日本共産党 田村智子
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【11.03.10】予算委員会――日産自動車の有期雇用の実態告発

違法派遣の正社員化を求め質疑

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 非正規の働き方や雇い止めが今も増え続けていて、現役世代の生活保護が急増するなど深刻な問題が広がっています。医療や年金など社会保障制度の空洞化を防ぐためにも、安定した正社員としての雇用が大切だと考えますが、総理、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(菅直人君) 正社員の雇用の方が望ましい、私もそう思います。

○田村智子君 正社員が望ましいと。私は、とりわけ女性の皆さんが結婚や出産をしても正社員で働き続けることができるかどうか、これは今、人口減少の下で本当に重要になっていると考えます。
 そこで、今日取り上げたいのは日産自動車で起きていることです。
 日産自動車は、昨年十月、事務職の派遣労働者七百人を日産が直接雇うと、直接雇用に切り替えました。これは、労働者からの申告を受けて、東京労働局が三年を超えて派遣のままで働かせているのは派遣法違反だと是正の指導を行ったからです。
 話を聞いて驚いたんですが、この七百人は全員女性です。彼女たちは、英語や中国語を使いこなす、労務管理のデータやコンピュータープログラムを作る、正社員に仕事も教えると、まさに業務の中枢を担う仕事をしてきました。ところが、これだけの能力がありながら、彼女たちは正社員ではなく、契約従業員という雇用に切り替えられた。時給は千四百円、派遣のときとほとんど変わらない。契約期間は六か月。契約更新はどんなに長くても二年十一か月までで、それ以上は絶対に雇わないと。この条件提示に彼女たちは疑問と怒りの声を上げました。当然です。これまで四年、五年、長い方で九年日産で働いてきた。なぜ二年十一か月で打ち切られるのか。
 総理、私は、女性をこういう扱い方する、本当に許せないんです。だって、契約期間六か月なんです。その途中で結婚されて妊娠した。そうしたら契約更新は一体どうなるのか。自分の力を生かして働き続けたいと、こう願っている女性たちを余りにもないがしろにするようなやり方ではないでしょうか。総理、いかがでしょうか。

○委員長(前田武志君) まず細川労働担当大臣。

○国務大臣(細川律夫君) いろいろお話がありましたけれども、女性が妊娠、出産を機に契約が更新されない、そういうケース、これは大変女性にとって厳しいというふうに私も、これは委員と同じような認識でございます。
 こういうことに対しての法的な規制というのは、男女雇用機会均等法第九条でこういう場合には不利益な扱いを禁止をしております。有期契約についての、妊娠、出産等がなければ契約更新が予想されていたのに契約が更新されないような場合は、これは当然不利益扱いに該当するわけでございます。したがって、そういう扱いを受けました労働者からは御相談をいただいて、都道府県の労働局雇用均等室で厳正に対処しているわけでございます。
 有期契約者が安心して働けるように、この法律をしっかり守れるような、業者を指導しているところでございます。

○内閣総理大臣(菅直人君) 今も厚生労働大臣からお話がありましたが、女性、御指摘のように妊娠、出産等を理由として契約が更新されなかった場合は男女雇用機会均等法上の不利益な取扱いに該当すると考えますので、こういった場合については都道府県の労働局等において厳正に対処をして、有期契約労働者が安心して働けるよう努めてまいりたいと思います。

