日本共産党 田村智子
コラム

【08.12.15】まゆとおに

こんな山姥(やまんば)見たことない!

 
富安陽子・文 降矢なな・絵 福音館書店

3年生の娘のクラスでの待ちに待った「読み聞かせ」。
毎月配本の「こどものとも」で7年前くらいに我が家に来た、この1冊を読みました。

大勢の前での読み聞かせは、自分が本を正面から見ることができないので、
読みなれて文章が頭に入っている本のほうがやりやすいのです。
写真の本は我が家にあるものですが、実際に使ったのは、図書館で借りてきたハードカバーになった同じ本です。

女の子(まゆ)と鬼が出会って、鬼のおなかがすいていたら…食べようとするでしょうね、やっぱり。
ところがこの女の子が「やまんば」の娘。

おおなべで女の子を煮て食べようとする鬼、その鬼の作業を手伝ってしまう女の子。
この手伝いが実に豪快です。
たきぎを拾う鬼の横で、松の木をひっこぬいたり、岩をキックでくだいたり。
その絵の迫力に、子どもたちの笑い声がこぼれました。

お湯がぐらぐらとわいて「お風呂にお入り」といわれた女の子は、
「お先にどうぞ」と鬼をかかえあげて…。

やまんばといえば、恐ろしい鬼婆の姿が絵本の定石。
でも、この絵本では心優しく、かわいく、お母さんのやまんばはすらりとした美人。
こんなやまんば見たことない!
一度でほれこんでしまいました。

外国の絵本で言えば、オオカミやトロールでしょうか。
脇役、悪役が当たり前の登場人物(動物?)たちへの作者の愛情を感じます。

そして絵本ならではの楽しみも。
文章には出てこないのですが、まゆには、きつねがぴったり寄り添って、
心配そうな顔をしたり、驚いたり。
降矢ななさんの隠し味が、とっても楽しい1冊です。