゃいけないことであろうと思いますが、特にこの障害者雇用に関しましては当然ハローワークというのは大きな期待をいただいておるわけでありまして、障害特性に応じたきめの細かい就労支援ということを当然障害者の方々に対応していくと同時に、一方で、障害者雇用を促進していただくような企業に対しても支援をしていくことが大事であろうというふうに思っています。
 そこで、平成二十五年度から、今定員の話もございましたけれども、例えば精神障害者雇用トータルサポーター、これPSWの方々を中心にこういうような形で精神障害者の方々や企業双方に支援をしていこうということで、これ拡充を図っております。それから、発達障害の方々に関しましては、コミュニケーションが非常に困難であるということもございますので、就職支援ナビゲーターというものを全国展開をしながら、これ求職者に対する専門的な支援を行っていこう。そしてまた、難病患者就職サポーターという形でございまして、今難病のお話もございました。これ、難病相談・支援センター等とも協力をしながら、こういう難病の方々に対しての専門的な知識を持つ対応ができるような方々、こういう方々に就労支援等々に加わっていただこうということで、これは新規配置という形で考えておるわけでございまして、そういう意味では、今人員の話がございましたけれども、こういうような形の中で二十五年度、障害者の方々、精神障害者の方々も含めてでありますけれども、対応をすべく準備、準備といいますか、予算に応じて今動きを始めておるということでございます。
 いずれにいたしましても、ハローワークというのは、今委員から御期待をいただいたとおり、大変大きな役割を果たすべきものだというふうに我々は思っておりますので、充実のほどを図ってまいりたい、このように思っております。

○田村智子君 今御説明いただいたのは非正規、定員外の職員の皆さんだと思うんですね。これは、事業主に対して雇用率達成の指導を行うとか、あるいは障害者から求人情報と実態が違うという相談があった場合に事業主を指導するとか、これはやっぱり常勤職員の任務なんですよ、役割なんですよね。
 この間、求職者支援制度ができたり、それから震災対応があったり、ハローワークの業務というのは本当に拡大をしていて、だけど定員が減らされていると。このまま行きますと、やっぱりきめ細やかな系統的な支援ということを行っていくのに支障も来しかねないというふうに思うわけです。やはり、定員をどんどん減らして、常勤職員を減らしていくと、この方針は、是非閣内で、これは真剣に実態を見ながら見直しを私改めて求めておきたいと思います。
 現状では、今お話あったとおり、かなり非常勤の職員にいろんなことを担っていただいています。今御説明のあった精神障害者雇用トータルサポーター、これも三百人ちょっと超える規模で配置するということなんですけれども、これはたまたま静岡県三島市のハローワークが現在募集を行っておりまして、この募集要項を見ると、精神障害者のカウンセリング、同行紹介、一緒に事業主まで行くんですね、それから就職後の職場定着への支援、事業者訪問による情報提供や求人開拓まで、非常に専門的な業務を行っているんですね。その資格要件も、精神保健福祉士又は臨床心理士など、これ、資格が必要だという募集要項になっているんです。ところが、その勤務条件を見ますと、週三日なんですよ、三日。毎日いるわけじゃないんです。それで、手当を見ると、通勤費支給しないと書いてあるんですよ。しかも、これ一年契約、継続任用は最長三年、その後は公開公募となるので、引き続き働くこと、任用となるのかどうかという保障もないわけなんですよ。せっかく御説明いただいたトータルサポーターがこういう条件なんです。
 私、これは、やっぱり必要な職員が当面非常勤というのは、定削の方針覆してというのがすぐに難しかったとしても、やはり三年でもう任用できなくなるような在り方とか、通勤手当も出されないとか、週三日とか、これでいいんだろうかというふうに思うわけです。こういうところについては見直し検討していただきたいんですけど、いかがでしょうか。

○政府参考人(小川誠君) 障害者に対してきめ細かな支援をするためには専門的な知識が必要であるということは間違いないわけでございまして、このため現在ハローワークにおきましては、精神保健福祉士とか臨床心理士等の専門的人材を、委員御指摘があったように、採用して活用しているとともに、正規職員の専門性向上に関する専門的研修を定期的に実施するなどの取組も行っているというところでございます。
 今後とも、正規職員、また非常勤職員にかかわらず、ハローワークにおける障害者雇用の促進に向けた取組など、万全な体制を実施できるように支援体制の確保等を図っていきたいと考えております。