○田村智子君 六か月の契約で、あなた妊娠しましたから契約更新しませんなんて言うわけないんですよ。だけど、契約更新が事実上行われない。こういうことはいっぱい今社会の中にあふれています。
 私、日産はなぜ彼女たちに六か月雇用と、どんなに更新しても二年十一か月で打切りと強調したのか。実は、管理職用のマニュアルというのが入手できたんです。(資料提示)今お示ししているのが、これがその中の一ページなんですね。
 何て書いてあるか。契約期間について。契約期間は六か月です。通算の契約期間は最長で二年十一か月であり、その期間を超えるような更新は行いません。その下の黄色いところ、理由、契約を繰り返すと期間の定めのない契約とみなされる場合があり、解雇の法理が類推適用される判例があります。上限を設けずに契約更新を繰り返すことにリスクがあり、上限を設けることとしました。正社員で雇わなければならないリスクがあると、裁判に訴えられたら負けるかもしれない、だから二年十一か月で打ち切るんだと、こう赤裸々に書いてあります。
 実はこのマニュアルの中には、彼女たちを絶対に正社員にしないという、この方針が本当に徹底されているんです。例えば別のページには、能力があるからといって職務領域を超えるような業務を与えない。理由、一般従業員、これは正社員のことです、一般従業員と同等の仕事をした場合、一般従業員への登用の可能性を期待させることになるため。さすがに表に出せないと考えたのか、ほとんどのページに、その右上ですね、取扱注意、管理職止まりと記されています。
 総理、この彼女たち七百人は、本当に自分の力を生かして働ける人たちなんです。そういう彼女たちを、ここから先の仕事は正社員だから、あなたたち正社員にはしないからとその仕事もさせない。これが、労働局の指導を受けて名立たる大企業が行った是正なんです。正規雇用を求めた裁判の判決や法律を逆手に取って、あくまでも人間を使い捨てると、これに政治が無策であっていいはずがないと考えますが、いかがでしょうか。

○委員長(前田武志君) まずは細川担当大臣、次いで菅総理にお答えいただきます。

○国務大臣(細川律夫君) 委員が言われておりますのは個別の事案でございますから、それに対して私どもの方で答弁することは差し控えたいと思いますが、不利益な取扱いをした場合には、これは御相談いただければ、先ほども申し上げましたように、雇用均等室において厳正に対処しているんです。そして、その是正のあれに企業の方が従わなければ、そこに是正指導をしっかりやって、指導書を手渡して、それでもやらない場合には勧告をいたします。それで、勧告にも応じないような場合は、では企業公表、そこまでして指導を私どもの方としてはさせているところでございます。

○内閣総理大臣(菅直人君) 長い時間は申し上げませんが、いろいろな御指摘は私も聞いていて大変おかしなことだと思っております。
 つまりは、こういうことになる直接的な個々のことと、大きく非正規の形を取った方が正規社員よりも会社にとって有利だという構造そのものが、いわゆる均等待遇の問題などがなされていないということで、できるだけそういう均等待遇で、こういった差別的な取扱いそのものが企業にとってもプラスでないという、そういう形をつくることがより重要だということも認識しておりますが、そのためにはいろいろなことの努力が必要だと、そう認識しております。

○田村智子君 彼女たちはこの不利益な契約を結ばされているんです。二年十一か月で打切りだということを認めなければ、そもそも契約従業員にもなれないんです。そこで働くこともできないんです。私、こういうやり方に対して政治が法律で規制することもできないんですよ、今。不利益があったらと言うけれども、違うんです。契約を、全部法の網かいくぐって、こういう不利益な契約を結ばせちゃっているんです、彼女たちに。
 これ、是非調べていただきたいですよ、大臣そうおっしゃるんだったら。どうですか。

○国務大臣(細川律夫君) 今委員が指摘されたような問題もあると思います。
 そこで、厚生労働省の方では有期契約について今検討させていただいておりまして、その中で、今委員の御指摘のあったことについても私の方から検討するようにということを言っておきたいと思います。

○田村智子君 調べるということも言えないんですよね。
 彼女たちはどんなに頑張って働いても正社員になれない。待っているのは、退職金さえない雇い止めなんです。これは、私は企業の利益も損ねることにつながると思います。有期雇用は一時的な仕事に厳しく規制をして、正社員で雇うのが当たり前だと、このルールを一刻も早く作ることを強く求めて、質問を終わります。