日本共産党 田村智子
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【13.05.09】 厚生労働委員会 生活扶助基準の削減について 実態把握すべき

○田村智子君 今日は、生活扶助基準の引下げについてまずお聞きをいたします。
 これは、最も所得の低い第一・十分位の消費と生活保護世帯の消費の比較に加えて、生活扶助相当CPI、物価指数に沿って引下げを行おうというものです。
 これまでの衆議院、参議院の予算委員会の質疑、議事録読みました。生活扶助相当CPIは、計算上、電気製品等の消費割合が高くなってしまう、つまりは、一般世帯より生活保護世帯の方が電気製品等を多く買っているということを意味する数字になってしまう、だから生活実態と大きく乖離しているんだと。このような引下げには強い抗議の声が起こるのは私も当然のことだと思います。
 この議事録ずっと読んでいて私思ったのは、やっぱり机上の計算ではないと思うんですね。生活扶助基準の検討で本来一番やらなければならないことは、現実の生活実態が憲法二十五条に照らしてどうなのかということを検討しなければならないはずだと思います。
 衆議院の質疑の中でもそのことが言われて、だから生活保護世帯の消費実態について調査やったのかと。やったと。だけど粗い調査だから示すことできないと。生活保護世帯だけ抜き取ってそれを示すことが妥当かどうかということも大臣が答弁されているのも読みました。
 ならば、全国消費実態調査などの特別集計などを行って、生活保護世帯というふうに限らず、低所得世帯の消費実態がどうなのかということを調査をして公表する、そして、憲法二十五条に照らして健康で文化的な最低限度の生活と言えるんだろうか、こういう検討を行うということが必要だと思うんですけれども、大臣、その点いかがでしょうか。

○国務大臣(田村憲久君) まず、生活保護世帯のいろんな消費支出というものがあるであろうというお話がございましたが、そもそも生活保護世帯もいろんな世帯があられます。
 例えば、御年配、お年寄りだけの地方の御世帯、都会の御世帯、それからお子さんが多い地方の御世帯、都会の世帯、それぞれ当然、消費の支出内容というのは変わってくるわけでありまして、もっと申し上げれば、精神科病院等々に入院されておられる方々の消費支出、これも若干なりともあるわけでありまして、そういうもの全体を見ますと、それぞれの家庭にぴったり合うような、そういう消費支出というものをつくると、これは非常に複雑怪奇になってくるわけでございます。そこで今回は、一番いろんな指標に使われております消費者物価指数という、CPIというものを使わさせてきていただいておるということでございます。
 しからば、今委員がおっしゃられたような部分を使ったらどうだということでございますが、それも含めて第一・十分位という低所得者の方々の層と比較をして、今回ゆがみの調整等々をさせていただいたということであります。
 さらに申し上げれば、そもそも絶対水準というか、絶対の基準というものが今なかなかないわけでありまして、これ戦後つくったものをそれぞれの、そのときによって使っている指標が違うんですが、それによって増減してきて今現状になってきておると。結果的に、今回は、ずっと物価、それから消費支出等々を勘案してきていなかったものでありますから、そこに関して物価というような一つ指標を置いて適正化を図ったという部分、ゆがみの部分と、その二つの部分において今回のような適正化を図ったということでございますので、御理解をいただければ有り難いというふうに思います。

○田村智子君 私は、生活の実態、やっぱりちゃんと調査をすべきだというふうに思っているんですね。やっぱり生活保護基準の設定の考え方というのは、確かにこれまで何度も変更されてきているんです。だけど、生活保護受給世帯への影響が大きい、低所得世帯に波及する影響も大きいと。だからその都度慎重に議論が行われてきたわけですね。
 ところが、今回は、生活保護基準部会の報告は一月十七日だと。加えて、その基準部会で全く議論されていないCPIを使った計算で、基準の引下げというのを今年度の予算からもう盛り込むと。これは余りに性急なんですよ。やっぱりちゃんと実態を含めて、今いろんな考え方があると大臣おっしゃったんだから、そのことを慎重に検討すると。余りに性急で、初めに削減ありきみたいなやり方、やるべきじゃないということは強く求めておきたいと思います。
 この基準の引下げが断行されると、数が多いかどうかは別としても、生活保護から外れるという世帯はやっぱり出てきてしまうわけです、基準が下がるわけですから。就学援助に影響が出ないようにということは繰り返し答弁されています。じゃ、医療費の負担はどうなるのか。
 実は、この医療費扶助が受けられるかどうかというのは、非常にその世帯にとって大きな問題なんですね。無料になるのか、医療券で受診ができるのか、それともいきなり小学生以上三割の負担になってしまうのか、非常に大きいわけです。
 じゃ、この生活保護から外れてしまうと、そういう方が経済的な理由で必要な治療を受けられないと。とりわけ就学援助では子供に影響出ないようにと言っていますからね。そういう子供を広げないためにという対策は何か検討されているわけですか。

