日本共産党 田村智子
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【12.03.05】行政監視委員会――参考人質疑

日本の経済・財政について

○委員長(福岡資麿君) 次に、我が国財政の現状と政策上の課題に関する件について、参考人の方々から意見を聴取した後、質疑を行います。
 御出席いただいております参考人は、学習院大学経済学部教授岩田規久男君、一橋大学経済研究所准教授小黒一正君及びみずほ総合研究所株式会社常務執行役員チーフエコノミスト高田創君の三名でございます。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶申し上げます。
 本日は、御多忙のところ当委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。参考人の皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 議事の進め方でございますが、岩田参考人、小黒参考人、高田参考人の順にお一人二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。(以下、中略)

*注――参考人意見陳述は、国会図書館の議事録検索でお読みください。

○田村智子 日本共産党の田村智子です。一問一答で時間内でお聞きしたいと思います。
 まず、岩田参考人にお聞きをいたします。
 今の国債の問題が日本が本当に国際的に見ても危機的状況というのは、確かにGDP比で非常に危機的な状況にあると、私たちもそう思っています。そして、御指摘あったとおり、先進主要国と比べても日本の経済成長が言わば止まったような状態になってしまっていると、九二年から二〇一〇年で平均〇・一%。これは私、本当に危機的な状況で、なぜ世界の国々と比べても日本がこれだけ経済成長が止まっているのかということをちゃんと分析することが必要だと思っています。
 日本銀行総裁だけに責任を帰すわけにもいかなくて、やはり九〇年代から見てみても、バブルが崩壊した後、相当銀行に対しても公的資金が投入された。それから、国際競争力ということを理由にして様々な大企業に対しては税制の優遇措置もとられるなどやってきたんだけれども、結局、経済成長に、実体経済も成長に結び付いていないという、ここはなぜなのかということを考えなきゃいけないと思うんですね。
 一番抜け落ちていたのは、個人消費の問題や国民所得の底上げ、底が抜ける状態に対して歯止めが掛けられないという事態がずっと進んできていること。私たちはここにもちゃんと眼目を置いて今後の政策取っていくことが必要だと思っているんですけれども、こうした経済成長が他の国と比べても極端に止まっている、それが政策上どこに問題があったのかということで御意見いただければと思います。

○参考人(岩田規久男君) 何度も済みません、繰り返しちゃうんですけど、基本はデフレだという答えなんですけれども。
 デフレのままですね。デフレというのは需要が不足しているわけで、需要が不足しているというのは、何か少子高齢化とかそういう意味じゃなくて、名目の需要が、物価込みの需要が不足している現象なんで、それは金融政策でできるんだということ。
 今、実際の実力は高いところにあって、需要が不足しているというのは、潜在的な成長率までも行っていないんですね、日本は。ということはどういうことかというと、例えば端的に言えば失業率が高いとか、そういうことです。あの人たちが働けば、あるいは女性がもっと働けば、成長率は高いところにあるんです、それが行かないのは需要不足ということですね。
 それで、まず潜在成長率へ持っていくためには、ある程度、一、二%ぐらいのインフレにならなきゃいけないと。何%のインフレになれば実際いいかというのがきちっと経済的にできないと先ほど小黒さんは言った。それはそのとおりなんですけれども、これは経験ですね。一九九〇年くらいから二%ぐらいのインフレを保っている国というのは全部成長率高いという、やっぱりそこで大体インフレ率がそのぐらいだと一番成長にいいんじゃないかなという、そういう経験ですね、二十年ぐらいの、これは。
 そうなっていないから、失業も多い、あるいは需要が少ないので、潜在的な成長率まで行かないから正社員が少なくなって非正社員が多いと。需要が少ないんですから、企業は、そんなに需要がないんですから、売れないですから、辞めさせられる人、簡単に、あるいは賃金の低い人を雇うわけですね。そういうことが起こってくる。
 もう一つ、デフレは円高にするということなんです、長期的に。七十円台の円高とか、今は八十円台まで、少し安心していますが、大体リーマン・ショック前ぐらいのときと今どのぐらい円高が過ぎるかというと、三割ぐらい円高が過ぎるということです。これは交易条件というのがもう一つあって、それで決まるんですけれども、国際競争力はそういう意味でリーマン・ショック前よりも三割落ちています。ですから、三割戻してやるためには三割ぐらいの円安にするということ。
 円安じゃないから、円高に過ぎるから地方の例えば地場産業とかみんな潰れていくわけですね。で、海外にどんどん行っちゃうわけです、製造業は。海外へ行って、そこでもうけた利益というのは企業に返ってきますが、それは株式ですから、配当利子ですから、全部高所得者に行っちゃうわけですよね。ですから、所得収支が多くなって国民所得は多いんだけれども、分配上は労働者には行かないと。むしろ労働は安い海外に労働者を求めて行っちゃいますから。
 日本にとっては、皆さん賃金は低いわけですよね、でも、円高なために海外との基準で見ると日本の賃金は高くなっちゃうんですよ。この賃金を安くするのは二つあります。日本の賃金をもっと安くしちゃうということです。もう一つは円安にするということです。日本の賃金は下げないで、円安にすれば日本の賃金は安くなりますので、日本の雇用が増えて、さっき言った賃金、雇用も増えます、海外に行くことないですからね。そのことによって低所得者の人の所得が上がってくるという状況が出てくるということですね。
 やっぱり、だからデフレです。

