日本共産党 田村智子
コラム

【13.09.17】高校生からの質問への回答(1)

首都圏の高校に通うAさんから夏休みの課題のため質問を頂きました。Aさんには既に回答を差し上げていますが、夏休みも終わったので、三回に分けてアップしています。(スタッフ)



 お手紙を読みました。返信の締め切りを過ぎてしまいましたが、質問に対する私の意見を送ります。これからの学習のきっかけになればと思います。

 質問に答える前に、少し意見を書かせてください。
 Aさんが質問された、TPP、従軍慰安婦、原発、どれも日本政治の焦点となる問題です。それぞれの問題を考えるうえで、知ってほしい情報、歴史、事実がたくさんあります。
 それだけに、Aさんがこれらのことについて、何を学んできたのか、どんな関心や意見を持っているか、政治家にどのような問題を聞きたいと思っているのか、これがわかってこそ、私の回答も的を射たものになると思うのです。
 漠然と「どう考えますか」という問いかけには、正直、何をどう答えたらよいか、考え込んでしまいました。
 Aさんの問題意識とかみ合うかわからないのですが、次ページから、それぞれのテーマについて私の意見を書いていきます。機会があれば、Aさんの意見も聞いてみたいと思っています。

 もう一つ、お願いがあります。
高校生のみなさんには、自分の意見を形作るために、まずは事実をできるだけ具体的に学んでほしいと思っています。以前、ある番組で小学生の男の子が新聞を読んで得た知識をもとに「沖縄は米軍基地があるから地域の経済がなりたっている。基地をなくすのは無理」と話していたことに、とても恐ろしくなりました。沖縄の米軍基地を見たことがあるのか、戦闘機の墜落事故、相次いだ米軍犯罪、沖縄の人たちがどんな苦悩をかかえているか、具体的に知らないのだろうと思いました。
 歴史の事実、現場の事実、当事者の姿を知ること、高校生だからこそ、みずみずしい感性で学んでほしいと思っています。

 それでは、質問にそって私の考えを記します。

TPPについて

 他国との貿易は、それぞれの国の産業や文化の発展をもたらすものとして、日本も積極的にとりくむことが必要です。しかしTPPは、このような貿易の役割とは全く異なる国際協定です。企業が国境をこえて自由に利益をあげられるようにする、それを妨害するものを取り払う――これがTPPの本質だと私は考えています。

 TPPは「例外なき関税撤廃」を原則としています。
関税撤廃によって日本で最も大きな影響を受けるのは農業です。日本は国土の約7割が山岳地域です。長い年月をかけて土地の開拓が行われ、それぞれの地域にもっとも適した農業が営まれ、人里ができ、日本全国に豊かな風土が築かれたといえるでしょう。
 一方で、アメリカやオーストラリアは、イギリスの移住政策によって、最初から欧州などへ食糧や綿花を輸出することを目的に広大な平地の開拓が行われました。その後も、企業が土地を買い集め、工場のような大規模農業が営まれています。
 米国・豪国は安く大量に生産し輸出するシステムが歴史的につくられてきました。日本の農業とは成り立ちも仕組みも全く異なります。関税が撤廃されれば、外食産業や食品加工の企業を中心に、安い農作物・食糧が大量に輸入され、日本の農業は立ち行かなくなる危険性がとても大きいのです。
 「安く作れるところから輸入すればよい」という人がいますが、特に食糧についてはとても危険な考え方です。特定の地域に集中して作物を作る場合、異常気象や病気や虫による被害は非常に大きいでしょう。また、世界的には食糧難が問題になっています。日本が食糧を世界から買い集め消費するだけの国になってよいのでしょうか。
そもそも農作物は地産池消が基本であるべきで、日本の豊かな土壌と気候を生かして、もっと農業を発展させることこそ求められています。

 TPPが取り払おうとしているのは「関税」だけではありません。企業の経済活動を規制するルールもなくしていこうとしています。
 たとえば、日本では、消費者運動によって食品添加物や農薬をできるだけ減らす努力が続けられていますが、アメリカ企業が「規制が厳しすぎる。企業活動を妨害している」と、日本政府を訴えることも考えられます。(日本で認められている食品添加物は832品目、アメリカは約3000品目です。)
日本の大企業も海外に工場や農地をどんどん作っています。TPPに参加すれば大きな利益を上げられるでしょう。企業は国境を超えて莫大な利益を得る、しかしその国の国民は幸せになるでしょうか。日本の産業は発展するでしょうか。
 こうした理由から、私は、TPPへの参加はやめて、それぞれの国の産業が真に発展していくための経済協力をめざすべきだと考えています。
((2)に続く)