○国務大臣(田村憲久君) そもそも、生活扶助だけではございませんでして、教育扶助でありますとか住宅扶助等々、他の扶助と合わせての中で今ある収入がありますよね。それとの丈比べで、例えば一万円引下げが起こったときに基準を下回ったという場合に外れるという話でありますから、そもそもがそれだけ収入がある方というのがどれぐらいおられるかということでございますので、そもそもが多分少ないんであろうというふうに思いますが、しかし、それに付け加えて、これ継続して、安定して基準を上回らなきゃいけないわけでございますから、となれば当然、外れた上で保険料を払うでありますとか医療の自己負担の分でありますとか、そういうものを入れて生活保護に入っていくという話になれば、当然これは生活保護であるべきでありますから、そういう部分の支出、こういうものも勘案して、各自治体で継続して生活保護基準から外れる、こういう方々が対象になるわけでございまして、ほとんど多分おられない、そういう方々は、という話になろうと思います。
 そもそも収入がそれだけあるという方々、さらには、今言われたみたいに、継続して医療費等々が掛かる、若しくは保険料を払わなきゃいけない、それはそのまま支出になりますから、そうなればまた生活保護の基準に戻るわけでございますので、そういう方々はほとんどおられないというふうに思いますけれども、おられる場合に関しましては、きめの細かい対応というものが必要であろうというふうに思います。

○田村智子君 これは基準引き下げるんですから、数の有無はあるかもしれませんけど、やっぱり出てくる、その可能性否定できないわけですよ。それで医療費の負担ができなくなるという人を出さないために、これは、きめ細かいと言いましたけど、対策ないまま基準の引下げってやるべきじゃないと思います。
 私、低所得で医療が受けられないという方への対策、これしつこくこの間追及をしてまいりました。その低所得の方あるいは収入が途絶えてしまったという方が医療を受ける上で重要な役割を果たしている一つの事業が無料低額診療事業なんですね。
 ちょっとこのことについてお聞きしたいんですけれども、これ、我が党の小池晃前参議院議員が質問主意書を出して、そのことが契機になって、無料低額診療事業は公的病院だけではなくて民間の医療機関とかあるいは診療所などでも行えるようになりました。ところが、診療所は院内処方、院内調剤の機能がないところがあって、せっかく診療は無料あるいは低額で受けられても、今度薬局に行ったら普通にお金を払わなければ薬が受けられないという事態が現に起きています。そのために治療を中断してしまうという方も出てきています。
 この問題、私、実は一昨年、質問主意書でただしましたら、無料又は低額な料金で調剤を行う事業を第二種社会福祉事業に位置付けることについて検討してまいりたいと考えているという答弁をいただきました。これ、その後、時間が経過していますので、どういう検討状況か、簡潔にお答えください。

○政府参考人(村木厚子君) 御指摘の院外調剤に係る診療費が減免をされないという問題でございますが、いろいろ御指摘をいただいた後、関係者等に状況を伺いますと、そういう方に対しては院内調剤を行うということで対応している医療機関というのがかなりあるというようなことが分かってまいりました。このため、今年実施を予定をしております無料低額診療事業の実態調査で、通院患者における薬の処方実態等についての調査項目を追加をして実態調査を行いたいというふうに考えております。時間が経過しておりますが、この調査、二十三年、二十四年、東日本大震災の影響で調査が実施できておりませんので、今年はきちんと調査をしたいと思っております。
 この調査の結果も踏まえまして、無料低額診療事業を行う医療機関における調剤の在り方について、関係機関とも協力をしながら検討をしたいというふうに考えております。