○田村智子 高田参考人にお聞きしたいと思います。
 一つは税収の構造なんですけれども、今、税収を上げなければいけない、国債に頼ってばかりではいけない、税収の比率をもっと上げなきゃいけないという議論が相当されていて、しかし、そのときになぜか消費税のことばかりが言われるわけですね。しかし、日本の税収の推移って見てみますと、消費税というのはほとんど変わっていないから、税収にほとんど推移がないから、だから頼れるって論もありますけれども、やっぱり一番今の問題でいうと、法人税、所得税が相当の落ち込みを、この二十年ぐらいで見れば二分の一以上の落ち込みを法人税なんかはしているわけですから、ここをどうしていくのかということをもっと検討しなければいけないと私は思っているんです。
 このまま行きますと、今のやり方で消費税を更に増税ということになりますと、日本のこの税収の構造が、相当消費税分に頼るという構造が固定化しかねない。これは果たして健全な財政の構造というふうに言えるんだろうか。私、非常に問題意識がそこ、あります。
 一方で、大企業を見てみれば内部留保は着実に増え続けているわけで、これがもっと社会的に還元される、もっと国の税収にも還元されるような方向というのが見出すことはできないのか、そういう検討がすることはできないのか、この点、御意見をお聞きしたいと思います。

○参考人(高田創君) 税の構造に関しましてはいろんな対応と申しましょうか選択肢があろうかと思いますので、そこの中をいかにいいやり方を模索するかということになるんじゃないかと思います。
 ただ、一つ言えますのは、先ほど私、ソブリンワールドカップと申し上げたんですけれども、もう昨今、国と国との間で市場の取り合い、黒字の取り合いゲームでございます。となりますと、今、企業にしても、これ個人にしてもそうなんですけれども、企業なり個人が国を選ぶような時代にもなってきております。そうなったときに、そういう国際競争上どのような形のものが取り得るのかどうかというところをやはり一つ考えておかなければいけない論点もあるんだろうと思いますので、そういう中から、所得税にしても、場合によっては、いろんな資産の税にしても、またフローのこういう消費税にしても、いろんな動きのところを考えながら、そういう中で一番負担が少ないと申しましょうか、バイアスが少ないと申しましょうか、というものをやっぱり選択していくことがいいのではないのかなと。
 その上で、いろんな局面局面によっての対応というものがあると思いますので、先生おっしゃるように、過度な消費税ばかりということも一つ問題があろうかと思いますし、また一方で、先ほど申しましたような、いろんな国際競争の中でどのようなものがあり得るのかといったようなことも同時に考えながらベストな選択肢を選ぶということになるんじゃないかと思います。