○田村智子君 いずれにしましても、本当に支援をやっていく体制が取れるかどうかというのがこの法改正が生きるかどうかということに懸かってくると思うんですね。今指摘しました問題、是非検討いただきたいというふうに思います。
 もう一つ、支援の体制ということで、就業・生活支援センターのことについてお聞きをいたします。
 精神障害者の雇用の義務化に当たっては、これ、就職支援ということだけでなくて、就労後の継続的な支援とか、あるいは生活面での支援ということが非常に求められていくことになると思います、体調に波があるというようなことに使用者の側が不安を感じているという指摘もあるだけにですね。これは非常に重要になってくると思います。こういう就業支援と生活支援を一体的に行うという役割を担っているのが全国に三百十七か所置かれている障害者就業・生活支援センターなんですね。
 その一つの滋賀県彦根センターは、働き・暮らしコトー支援センターという名前で活動しているんですが、その事業報告書を見ました。そして、本当に、例えばお金の管理とか、妊娠している女性が出産後の生活のイメージができるように支援をするとか、あるいは企業への実習の受入れをお願いに行く、職場の開拓をする、特別支援学校の高等部との連携を取るなど、本当に多面的な支援に取り組んでいます。そうやってやった支援を実践レポートにまとめて、どういう課題があるのか、どうやって解決していくのか、これも集団的に取り組んでいます。
 利用登録している方を見ますと、精神障害、発達障害、高次脳機能障害、難病の方など、障害者の先ほどの手帳ですね、これ、交付を受けていないような方も多く登録をしているとお聞きをします。また、特別支援学校の卒業者だけでなくて、一般の高校や専門学校を中退した発達障害の方とか、そういう方も利用している。医療機関や児童相談所、ハローワーク等、多方面から紹介を受けて、相談業務にも応じていると。
 これだけ多岐にわたる業務が一体何人で行われているかと。センター長を含めて八人です。今、年間八十人以上登録者が増えているそうです。職員一人どれぐらいの方を見ているかというと、百人以上は当たり前と、中には三百人見ているという方もいらっしゃるそうなんです。
 しかも、これ、どういう予算かというと、単年度の国と都道府県からの委託事業になるものですから、報酬は一年後払うわけですよ。レポートを受けて、実績報告書が提出されてからなので、一年間事業所が費用を立て替えているわけです。これ、固定資産税の支援もありません。
 ですから、これ、職員を正規で雇うのは非常に難しいと。これだけ専門性の高い仕事でありながら、一年ごとの契約で雇用せざるを得ないということになるんですね。
 これ、今後センターに求められる役割、一層大きくなるわけで、このような不安定な運営でいいのかということが検討求められると思うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(桝屋敬悟君) 障害者就業・生活支援センター、今委員から大変な御評価をいただきました。全国で三百か所以上頑張っているわけでありますが、お話がありましたように、障害のある方、手帳のない方もそうでありますが、地域において就業面と生活面、これを一体的に行う機関として、福祉教育から雇用への移行を促進するなど実績も上げているわけであります。
 その運営費等の中身でありますが、厚生労働省といたしましては、障害保健福祉圏域の人口、それから実績等の状況に応じて、就業支援担当者あるいは職場定着支援担当者等について委託費を追加配付するなど、体制強化を図っているところであります。ただ、委員からお話がありましたように、補助金と委託費で運営しているものでありますから、どうしても委員から御指摘のあったような状況もあろうかと思いますが、今後とも障害者就業・生活支援センター事業の運営に必要な予算の確保にしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

○田村智子君 これは、大臣、問題あるなというお顔でお聞きになっていたようなので、ちょっと何らかの検討が必要だと思うんですけれども、どうですか、一言。

○国務大臣(田村憲久君) この障害者就業・生活支援センター、今の現状をお聞きをいたしますと、確かにかなり大変な状況の中で対応していただいているなというふうに思います。ただ、これに限らずいろんな施設が、やはり今非常に人が少ない中で御苦労いただきながら、いろんな福祉事業も含めてやっていただいておるという現状があるわけでございます。
 どのような形でそういうものをエンカレッジしていくのか、これは我々厚生労働省にとっては大きな役割だというふうに思っておりますので、またいろんなお声をお聞かせをいただきながら、どのようなお手伝いができるのか考えてまいりたいというふうに思います。

○田村智子君 もう一点だけ支援体制についてお聞きします。
 社会福祉法人が第一号ジョブコーチ、これは事業所に派遣したりいろんなところに派遣して、就労を継続できるようなお手伝いとか、あるいは就職するときのお手伝いとか、いろんな活動を行っています。こうした派遣については独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構から助成金が支給をされているんですが、二〇一二年度の一月から三月分の助成金申請が、昨年度分ですね、今年度の請求に繰り越されたとお聞きをしています。なぜこのような事態になったんでしょうか。