○田村智子君 この無料低額診療事業の多くは済生会とか公益財団法人立の病院で行っているので、確かに院内処方ができるんですね。しかし、私たちの下に、実際薬が出せないという現実があるという報告もあるわけです。そうすると、この問題で困っている医療機関が多くの数字の中に埋もれてしまうようなことのないような調査をお願いしたいんです。例えば、外来と入院の別とか、診療所と病院の別でちゃんと数字統計するとか、院内調剤機能を持っているのかどうか、院外処方箋の発行件数など含めて調査をお願いしたいと思います。
 あわせて、せっかくこれ診療所でもオーケーだというふうに制度をスタートさせているので、実態調査を待たずにこれ是非検討していただきたいんです。薬までちゃんと出せる、診療所で受けた方も薬まで受け取れるということで是非検討いただきたいんですが、大臣、一言。

○副大臣(桝屋敬悟君) いわゆる無低、無料低額診療事業でございますが、委員のお出しいただいた質問主意書を受けまして、今事務方から対応について御報告を申し上げたわけであります。
 これは、いわゆる無料低額という事業で考える、社会福祉事業ということで考えると、やっぱり診療から調剤まで一体的に費用負担の減免が実施されるということが一番望ましいんだろうと思います。ただ、これほど医薬分業が進んできたときに診療所等で、今委員から御指摘されたような問題が出ているということであります。ただ、委員も言われましたけれども、実際に無低をやられている医療の現場では様々な工夫もなされているということであります。
 今委員から調査の在り方まで言及をいただきましたけれども、今日の指摘も踏まえて、しっかり調査をして、その実態を詳細に把握した上で対応について検討してまいりたいと思います。

○田村智子君 もう一つ、国民健康保険法四十四条による医療費自己負担軽減制度についてお聞きをいたします。
 この四十四条減免について、厚生労働省は二〇一〇年に国の特別調整交付金の対象となるという基準を示しました。これによって自治体でも基準を条例や規則で定めるという動きが広がりました。現在、四十四条減免の基準を持っている自治体数、教えてください。

○政府参考人(木倉敬之君) 御指摘のように、国民健康保険法に基づきまして、災害とか失業で収入減少など特別の理由がある被保険者、この方につきまして、一部負担金を支払うことが困難であると認められる者に対しましては減免を行うことができることとされております。
 今御指摘の、条例、規則等を定めまして減免基準を設けております市町村国保の数は、昨年、二十四年四月一日時点でございますが、一千七百十七保険者がある中で一千二百七十二、七四%程度の市町村国保の保険者となっておるところでございます。

○田村智子君 これは大分進んでいるんです。
 しかし、やっぱりこれは法律で一部負担金を支払うことが困難であると認められる者に対して医療費自己負担を減額免除するということを定めているわけで、ということは、この法律に基づいて国民が求めれば、自治体あるいは保険者は、これ減免をどういう基準で行うかということを、今基準がない自治体もですよ、判断しなくちゃいけないんです、法律に基づいて。ということは、あと大体四百五十ぐらいですか、まだ基準を定めていないところがあるんですけれども、これ本来、やっぱり全ての自治体、保険者が基準を持つということが必要だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(田村憲久君) この国民健康保険法第四十四条に基づいて一部負担金の減免という制度でありますけれども、これ条例や規則等々必要ないわけであります。本来ならばこの法律にのっとって内規を作ってやれる話でございますので、今どちらかというと条例や規則を作っておられるところは多いわけでございますけれども、そういう意味では、法律にのっとって進めていただく中で、今七四%まで来ております。
 できるということでございますから、しなければならないという規定になっておるわけではないわけでありますけれども、この趣旨をしっかりとお取り込みをいただきながら、我々もそのような形でいろいろとこれから自治体の方にも御連絡をさせていただきたいというふうに思っています。

○田村智子君 最後に一言要望したいと思います。
 やっぱりこれ、国の基準、余りに不十分なんです。災害が起きたときとか倒産したときとか、いきなり収入が減ったとき、三か月ぐらいと、それで減額免除。これですと、私が今までずっと問題にしてきている、ずっと低所得、医療費三割負担ができない、こういう方は救われないわけですね。是非、国の基準が、本当に低所得の方で、経済的な理由で医療が受けられない方をなくすということで、この四十四条減免が活用できるように基準の見直し、また自治体への財源手当てを求めて、質問を終わりたいと思います。