○政府参考人(小川誠君) 民間企業の障害者雇用率の上昇に伴いまして、障害者雇用納付金収入が大幅に減少するということが見込まれているところでございます。このため、平成二十五年度における助成金の支給額を抑制するため、ジョブコーチの助成金の支給時期を繰り延べることとしたということでございます。

○田村智子君 これ、雇用納付金が減少していると。雇用納付金というのは、法定雇用率を達成しなかった、できなかった企業が支払っている納付金なんですよね。これが減っているということは法定雇用率を達成する企業が増えているということで、喜ばしいことなんです、障害者の雇用が進んでいるということは。
 ところが、そうなると納付金を納める企業が減少して、こういうジョブコーチに対する派遣の費用などが助成ができなくなるという非常に矛盾した事態が起きているわけですね。ジョブコーチというのは継続就労のための支援担当していますから、今後ますます、まさにいろんなトラブルの解決していく上でもやはり外からの力として必要となってくる方々で、体制の強化というのが求められている分野なんですよ。そうなりますと、この障害者雇用の拡大と支援体制の充実というのが矛盾するような構造でいいのかと、双方が前進していくようなことがこれは抜本的な問題になってくるんですけど、検討必要だと思うんですけど、いかがでしょうか。

○国務大臣(田村憲久君) 今委員おっしゃられましたとおり、法定雇用率を守っていただければ守っていただくほど有り難いんですけれども、一方でこの納付金自体が入ってこなくなるわけでありまして、財政的には非常に厳しくなってくると。単年度の支出で見ると赤字と今現在なっておるわけでございますから、積立金等々を崩しながらいろんな事業をやってきておるわけであります。
 そこで、一つは、支援企業、元々この障害者の皆様方の就労を一生懸命やっておられる、そういう企業に対して支援するわけでありますが、そこを重点化をさせていただくということ、それから、あわせて、この納付金等々を活用するだけではなくて、納付金以外の財源といいますか、例えば雇入れ助成金など、こういうものを活用しながら支援をしていくということも一つでございますから、総合的にいろんな支援の方法を考えながら対応していく必要があろうというふうに思っております。

○田村智子君 是非、財政的な構造の矛盾ですので、これは踏み込んだ検討を行っていただきたいと思います。
 次回の委員会で取り上げようと思っているんですけど、精神保健福祉法についても今日一部お聞きをしたいと思います。
 この法案では、午前中にもありました、保護者制度は廃止をされたと、これは精神障害の家族の方々からも切望されていた問題だと思います。しかし、その一方で、医療保護入院について家族等の同意の仕組みというのを新たに整備をしてしまったと。これは、保護入院については実態として保護者制度が残されたのと同じようなことになるのではないかというふうに私は考えます。
 これまで医療保護入院についての保護者の同意というのが、精神障害の当事者が家族によって強制的に入院させられたと、こう思い込んでしまう要因にもなっていた。そこから家族に対する被害妄想のようにつながっていってしまったり、あるいは家族の関係が悪化してしまったり、そのことからこじれて入院が長期化につながっていくなど、本当に多くの問題点が指摘をされてきたと思います。
 私、お聞きしたいのは、今回の法改定で今言ったような精神障害者当事者と家族の抱える問題というのが本当に解決できるのかということなんです。この点についていかがでしょうか。

○副大臣(桝屋敬悟君) これは午前中も随分議論があったところであります。今委員から言われたように、今回の改正で、一人の保護者が担っておりました義務、保護義務、これをいろいろ問題点があったので解消したと、これを見直したということであります。ただ、同時に、保護者制度を廃止することに伴い、医療保護入院については、保護者の同意要件をなくす一方で、家族等のうちいずれかの者の同意を必要としているわけであります。これは、インフォームド・コンセントあるいは精神障害者本人の権利擁護という観点もあるんだろうと思います。
 今委員からもお話はございましたけれども、例えば入院の必要性があるという場合、これ、今までは一人の保護者が、保護義務者がどうしても入院はさせないということであればなかなか医療にアクセスできなかったというケースもある、そこはしっかりこれからどなたか一人が同意すればこれはアクセスできるようになるということでありますし、逆に退院の場合は、本人以外で退院等の請求を行うことができる者の範囲もこれは広げたわけでありますから、家族等が退院等の請求を出すことで、精神医療審査会において医学的な観点等から入院の必要性等について判断が行われることになるということでございます。
 いずれにしても、医療保護入院の入院手続の在り方につきましては、改正法の施行の状況等を勘案して、施行後三年をめどとして検討を行うということにしておるところでございます。

○田村智子君 当事者の方の苦しみというのは、これはやっぱり私たちには分からないほど深いものがあると思うんですよね、家族の関係ですから。そういう問題が解決できるという、そういう保障に見えてこないわけですよ。
 私、一つ重大だなと思っているのは、やはり、どういう法改正を行うかということでは、検討チームが慎重に議論を重ねてきたわけですよね。その検討チームの結論は、保護者制度を廃止することと、それから指定医による判断で医療保護入院ができるようにするということ、それから事後審査を充実をさせ、家族を含む代弁者を選任するものと、こういう中身だったと思うんです。なぜこの結論が法律というふうになっていかなかったのかと、この点ではいかがでしょうか。

○政府参考人(岡田太造君) 御指摘の検討チームにおきまして医療保護入院の在り方について検討されたわけですが、その中で、例えば精神保健指定医二名の判断ですべきではないかというような御提案もあったわけですが、この提案につきましては、入院を厳しくするより、入院をさせた上で適切な医療を提供し、早期に退院させることを目指すべきじゃないかというようなことであるとか、医療保護入院が年間十四万人にも上っている現状で精神保健指定医の確保はできないなどの意見が出されて、現時点では困難とされたところでございます。
 今回、検討チームの御提言になかった家族などの同意を設けたところでございますが、これにつきましては、先ほど桝屋副大臣からも御答弁させていただきましたが、一般医療においてもインフォームド・コンセントがますます重要になっている中、患者本人に病識のない精神障害者を本人の同意なく入院させるに当たっては、やっぱり患者の身近にいらっしゃる家族などに十分な説明を行った上で、家族などが同意をする手続を法律上明記すべきではないか、それから、本人の意思によらず身体の自由を奪うことになる入院を精神保健指定医の判断のみで行うことは患者の権利擁護の観点から見て適切かというような点を総合的に考慮して設けたものでございます。

○田村智子君 これ、患者の権利擁護という観点で、だったら指定医一人じゃなくて二人にしたらどうかと。今人数が非常に足りなくて大変だという御答弁もされたように聞こえたんですけど、そうですよね。
 そうしたら、例えば日弁連などは、それだったら、入院の措置のときは一人になったとしても、事後的であっても別の病院機関の指定医がそれについてチェックができるようにするなど、やはり医療上入院が必要だということなんです、措置入院ではないわけだから。医療上必要だという判断はやはり指定医でいいんじゃないかという、これは私は非常に重要な指摘だったと思うんですよね。
 改正後も、そうなると家族は、医療保護入院の同意と、本人の意向に反する強制的な入院の同意をやはり求められてしまうと。一方で、本人の意向を代弁するのも家族なわけですよ。入院中のいろんな措置であるとか、あるいは退院にかかわることなんかでの判断をするのも家族なわけですよ。非常に矛盾するわけですよ。強制的に、本人は嫌だと言っているのに入院させることに自分は同意したと、だけど代弁者という立場も取ると。
 これは、引き続き、家族に対しては、保護者制度をなくしたというのは負担を軽減するためだったはずなのに、そうではなくて、家族の負担というのは軽減されなくなってしまうんじゃないかと。最初の質問に戻っちゃうんですけど、どうですか。

○副大臣(桝屋敬悟君) 私は、この精神科医療の在り方については、やはり患者本人とそれから家族の関係というのは本当に様々な問題があるんだろうと思います。
 今委員から言われるように、指定医師の判断だけで、措置入院以外はですね、あっ、ごめんなさい、医療保護入院の場合も指定医師だけでというお気持ちも私自身分からなくもないんでありますが、やはりその後の少しでも入院を短くして地域社会にということを考えますときに、どうしても家族とのつながりといいましょうか、家族の支援ということは、地域の相談支援体制と同時に、やはり家族の役割というのは、私は、保護制度がなくなったとしてもこれはあるんだろうと思います。多くの精神障害者の場合は、やっぱり家族の方がこれからもかかわっていくことはこれは間違いないわけでありまして、そうしたことを、状況をまずは見ながら、今後ともまた三年をめどに検討してまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○田村智子君 じゃ、次回引き続き質問したいと思います。
 ありがとうございました。